第23話:渦巻く隠謀
カナン達はペンタスの国境にあるルーベンスの門へと辿り着いていたが、そこから先に進めずに立ち往生していた。なぜなら、ルーベンスの門を守備しているドラン将軍が門を固く閉ざしていたためである。
カナン達がフルーレ王国へ入るためにはどうしてもこの門を通るしか道がなかった。そこでカナン達はドラン将軍に通してもらえる様に手紙を出した。
ドラン将軍は温厚な性格で話をすれば無駄な戦いをせずにすむ可能性が高かったからである。
ドラン将軍もカナンの手紙に対してフルーレ国王に許可証をもらえる様に何度も手紙を出していたが、国王からの返事は全く返ってこなかった。なぜなら、その手紙は全て国王の側近であるゼナム大臣が握りつぶしていたからであった。そのため、ドラン将軍は仕方なくカナンの要求に応じられないと門を閉ざしていた。
(カナン)
「……どうしよう、レクトル?」
(レクトル)
「このままでは何時かペンタス兵か、ラングス兵に捕まってしまいます。ここは無理してでも強行突破するしかありませんね」
レクトルは強行手段に出ることを提案した。
(カナン)
「……やはり、それしかないのかな。できるだけ無益な争いはしたくないんだけど……」
カナンは気の進まないまま強行突破の手段に打ってでることにした。
(カナン)
「それじゃ……クルーいつも通りお願いするよ」
(クルー)
「へいっ、旦那っ!あっしにお任せするでやんす」
(レイチェル)
「ちょっいとお待ちよ。あんたじゃ、心もとないね。あたしが代わりに行くよ」
レイチェルはここぞとばかりに名乗りをあげた。
(クルー)
「ちょっ……全く強引でやんすな……どうせ忍び込むついでにルーベンスの砦から金目のものを盗む気でやんす」
(レイチェル)
「心外だね……あたしはこないだの借りを少しでも返しておきたいだけさ。半人前がでしゃばるでないよ」
(クルー)
「心外はこっちでやんす。姉御が思ってるほどあっしはもう未熟でないでやんす」
(カナン)
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて……それじゃ、こうしよう……クルーは伝達係、レイチェルは門を開ける係ということでどうかな?」
(クルー)
「……わかったでやんす」
(レイチェル)
「仕方がないね。そうするとしようかね」
クルーとレイチェルはカナンの妥協案に賛同するとルーベンスの砦に潜入した。そして、見事に内側から城門を開いた。
(カナン)
「できる限りルーベンスの兵士達は傷つけないように……」
カナンは無益な血を流さなくてすむように命令した。
(カナン)
「それじゃ……行こうっ!」
カナンは剣を高く掲げるとルーベンスの砦へと雪崩れ込んだ。そして、なるべくルーベンスの兵を殺さずにドラン将軍の元まで辿り着いた。
(カナン)
「ドラン将軍、もう無駄な戦いはお止め下さい。これ以上、あなた方を傷つけたくはありません」
(ドラン将軍)
「カナン皇子、そのお心遣いとてもうれしゅうございます。ですが……老いたとはいえ私も武将の端くれ。上からの命令には絶対なのでございます」
ドラン将軍は銀の槍を天高く振り上げるとカナンへと降り下ろしてきた。
カナンはその攻撃を素早く避けるとドラン将軍の鎧に剣を突いた。
(ドラン将軍)
「無駄ですぞっ!この鎧は固さにおいてはどんな攻撃も通しませぬ」
ドラン将軍は槍を戻すとカナン目掛けて突いてきた。
カナンはその攻撃を紙一重でかわすと再びドラン将軍の鎧を突いた。
(ドラン将軍)
「無駄ですぞ。何度突こうとも貴殿の攻撃は効きませぬ」
(カナン)
「まだですっ!」
カナンは何度弾かれようとも突きによる攻撃を止めなかった。
(ドラン将軍)
「いい加減諦めてお引き取りを……」
ドラン将軍がカナンに兵を引くように説得しているとドラン将軍の鎧にヒビがはいった。ドラン将軍の鎧は度重なるカナンの攻撃により金属疲労を起こしていた。
(カナン)
「……今だっ!」
カナンは身を引くとベレーとレイズに弱目のサンダーを放つように合図した。カナンの指示でベレー達は雷の魔法をヒビのはいった鎧目掛けて放った。
(ベレー)
「サンダーっ!」
(レイズ)
「サンダーっ!」
二人の放った魔法は見事にドラン将軍に命中した。
(ドラン将軍)
「ぐはっ……やりますな。ですが……この程度では……ぐぬぬ」
ドラン将軍は雷の電気効果により筋肉が麻痺していたため、身動きすることができなかった。
(カナン)
「あなたの負けです……素直に投降してください」
(ドラン将軍)
「……できませぬ。例え、ここで命を落としたとしても私は……」
(カナン)
「確かに……あなたは立派な武将かもしれません。てすが……それと同時にあなたは一人の人間でもあります。あなたは決して冷徹な人間ではありません……」
カナンは剣を床に置くと痺れて動けないドラン将軍の手を握った。
(カナン)
「ドラン将軍……どうか私達をこのままお見逃しください……お願いします」
カナンは片膝を着くと頭を下げた。
(ドラン将軍)
「カナン皇子……分かりました。貴殿達の入国を認めます」
ドラン将軍はカナンの言葉に心を動かされるとフルーレ国への入国を許可した。
(ドラン将軍)
「私はフルーレ国王に直談判に行ってまいりますのでカナン皇子様達はこのまま北にお向かいください」
ドラン将軍はカナン一行の通行を認めてもらうためにフルーレ国王への謁見を考えていた。
(カナン)
「色々とご迷惑をお掛けしまして、すみませんでした」
(ドラン将軍)
「気にしないでください。お互いにぶつかりはしましたが、無駄な命を散らさずにすみましたので……」
レクトル達はカナンの指示通りにルーベンスの砦の兵士達をほとんど傷付けることなく制圧していたため、誰一人として死者は出ていなかった。
(ドラン将軍)
「それでは……道中お気を付けて……」
(カナン)
「色々とありがとうございました……」
カナン達はドラン将軍に手を振ると北にあるケルト国を目指して出発した。
ドラン将軍はカナン達を見送ると王都を目指して竜を飛ばせた。そして、ドラン将軍は直々にフルーレ王へ自らの思いを伝えた。
(ドラン将軍)
「……という訳でございます。何とぞカナン皇子達の通行をお認めください」
ドラン将軍は深々と頭を下げた。
(フルーレ王)
「……おかしいな。その様な手紙は私には届かなかったぞ」
(ドラン将軍)
「左様でございますか?それはおかしいですな……」
(ゼナム大臣)
「そんなことより……貴様は何を流暢に構えておるのだっ!みすみす逆賊を逃しただけでなく、おめおめとこの王都まで逃げ帰ってくるとは恥を知れっ!」
ゼナム大臣はドラン将軍を捲し立てると手紙の一件をうやむやにした。
(フルーレ国王)
「まぁまぁ、ゼナムよ。落ち着くがよい。ドランは実に忠義を尽くしてくれておるわ」
(ゼナム大臣)
「ですが、国王……」
(フルーレ国王)
「その件はもう良い。それよりも……私はドランほどの男が忠義を曲げてまで嘆願に来させたカナン皇子にとても興味を持ったぞ。是非とも直に会って話をしてみたいものだ」
(ゼナム大臣)
「なりませぬぞ、フルーレ王っ!もし、そのような事を王がなされたらラングス王は我が国にも兵士達を送り込んできてカトレア国の二の舞になってしまいますぞっ!」
(フルーレ王)
「ゼナムよ……何を恐れる必要があるのだ。私はドランの話を聞いて是非ともカナン皇子に会ってみたくなったぞ」
(ゼナム大臣)
「王よっ!何を戯けた事を申しておられるのですかっ!」
(ドラン将軍)
「大臣っ!王の御前だぞっ!口を慎めっ!」
ゼナム大臣は忌々しそうにドラン将軍を睨みつけた。
(フルーレ王)
「とにかく一度カナン皇子達と話をしてみたい。このフルーレ城まで連れてきておくれ」
(ドラン将軍)
「はっ!直ちにお連れいたしますっ!」
ドラン将軍は急いでカナンの所へと向かった。
(ゼナム大臣)
「くそっ!何と忌々しい事だ、ドランの奴めっ!」
ゼナム大臣が部屋の物に当たり散らしていると背後から声が聞こえてきた。
(バルズ)
「……そんなに忌々しいのならば、あなたがこの国を治めればいいのではないでしょうか?」
(ゼナム大臣)
「貴様は一体誰だっ!」
(バルズ)
「これは、これは大変失礼致しました。私の名はバルズと申します。以後お見知りお気を……」
バルズはお腹に手を当てると腰を曲げた。
(ゼナム大臣)
「それで……貴様はここへ何をしに来たのだ?」
(バルズ)
「私はラングス王の使いでここへ参りました。あなたの王は何も分かっておられませんね。我々のラングス国を敵にまわすという事は滅びるという事を……」
(ゼナム大臣)
「全く以てその通りだっ!私があれだけ忠告を申し上げたというのに……全く耳を貸そうともしない」
(バルズ)
「そこで我々はあなたに良い案を持ってきたのです」
(ゼナム大臣)
「その案とは……一体何なのだ?」
(バルズ)
「その案とは……カナン一味がこの城を出ると同時に周りの兵士達にやつらを殺すように命令するのです。そして、フルーレ王を亡き者にして、その罪は全てカナン一味にきせればよいのです」
(ゼナム大臣)
「そうかっ!それは何と良い案だっ!」
(バルズ)
「我々ラングス国はあなたが王になるためであれば協力を惜しみません」
(ゼナム大臣)
「それは誠かっ!」
(バルズ)
「はい……」
(ゼナム大臣)
「そうか……ふはははっ!」
こうして、ゼナム大臣はバルズに唆されてフルーレ国王を暗殺することを決意した。




