30話 1泊2日旅行(18)~ひそひそ話し編(2)~
「絵里ちゃん。遥ちゃんが部屋に戻って来た時の事覚えてる?」
「私も布団の中でウトウトしてたから、はっきりした事を覚えてる訳じゃないんですけど」
「うん、何でも良いから覚えてる分だけ話して」
相原は、探偵が推理の謎を解くが如く、興味津々で尋ねた。
「え~と、確かあれは、遥が部屋から戻って来て『どこ行ってたの?』って聞いたんです。そしたら、遥は布団の中に包まって、中から片手だけ出して左右に振ってたのだけは覚えてます。私てっきり遥が『おやすみなさい』、って言ってるのとばかり思ってました」
「もし、泣いていたのなら、朝、目が腫れていたはず。でも見たらそうじゃなくて、何かオドオドしてる感じに思えたんだけど」
相原も、顎に手をやり考える仕草をした。
「じゃあ若しかして、あの2人、昨日の夜何かあったんじゃ」
「そりゃあ、あれやろ。男と女が人気のない所で、しかも夜暗いとこでするとしたら・・・」
長谷川は、ワンクッションおいて、2人の顔を見ながらその会話の続きを話し始めた。
2人は長谷川さんの話しの最後を固唾をのんで待っていた。
「チョメチョメしかないやろ」
高野さんは頬を赤くして反論した。
「は、遥に限ってそれは・・・」
「いや、片瀬さんも男だから、絶対に無いとは言えないわね。有りうる」
相原は、腕を組んで1人頷いた。
「で、でも~、チョメチョメって」
高野さんは、そこだけをやけに気にしていた。
「チョメチョメ、チョメチョメ・・・」
相原も、ぼそぼそと独り言を言っていた。
「だってな、考えてみ~や。人が多い昼間より夜の方がムードあってええやろ。しかも、周りに人がいなくて2人っきりやったら尚更そう言う雰囲気になるで。例えば、夜の観覧車とか、家に送った時の車の中とか」
「え~!!なります?だって外ですよ~、外。外は嫌だ~」
高野さんは、両手で口を押さえて言った。
「チョメチョメ、チョメチョメ・・・」
もはや相原は音飛びしているLPレコードの様に、同じ事を繰り返し、繰り返し呟いていた。
「あのなぁ、2人して何か勘違いしてへんか?チョメチョメってあれやで。キスの事やで。そりゃあ、キスくらいするやろ、付き合うんやったら」
相原は、眉間に皺を寄せかと思うと、左足に重心を置き、握った左こぶしを下から上に全体重をかけて、長谷川さんのボディに突き上げると同時に叫んだ。
「まぎらわしい事、言うなぁ~~~!!!!」
長谷川さんは、相原の一撃に、「グフッ」と声が漏れると、腰をくの字に折れ曲げ、テーブルに手を着いた瞬間、相原の方を向いて一言言った。
「お、俺と、天辺、取らねえか~」
大阪出身だけに、ただでは転ばない長谷川さんであった・・・。




