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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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21話  1泊2日旅行(9)~夜空編(1)~

 僕がシャワーを浴びてログハウスに戻って来た頃には、すでに長谷川さんは、布団の中で掛け布団を抱きしめながら気持ち良さそうに「ガ〜ゴ〜、ガ〜ゴ〜」と、いびきをかいてグッスリと眠っていた。


 寝ても覚めても賑やかな人だなぁ。

 そんな長谷川さんを見て苦笑いをしながら、気付かれない様にすり足で歩いて部屋を後にした。

 

 廊下に出て女の子達の部屋の前を通ってみると、蛍光灯の光が消えていたので、恐らく疲れて寝ているのだろう。


 僕は皆が起きない様に静かに靴を履き、そっと玄関の扉を閉めた。

 そのまま玄関の前に置いてある円卓のテーブルまで足を運ぶと、ゆっくりとその椅子に腰を下ろした。


 必要最小限の光だけがちらほらと辺りを照らしている。ここの施設の規則みたいで、23時になると消灯となるらしい。都会と違って街灯が全くと言っていいほどないこの場所で、ただ1人椅子に座って真夏の夜空を眺めていた。幾千もの星が一面に散りばめられているにも関わらず、その中でも2つの星だけを静かに見つめていた。


 するとその時僕の背後で、キィ~という扉が開く音がしたので、その音の方へ振り返って見ると、遠藤さんが玄関から出て来る姿が目に入った。


 僕は、「やぁ」と言って右手を上げると、彼女も軽く手を上げて答えた。

 彼女は、静かな足取りで僕の側近くまでやって来た。


『どうしたんですか?』


 彼女のメールの文字を見て、僕は答えた。

「うん、何だか頭が痛くて、ちょっと飲み過ぎたかなぁ。それで何だか眠れなくてね」


『大丈夫ですか?』と、遠藤さんが僕の顔を覗き込んできた。


「うん、さっき薬を飲んだから、時期に痛みもひくと思うよ」


『だったら良いんですけど』

 僕が薬を飲んだ事を知って、彼女は少しホッとした表情に変わった。

 そして、側にある椅子に腰掛けた。


「どうせ眠れないんだったら、気分転換に外の空気にでも当たろうかなって思って出て来たんだけど。そしたらさぁ、こんな綺麗な星空に巡り逢えたもんでね」


 椅子の背もたれに寄りかかり、僕は夜空に向けて両腕を広げた。

 偶然にも月明かりがない為、そこには、無数の星ぼしが集まって出来た光の帯、まさに空に流れる川の様に夜空に天の川が流れていた。


『ほんとだぁ』


「光の多い都会では、こんな光景見る事が出来ないだろ。折角だから、目を瞑っても直ぐに思い出せるくらい心に焼きつけておこうと思って。で、遠藤さんは?」


『私もちょっと眠れなくて』

 彼女は手で口を隠しながら、眠たそうに欠伸をした。


「長谷川さんのいびきが煩かったからだろ?」

 僕が意地悪そうにそう言うと、2人してクスクスと微笑んだ。







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