The beginning of the nightmare
この世にはいくつもの、無限大ともとれる無数の世界が存在する。
本来、決して交わることのないはずの似通っていてそれで明確に違う世界。
人々はそれを『異世界』と呼んだ……。
変わらない日常、変わらない日々、変わらない世界。
何一つ変わらない毎日を何一つ変わらないように生きていく。だが、ちょっとしたことをきっかけにすべてが崩壊することもある。これは一人の少年の人生のターニングポイントの物語である。
「やっぱり将来は世界中を旅してみたいわ」
夕方のとある家の一室。男子高校生三人が集まり、談義に華を咲かせている。
話の途中、将来のことについて話題が飛んだところ、突飛な話が出てきた。
「また出た!神崎の意識高い系発言。どうせまた、普通のことはしたくないとか言い出すんだろ」
「当たり前だろ、逆にお前は普通に生きて普通に仕事してほかの人と変わらない普通の人生送るつもりかよ?」
神崎と呼ばれた男は当然のごとく胸を張る。その様子にほ他の二人は呆れ気味だ。高校生にもなって中二病が抜けきっていないのだ。いや、厨二病というべきか、とにかく間違った方向に意識が高いのだ。
そんな神崎の様子に一人が言葉を返す。
「普通が一番だろ。世の中そうそうファンタジックなことは起こらない。人生は地味なのが基本」
一人がもっともらしいことを言うがこの神崎においてはなんにも言葉が響くことはない。いつものように頭の痛いことを並べ立てて終わりだ。
「何も起こらないと思っていたら何も起こらない。何か起こると思わなきゃ何も起こらないのだよ」
「はいはい」
そして友人たちもこうやってテキトウに流すのが通例となっていた。
そんなくだらないような話をして時間も過ぎ、男達の雑談会もお開きとなった。
神崎は雑談会場の家を離れ、一人で自宅への道のりを歩いていた。いつもと変わらない通り道、夕方の薄暗い家々に挟まれた通りを一定間隔の電柱につけられたライトが照らす。
だがいつもと変わらない日常は崩れ去った。
神崎はそれを一瞬で認識した。
まるで動物が二足歩行しているかのような通常あり得ないような毛深さ、明らかに狐のような上に伸びた耳、毛深いしっぽ、そこそこ高い身長、見た目の年齢は20から25くらいだろうか? 少しばかり自分よりは大人に見える。さらには高い身長が合わさって全てが異彩を放っている。むしろここに来るまで何も注目されなかったのだろうかという疑問さえ湧いてくる。
あれやこれや思考を巡らしながらゆっくり近づき、5mほどの距離まで近づくとそれは語りかけてきた。
「君……見えてるね?」
その声は見た目に反し透き通った少し高い女性の声だった。
質問の意味はよく分からないが目の前の異形に少しでも会話を試みようとした。……が、突然の事態に中々言葉が喉から出てこない。非日常的なことを望む神崎にとって聞きたいことは山ほどある。だが、それ以上に目の前の異形に気圧されてしまっている。
「どうしたの? 怖い? 反応からいっても私の姿は見えてはいるよね?……ゆっくりでいいから話してごらん」
「あ……あの! あなたは誰なんですか?」
やっと開いた言葉は驚くほどに普通の言葉だった。
「私? 私の名西園明里。ちょっとわけあって君の力を借りたくて会いにきた。少し話を聞いてくれないか? とは言ってもこの場所ではなんだし、少し場所を変えようか。君以外には私の姿は見えないわけだし、君がただの不審者になってしまう」
こうして、二人は場所を変えることになった。場所は10分ほど歩いた住宅街のはずれ、人気も少ない空き地だ。ここでなら話し辛いこともある程度は話しやすいだろう。
移動している途中、小さな声ではあるが会話をしてお互いの情報を話し合っていた。
「西園さん? あの俺の名前は……」
神崎が名乗ろうとしたとき、先に西園明里と名乗った獣人のような女性はすべてを見透かしたようにこちらの言葉を先に言った。
「神崎直人君だろう? 知っているよ。とは言っても、君自身のことを詳しく知っているわけではないのだが……」
「……?」
西園の言葉がイマイチ要領を得ない。この人は何を言っているのだろうか。そんな疑問を神崎は頭の中を巡らしていた。
「ああ、すまないすまない。少し混乱してしまったかな? 詳しいことは後で話そう」
そう言って、目的地に着くまでお互いの間に沈黙が走った。
そうして、目的地の空き地に到着した。短い距離をお互いは向かいあった。
まずは西園が言葉を開いた。
「では、待たせてすまない。まずはいきなりで悪いけど、この世界とこことは別の世界について話そうか」
「こことは別の世界……」
通常ならそんな荒唐無稽な話、信用するに値はしないが、目の前に荒唐無稽な存在が見えてしまっている。多少は信じることができてしまう。だが、それでもまだまだ頭の理解が追い付かないのも事実だ。慎重に話を聞いていた。
「そう。私の姿を見てもらえればわかると思うけど、私はこの世界の人間ではない。正確に言うと私は人間というのも少し正確ではないのだがここでは置いておこう。それで、話は戻るが、私はこことは別の世界からやってきた。所謂、異世界というところだ。私から見たらこちらのほうが異世界なのだが君からしたらこちらが異世界だろう」
どうやら、この西園という女、口数が多いらしい。神崎は少しばかり必要でなさそうな台詞回しもあるように感じていた。まだ話の全容がわかっていないから勘ではあるが。
「そしてこの異世界、どちらかといえば、君らの世界の言葉で言うなら『平行世界』と言ったほうが正しいだろうね」
「異世界というのは異世界と言いつつほとんどどこの世界も見た目の形態はあまり変わらない先にも言ったとおり平行世界という表現の方が近いんだ。つまり……」
西園は話を続ける。
「本来直接交わることのなかった各平行世界。だが、その中の平行世界の一つが危機にさらされた」
「それが私の住む世界だ」
「そこでだ。君に私の世界を救ってもらいたい」
To be continued.




