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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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43話  プロポーズ

 それは、今をさかのぼる事3年前の7月2日。

 僕は大学時分に、初めて麻衣をドライブに誘って来たこの飛行場に、6年振りに2人でこの夜景を見にやって来た。

 初めて来た時と違って、少しドキドキしながら・・・。


『ねぇ、悠。仕事の方はどう?』


『う~ん、今までは自分の意見もあったんだけど、その店のトップじゃなかったからな。どちらかと言うと、指示に従ってさえいれば何も問題なくこれたけど、これからは店長として自分自身のやりたい事が出来る反面、決断力や責任感がついてくるからな』


『そうよね~、悠は猪突猛進するけど、それまでがねぇ。優柔不断なところがあるもんね~』


『はいはい、麻衣のいつもの口癖のポジティブだろ』


『そうそう、分かってるじゃない』

 麻衣の考えが僕に伝わってるって事に、意気揚々とした。


『それは麻衣の考えてる事ぐらいわかるさ。出会ってから長いんだから』


『本当よね~。もう、6年が経つものね~』

 

「うん」、と僕は無言で頷いた。

 

 それから僕達2人の間には、どちらかが話し掛ける事もなく、程よい沈黙が時を刻み、ライトアップされている滑走路をただ眺めていた。


 でも、僕の心の中で自分自身に鼓舞をしていた。

 さぁ行け!!早く言え!!言ってしまえ!!


 麻衣は、そんな僕の気持ちをつゆ知らず、夜風に髪をなびかせながら遠くの夜景を眺めていた。


『なあ、麻衣』

 僕は緊張した面持ちで、麻衣の方に向き直り彼女の目を真っ直ぐに見つめた。


『うん?何』

 いつもと何だか雰囲気が違う僕に、彼女は顔を傾げた。


『俺さぁ、今回の人事で色々考えたんだ』


『色々って?』


『麻衣と出会ってからの事や、これから先の事』

 麻衣は僕の方を見つめ、黙ってその後の話しを聞いてくれていた。


『俺達って、今までお互い付き合おうって言ってから共に行動している訳じゃないじゃないか。何て言うか、10年来の親友みたいな感じで、言葉を交わさなくても、お互いの考えている事や気持ちが通じ合ってる所ってあるだろ』


 麻衣は、「まぁね」って言って頷いた。


『だから、この関係を壊したくないなっていう自分がいて、今まで何も麻衣には伝えずにいたけど、でも、それじゃあ駄目なんだって』

 そう言って、麻衣の目を見つめ、ひと呼吸おいてから話しを続けた。


『俺は、高科 麻衣の事を愛しています。これから先も、ずっと一緒にいて下さい』

 今まで黙って話しを聞いていてくれた麻衣だったが、照れた笑顔を見せて、僕の気持ちに対する返事をしてくれた。


『こんな私で宜しければ』

 麻衣は、はにかんだ顔をしてそう答えた。

 

 僕は思わず、「やった~」と叫ぶと同時に、麻衣の体をぎゅっと抱き締めた。

 まさにこれから先の人生が、輝いて見えた瞬間だった。





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