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ALONES  作者: 旅がらす
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8/14

2-3 Kikka 襲撃

遅ればせながらの投稿です。かなり間が空いたなぁ(汗)

今回のお話は、これまで少し影の薄かったキッカ視点です。

『『禁書目録』を渡さなければ、本条トウマを殺します』


 あまりにも理不尽な要望が、モニター室に響き渡った。


「ふざけんじゃないわよ……!」

 キッカは、突如現れてきたテロ組織の要望に、拳を握りしめた。横目でレンを見ると、レンはイツキにしがみついて小さく震えていた。イツキは、そんなレンを黒ずくめたちから遠ざけようと、自分の背中側にレンを押して、黒ずくめたちと対峙する。

 黒ずくめの一人が、二人に近寄った。ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべている。

「昨日はよくもやってくれたな、小僧」

「…………」

 しかし、イツキは答えずに、黒ずくめを睨み付けた。それが面白くなかったようだ。黒ずくめはもっていた拳銃でイツキの頬を殴る。

「……っ!」

「いっちゃん!」

「イツキ!」

 ヒカルとキッカはイツキに駆け寄ろうとした。

 しかし、

「動いちゃ駄目だよ」

 まだ年端も行かないような少年の声が、後ろから二人を“引き止めた”。

「え……?」

「うご、かない?」

 キッカとヒカルは、指一本すら動かすことができなかった。何かに縛られているわけではない。まるで、金縛りにあっているように、二人の動きは封じられていた。

「大人しくしててくださいよ。ボクは戦うのってキライなんです」

 二人の動きを封じたのは、黒ずくめのなかでも一際小柄な少年だった。レンと同い年くらいに見えるが、今のキッカたちに彼の姿は見えなかった。

「申し遅れました。ボクはメフィスト・コーポレーション所属の超能力者です。一応、遠隔念動力テレキネシスを持っています」

 少年は淡々とした口調で話しながら、左右の指を鍵盤を弾くように動かした。

「ちゃんと手を後ろに回して大人しく座っててくださいな」

 少年がそう言うと、キッカとヒカルは両手を後ろに回し、その場にゆっくりと腰を下ろした。少年が楽しそうに笑う。

「面白いでしょう? ボクはこの力を『人形劇マリオネット』って呼んでます」

 少年はそう言いながら、後ろからヒカルに近寄った。その手にはスタンガンが握られている。

「では、瞬間移動能力者テレポーターのお姉さんには、ちょっと失礼しますね」

 次の瞬間、キッカの隣でバチンという音が鳴り、紫電が散った。

「うぁっ!」

「ヒカル!」

 隣でヒカルがその場に崩れる。意識はあるようだが、身体中をガクガクと痺れさせていた。

「『強固なる神ヒュペリオン』のところへ行かれては困りますからね。しばらく大人しくしててください」

 少年は微笑みながらそういうと、次はキッカの両手に手錠を掛けた。いつの間にか、局員たちも部屋の角に集められ、反抗できないように拘束され、頭に銃を向けられていた。

「おら! 反撃してみろよ」

 部屋のほぼ中央で、イツキが男に腹を蹴られ、咳き込んだ。男は更に後頭部を撲る。イツキはついに、床に倒れ伏した。

「イツキ、イツキ!」

 イツキの後ろにいたレンが、しゃがみこんで倒れたイツキを揺さぶる。イツキは起き上がろうと体を浮かせたが、男に背中を踏まれ、また地面に伏した。

「……変だなぁ。どうしてあのお兄さんは反撃しないんです? お兄さんの能力なら楽勝じゃないんですか?」

 キッカの隣で、黒ずくめの少年が首を傾げた。キッカはそれに対し、だんまりを決め込む。


 イツキは反撃を“しない”のではない。反撃が“できない”のだ。

 イツキの念動力は、空間を固定化したり、エネルギーの流れる方向を変えたりすることで、標的を押し潰したり、凄まじい勢いで風を起こしたりすることができる。

 しかし、イツキは自分にはまだ強力すぎる能力を完全にコントロールする術を持っていない。全方位殲滅型の能力しか出せないイツキは、黒ずくめを倒すと同時にモニター室にいるキッカたちまで巻き込む危険性があったのだ。


『そのくらいにしときなさい。我々は殺しにきたのではないのですよ』

 そこへ、それまで何も言わなかったモニターのコウモリが、イツキを踏みつける男を止めた。男はモニターを見上げて小さく肩を竦める。

「一人くらいいいではないですか、ファウスト様。こいつらが如何に無力かを見せつけるくらいはさぁ」

『……まったく』

 ファウストと呼ばれたコウモリは、小さくため息をついた。イツキを踏みつける男は、更に言葉を続ける。

「第一級の念動力能力者サイコキノとか言いながら、まったく反撃しないガキとか、銃を奪われた程度で使い物にならない精神感応能力者サイコメトラーなんか、無力と呼ばず、なんと呼ぶんです?」

「なんですって……!」

 男の言葉を聞いて、キッカは男をキッと睨む。しかし、男は全く動じずにさらにキッカに追い打ちをかけるように笑った。

「あぁ、聞こえちまったか? でも本当のことだろう、木偶の坊さんよぉ」

「…………っ!」

 言い返せなかった。

 いや、もしかしたら何か言い返せたのかもしれない。けれども、キッカにはその言葉が見つからなかったし、声の言うことはあながち間違ってはいなかった。


 精神感応サイコメトリー

 遠隔知覚テレパシー

 透視クレヤボヤンス

 予知プレコグニション

 探知ダウジング


 五種類の能力を保持していながら、そのすべてが精神干渉系のESPに属するキッカの能力は、戦闘では無力に等しい。何とか精神感応や探知などを応用して、銃を難なく扱えるようにはなっているが、それだって今のように銃を奪われてしまえば、結局無力と化してしまう。


 これまで自分でも抑えていた、能力への劣等感が、男の言葉によって再び自身の心を脅かし始めていた。


「……私は、無力……」

(違う。違う違う違う違う違う違う違う違う!)

 必死になって頭からその考えを消そうとしたが、一度甦ったことは、簡単には消えてくれなかった。


 ――菊花きくか、君は無力だな。


 脳裏に“あの男”の言葉が過る。


 ――お母さんに言うんじゃないよ。君だって、知られたくないだろ?


「……やめて……」

「……キッカ、さん……?」

 向こうの方で、それまでイツキを揺さぶっていたレンが、心配そうにこちらを見てくる。イツキも、首だけを動かしてキッカを心配そうな眼差しで見る。

 しかし、キッカの視界に二人は映らなかった。


 ――特に、あのユウトとかいう男には……。


「……いやぁ……」


 記憶の中で、“あの男”が呪いの言葉を放つ。


 ――君が×××××なんてね……。


「いやあああああぁぁぁぁっ!」


 耐えきれず、その場に崩れた。思い出したくないものを思い出してしまった。

 自分が“こうなった”きっかけ。

 自分の大切なものが、どんどん崩れていった瞬間。

 その全てが、まるで鉄砲水のようにキッカに襲いかかった。


「……ん、“壊れ”ちまったか? がはははは!」

 崩れるキッカを見て、男はまるでそれが愉快で堪らないかのように大声で笑った。キッカの隣で、少年がやれやれ。とでも言うように、小さく両手を上げている。

「この、外道が……!」

 イツキが悪態をつくと、男は笑うのを止めて、イツキを見下ろした。

「あぁ? てめぇも壊してやろうか!」

 男はそう言うと、レンの長い髪の毛を引っ張って自分の方へ寄せた。

「やぁっ、痛い! 離して!」

「レン!」

 男はレンの胴体に腕を回すと、その体を易々と持ち上げた。

「触んないで。えっち!」

「けっ、未発達のガキが何ほざいてやがる」

 男はレンに銃を突きつけながら、イツキを蹴って仰向けにした。

「う……」

「哀れだなぁ。第一級念動力能力者さんよぉ。能力が強すぎる故に、俺たちだけを倒せないなんてな」

「…………」

「昨日の礼、たっぷりしてやるぜ!」

 男の足が、イツキの左腕に降り落とされた。ゴキ、と、骨が折れた音がモニター室に響き渡る。

「うああぁぁっ!」

 成す術もなく、イツキが叫び声をあげる。レンはイツキのそばへ行こうと、必死になって男の腕の中で暴れた。

「イツキ、イツキ!」

「さて、次はドコにしようか?」

 男はイツキの折れた左腕を爪先で突っつきながら、品定めをするかのようにイツキの体を見る。

「よし……頭だ!」

「やめてぇぇぇっ!」

 男の楽しそうな声と、レンの絶叫が響き渡り、男の足がイツキの顔面に向けて降り落とされようとしたそのとき、


「そこまでです」


 突如、モニター室の壁に扉が現れた。

視点をころころ帰るお話は難しいです。なかなか『ムシウタ』の岩井恭平先生のようにはいきません。

日々精進あるのみですね。頑張ります!(笑)

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