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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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121/136

121話  目覚めの時(1)


 10日の11時頃。遥は1人部屋の病室の前で、「コンコン」と扉をノックをしてから片瀬の様子を見に部屋に入っていった。


 端っこに立て掛けてあったパイプ椅子を広げ、片瀬が寝ているベッドの側で座り、遥は片瀬の顔を見ながら話し掛けた。


「おはようございます、片瀬さん。もう意識がなくなってから2日目の朝ですよ。仕事、遅刻しますよ。てか、この時間だとしてますね」


 話す筈のない片瀬に、遥は話し続けた。亜季が言っていた様に意識がなくても聞こえていると信じて。


「そうそう、私、声が出る様になったんですよ。早く聞いてもらいたいなぁ、片瀬さんに」


 そう言って、遥は片瀬の左手を両手で握ってみる。しかしその手は、遥の手を握り返す事は無かった。


「明日、昼から長谷川さんと相原さんが、お見舞いに来てくれるみたいですよ。知りませんよ~、早く起きないと。長谷川さん、片瀬さんの頬をぶん殴ってでも起こしてやる~、って言ってましたから。あ~、そう言えば、亜季さんも同じ事言ってましたね」


 遥はその時の事を思い出して、1人微笑んでいた。


「私も来年は、大学も卒業です。他の皆は進学先も決まって、私だけがまだです。まぁ、仕方がないんですけどね。でも、焦ってはいません。何故かと言うと、やりたい事が見つかって、それに向けて頑張ろうかなってそう思っているんです。また目が覚めたら、片瀬さんにも相談に乗ってもらいたいなぁ、って思ってるんですよ。だから早く起きて下さいね」


 そうやって話し掛けている内に、病室のちょうど良い暖房の温度と、窓から差し込む太陽の光の暖かさで、いつの間にか遥は、前屈みになって片瀬の左手を握りしめながら寝てしまっていた。


    

     *************



 窓の外で止まっているであろう雀の「チュンチュン」と言う鳴き声が、少しずつではあるがハッキリと聞こえて来るようになってきだした。


 僕は、薄っすらと目を開けて見る。久し振りに目を開けたせいか、太陽の光が妙に眩しい。


 別に何かを考えるいる訳でも無く、ただボォ~と暫くの間、天井を眺めていた。


 次第に意識がハッキリするにしたがって、体の至る所でズキズキと痛みを感じる。


 ここは?


 見た事のない白い天井。僕の部屋には無い、ベッドとふかふかの掛け布団。そして、両腕を枕代わりにして、僕のベッドの左手の側で、「すぅ~すぅ~」と寝息をたてて眠っている遥が側に居る事に気付いた。


 何だか、気持ちよさそうに寝ているなぁ。


 彼女を起こさない様に、僕はまた、天井を眺める事にした。


 夢、か~。


 さっき見ていた夢がいったい何だったのか、今となってはもう、ハッキリと覚えていない。

 

 僕は、「はぁ~」と溜息を着いて、そっと肩の力を抜いた。


 同じ姿勢だと腰が痛くなってきたので、少し寝返りをしてみる事に。


 すると「ゴソゴソ」する音と振動で遥も目を覚まし、寝ぼけ眼で僕の様子を窺っている。僕は彼女と目が合うと、「おはよう」と静かに声を掛けた。


 僕の声を聞いた遥は、驚いた顔で咄嗟に我に帰り、ガバァっと上半身を起こした。


 








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