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婚約破棄から…てか婚約破棄されない。これでは、私のハッピーエンドは?え、道連れって?  作者: 安藤昌益


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追いつめられたからよ

「そんなこと言われても…そうだ、少し時間を。」

“とにかく時間を稼ごう。ん、そうだ、それがいいわ!”考えがまとまらないから、その作戦でいこうとした。

「駄目だよ。」

 王太子は、にべもなかった。彼も自分のコップに注ぎ、そのコップを口元に運んで、一口含んでから、

「俺達は結婚に向けて動き出しているんだ。国策なんだ、何度も言っているように。時間稼ぎは、出来ないんだ。君の希望を、今、聞こうと言うのは、最大限の譲歩なんだ。俺が君を愛しているからゆえの。君が、婚約破棄を今言わなければ、俺との結婚に合意していると言うことなんだよ。沈黙は、合意なんだ。俺も、君が沈黙するなら、結婚を合意していると判断する。2度目はない。」

 顔を近づけて見つめるルイスに圧倒されながら、ルシアは必死に考えていた。

“このままでは、予定が狂っちゃうじゃない。いや、もう狂っているか。私が婚約破棄を言い出せばいい?悪者が私になっちゃうだけじゃない。追放とか、冤罪を着せるとかはしないと言ってるし、…。待って、そしたら、私、誰とも出会わない?だけど、どうして、こんな男と…、ちょっと待って、どうして駄目なのよ?悪い人ではないわよね。小さい時から…親切にされた記憶しかないし…、悪い噂もない。原作も、ゲームも、唐突に婚約破棄で、それ以前は、嫌がっている記述はなかったし。詳細設定とかには、悪行が、書いてあったけど、こんなことにどうして気がつかないの?っというところがあったし、そんな奴が王太子?廃嫡されていたっておかしくないわよ、って感じだったよね。顔だって、悪くはないし、愛人とかの話はないし、まあ、細々としたものばかりだけど、いい評判しかないし、悪い相手じゃないか。ああ、こうなると、こいつに愛されないとハッピーエンドにならない?あ~、どうしよう!”その挙げ句の果てに出てきた言葉が、

「もちろん、私はルイス様の婚約者です。だから…ルイス様が、婚約破棄しない限り、私はルイス様との結婚を…心から望んで…います。」

 ルイスは、その言葉を聞いて満足げに肯き、彼女の手をとって立ち上がった。

「では、寝室に行こうか。」

 頭が混乱し、不安がいっぱいのルシアには、断る気力はなかった。

 彼は、寝室に入ると、直ぐに裸になって、彼女にも裸になるように促した。恥ずかしがる彼女に、

「美しい妻の裸体を見たいんだよ。」

などと言った。そして、彼女の裸体を鑑賞するように眺め、

「素晴らしい。自分の幸運を、神に感謝するよ。」

“あの俺も、あの中で、彼女の裸体を見てれば気持ちは変わっていたのだろうか?”

 そのまま彼女を抱きしめた。

「震えているね。」

「ルイス様こそ。」

 ルイスが震えていることが、何とか分かる程度に自分を保っていたので、すかさず言い返した。

「僕も経験豊富じゃないからね。それと、君を僕のものに出来て、嬉しいんだよ。だから、緊張もしてるんだ。」

 そして、彼女を抱きかかえると、ベッドに運び、横たえた。自分も脇に、身を横たえると彼女を抱きしめた。

「僕は君が頼りなんだ。君も僕を頼ってくれ。僕は、君を守る。ともに、手を携えて、戦友として、助け合おう。もう、一心同体、道連れなんだから。」

 “道連れ?”その言葉に強く反応して、自分が孤独な存在に思えて、ひどく心細くなってしまった。

「私を見捨てないでください。」

 考えてもいなかった言葉が出てきてしまった。彼が返事代わりに唇を重ねると、貪るような口づけに応じてしまった。頼るのは彼だけだという気持ちが、体を燃えあがらせて、彼に甘え、求めまくってしまった。同時に、共に、としきりに言う彼を愛おしく思えてしまった。

“してやられてしまいましたわ。”浴槽の中で、心地よさを感じながら、後悔と“このくらいが何だっていうのよ!”という思いが沸き上がってきた。各国の王を虜にして、権勢を振るった女達は、誰も処女で王と出会ったわけではないことを思いだした。“このくらいで、屈服しないわよ。”

「どうしたんだ?黙ってしまって?この風呂が気に入ってもらえたのかな?」

「え、ええ。ルイス様のお屋敷全てに、このような浴室があるのですか?」

“私がお父様に造らせたかったお風呂なのよね。”

「全部ではないよ、今のところはね。ああ、北の辺境の、君の父上の領地の隣にある別邸の風呂は、今造らせているところだよ。」

“何で?そんなところのことを?行くわけないでしょ!”皮肉っぽい、いたずらっぽい表情を浮かべる彼を軽く睨んだ。

「さあ、そろそろのぼせてきましたわ。あがりませんこと?」

「じゃあ、一緒に上がろうか。脱衣室は一つだよ。」

“こいつは~!”

 その日は、朝食の席から、王家のマナーなどを彼付の侍女頭から仕付けられることになった。ただし、彼女の実家から来ている侍女頭が、

「わが公爵家は、そのようなことはいたしません。」

と度々口をはさみ、にらみ合いを始めた。大抵ルイスが笑いながら、裁定を下した。

「新しくしてもいいだろう、その点は。」

とか退くべきところは退きながら、

「先程は、そちらを通したのだから、ここは。」

と固執したりした。彼自身が、第三のやり方を提案することもあった。その度に、彼はルシアに

「どうだろうね?」

と持ちかけた。彼女も三回に一回は、彼の意見に意義を唱え、10回に1回は、妥協を拒否したりした。度々、自分の侍女を窘めたり、宥めたりもした。昼間の領内、周辺の町、村の視察などもしながら、一日中そんな調子となった。

 



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