二度目の「はじめまして」
君の言葉を疑っていたら、残されている「期限」に気付けていただろうか。
カサ、と乾いた音を立てて、足元にポカンと丸いものが転がってきた。
休日の午後。公園のベンチでぼんやりとスマホを眺めていた僕は、視線を足元に落とす。それは、少し使い古されたカラフルなゴムボールだった。
「あ、ごめんなさい! 取ってくれますかー?」
少し離れた木陰から、弾んだ声が聞こえる。
拾い上げて顔を上げると、そこに一人の女の子が走ってくるところだった。
風になびく髪と、ひらりと揺れる白いワンピース。
彼女は僕の目の前まで来ると、少し肩を上下させて息を整え、僕の手の中にあるボールを見つめた。
「ありがとう。それ、あっちで遊んでた子供たちのボールで……」
「あ、はい。どうぞ」
ボールを差し出すと、彼女の小さな手が僕の手とすれ違う。
その瞬間、彼女の動きがピタリと止まった。
どこかで会った記憶なんて、これっぽっちもない。名前だって聞いたことがない。僕にとっては、間違いなく完全な「初対面」の女の子だった。
なのに、僕のことを見つめる瞳は、なんだか儚く今にも涙が溢れてきそうな瞳だった。
「あの…何か顔についてます?」
勇気を振り絞って話しかけてみる。
そうすると、彼女はハッとしたような仕草を見せ、その長い睫毛が生えているまぶたを、1回、2回と瞬きさせる。その仕草さえも画になるような美しさだった。
僕が見惚れていると、彼女は小悪魔的な表情を浮かべ、僕に言ってきた。
「優しいしかっこいいとか、お兄さん最強じゃないですか」
「…はい?」
なんて返事を返したらいいのかわからなく、腑抜けたような声が出てしまった。
彼女はニヤリと笑うと、続けて言った
「今日寒いですし、そこの自販機で暖かいものでも飲みませんか?ついでに、もし彼女いなければ連絡先欲しいなーって思って」
突然起こった、このナンパみたいな展開、ドギマギしている僕を見ると、また彼女は笑う。
その笑顔と裏に、どんな大きな覚悟と決意が隠れているのかも知らずに。




