異世界人VS天才科学者 Part2
錬金術と呼ばれる秘術、直人の住む世界でも名前くらいは聞いたことがある。
それは、根幹は万物の全ての事象を操れるとする賢者の石を生成するのを目的としたモノであった。だが、それはほとんど夢物語で現実的に錬金術が取り扱われることはなかった。あくまでも創作の中での話であった。
だが、今直人の目の前で錬金術だというその力を目の当たりにした。
「ほれ、まだ挨拶代わりじゃ。どんどんいくぞ?」
そう言うと、何発もの巨大な炎の塊をこちらに飛ばしてきた。
「うわっ! 危ねっ!」
しかし、直人も間一髪のところで全てを避け切っていた。直人は脇に避けて避けてを繰り返し壁際まで来ていた。壁を見るや、壁に手を当てて魔導の力を使った。
「炎を使うなら……これならどうだ!」
そういうとセツナの頭上の天井から大量の水が溢れ出していた。
「くだらんの」
しかし、それも頭上に展開されたシールドによりセツナに直接着水することはなかった。直人は歯ぎしりした。どうしたものか……遠距離にいては一方的に攻撃されてしまう。状況を好転させるには接近して闘うしかない。そう結論付け、直人は一気にセツナとの距離を詰めようと走り出した。
「お? 距離を詰めるつもりかのぅ? じゃが、そう簡単に詰め寄らせると思うたか?」
今度は別の試験管を取り出し蓋を開け、今度は少しばかり試験管の口をこちらに向けて来た。すると、試験管の口元から電気が走り、小さな雷となって直人に向かって放電された。だが、それを直人は床を足で踏み抜き、踏んだところから巨大な炎の壁を作り出した。炎の壁に阻まれ雷は直人の元までは届かなかった。これにはセツナもいくらか驚いたようだ。
「ほお。足で触れても魔導の力を行使出来るようになっておったか」
セツナが素直に感心した様子を見せると直人はニヤリと笑って見せた。
「まあな。手で出来るんなら同じ肌の足でも出来るんじゃないかとそう思ったのさ。まあ、足は手と比べて触れる肌の面積が少ないから出来るようになるまで少し時間が掛かったけどな」
「ならば、もう少し錬金術の力を見せるとするかの」
今度は先ほど使ったばかりの二本の試験管のうち一本、直人から炎を出した試験管なのか雷を出した試験管なのかは分からなかったが、それを蓋をして仕舞い、次に内ポケットからまた一つ試験管を取り出した。だが、今度の試験管は少しばかり大きいものだった。何が起こるのか。直人は警戒していると、セツナはこちらに喋りかけてきた。
「どうした? 警戒しとらんで向かってきたらどうじゃ?」
「望み通り向かってやる!」
明らかに挑発であったが、こうして睨み合ってるだけにもいかないのも事実だ。意を決して、もう一度、刹那の懐まで接近するため、走り出した。
それを見たセツナはニヤリと笑い、新たに出した大きい試験管の蓋を開け、前方に振りまいた。だが、その試験管には中身が入っていないため、一見辺りに何か変化が起こったようには見えない。だが、その変化にすぐ気付くことになる。
今度は、今まで使っていた試験管を再びしまい新たな別の試験管を取り出した。その蓋を開け、口元を笛を吹くようにして息を一息吹いた。すると、試験管の口から伸びるようにして鋭い氷柱のような先が鋭くまた太くてでかい氷の杭が伸びていた。
「ちっ!」
セツナのところまで残り二メートル、それを間一髪で避け再び接近しようとした。がそのとき、避けたと思った氷の杭からいくつもの氷柱が針の山のように何本も突き出して、直人を串刺しにしようとしていた。それを、なんとか体を丸め、心臓と頭を隠し間一髪で致命傷を避ける。しかし、体中のあちこちを刺され、相応のダメージを負ってしまった。
「それなら!」
なんとか、受け身を取り体制を整える。再び、足を踏み抜き今度はセツナの立っている地面から直接氷の柱を伸ばそうとした。だが、それは叶わなかった。魔導の力を行使したのに、柱は生まれなかった。否、その後炎や水、いろいろなものを出そうとしたが出すことはできなかった。
「何故……」
理由が分からない。ここにきて魔導の力を発揮できない理由、それは一体。だが、その疑問にセツナはあっさりと答えた。
「何故ってそんなものワシのシールドに阻まれているからに決まっておるだろう。お主がゼロ距離で魔導の力を撃ってくるのは分かっておったからのう。床に直接シールドを張らせてもらったのだよ。そうすれば、魔導の力は即消滅、撃てるわけもない」
「なっ……」
冷静に考えてみれば、セツナのシールドは自由自在に展開できる。当然、こういった床などにも直接展開できるのは容易だろう。直人は改めて、セツナのシールドの万能性を実感した。
「くそ、これじゃ攻められないじゃないか……」
「なら諦めるか……?」
挑発するように問いかけてくるが、直人は意にかけない。
「それでも、諦めるわけにはいかない!」
がむしゃらにセツナの攻略法を見つけるため、もがき戦おうとしたとき、セツナが突如後ろを振り返った。
「やはり、ここでやめておくとしようかの。ワシも久々の運動で少し疲れた。これ以上お主を苛めても可哀相だしの。今日はこのくらいで終いにしてやろう」
「待て! 勝負はまだ……!」
以前諦めようとしない直人は続行を申し出る。だが、それを聞き入れず、セツナは部屋のドアの方まで、歩いて行った。そこで、ドア付近で直人とセツナの試合を観戦していた明里となにやら直人には聞こえない声でしばらく話をしてそのまま、セツナは部屋を出て行ってしまった。それと同時に、明里が直人の元まで駆け寄ってきた。
「お疲れ様。残念だったね。セツナあれでもまだまだ本気出してないみたいだからね。私でもまともに勝てないし、本当に恐ろしい子だよ」
そう言いながら、明里は直人にタオルを渡し、直人はそれを貰い体中の汗を拭いていたがその眼にはいまだ、悔しさに満ちた眼をしていた。よほど悔しかったのだろう。明里はそう感じた。
「くそ……このままじゃ、世界を救うなんてとてもじゃないけどできやしない……!」
「確かに今回はほとんど負けのような勝負だった。だけど、まだ期限まで二週間ある。それまでにもっともっと強くなればいい。焦ることはないよ」
「焦るさ! あんな小さな子にすら手も足も出せないなんて、それで地球を滅ぼそうとしている奴なんか止められるはずなんてない!」
自分の弱さへの自責の念が直人を苦しませる。が、それは明里にはどうしようもなかった。だが
「大丈夫。君は強くなる、必ず」
今は、黙って直人の頭を抱きかかえてあげることにした。
「ところで、聞き忘れておったのだがなぜあの少年に話さない? 報告を聞く限り、平行世界に関する情報、全てを話してはおらんだろう。もう二週間は経ったのじゃが?」
そう言ったのは、トレーニングルームから出て行こうとするセツナだった。
「だって、話して何の意味があるの? あの子のやる気がなくなったらそれこそ台無しじゃない」
「ワシはそうやって都合の悪い情報を開示しないお主の姿勢は好きじゃない。なんならワシの方から話してもいいんじゃぞ?」
「待って! それだけは待って! あの子には不安を抱かせたくないし、今はあんなにやる気出してくれてるんだからそれでいいじゃない。それに、私だって神崎薫を倒してはい終わりなんてそんな無責任なことはするつもりない。そっちの方もちゃんと対策を考えてるから」
「まあよい。今はそういうことにしておくとしようかの。まあでも、あの小僧にはこの世界での日付がくれぐれもばれない様に気を付けるんじゃの」
「分かってるわよ」
「それにしても、まあ何もヒントもなしに予想はできんのぅ。まさかこの世界が日付上はあの小僧の世界から比べてはるか二十年前を指し示しているなんてのはのう。それでも、個々の世界でも小僧の世界でも今は今じゃがのぅ。それに変わりはない」
「ええ。でも、最悪の場合は時間のずれが生じるということは……」
「それはワシの仕事じゃないし関係のないことじゃの。まあいい、ワシは研究室に戻る」
「お疲れ」
そう言って、セツナはトレーニングルームを出て、明里は直人の元へと駆け寄っていった。少しの罪悪感を胸に潜めながら……。
To be continued.




