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ALONES  作者: 旅がらす
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2-2 Hikaru 『強固なる神』

タイトルはヒカルサイドですが若干、ユウト視点も入っています。

ついに支援局南中央支部支部長一行と、敵サイドが登場です。

 ユウトは、厳格な雰囲気の部屋で一人待機していた。


(相変わらず、ギャップのある部屋だなぁ……)


 部屋の主の性格と部屋の雰囲気を見比べて、ユウトは小さく肩をすくめる。

 しばらくすると、部屋のドアがゆっくりと開いた。


「アズリ。今度の被験者のデータは集め終わったか?」

『バッチシなのですよ、お姉サマ。ちょっと通ってる高校で停学を何度か喰らってるくらいで他は犯罪歴とかはないみたいですの!』

「ほう。ならば大歓迎であるな。……おい渡瀬、次の定期検査に来るように被験者に伝えておくんだ」

「了解しました」


 部屋に入ってきたのは、何故かチアリーディングに使うバトンを持った妙齢の美女と、首に黒いチョーカーを巻いた少女、そして体格の良い中年の男性という、何ともアンバランスな組み合わせの三人組だった。

 ユウトは三人組が入るとほぼ同時に立ち上がり、中央の女性に敬礼をする。


「古賀埜局長。お待ちしておりました」

「おう。私もお前と会うのを楽しみにしていたぞ。篠山管理官」


 妙齢の美女――南中央支部長、古賀埜こがのが楽しそうに笑う。ローズピンクのルージュがよく似合っている。

 すると、黒いチョーカーの少女がぴょんぴょんと跳ねながら、ユウトに敬礼を返してきた。


『ユウトさん、お久しぶりですの! キッカちゃんたちは元気ですの?』

「元気ですよ、アズリさん」

『敬語はやめてくださいですの。ワタクシはキッカちゃんたちだけじゃなく、ユウトさんともお友達になりたいだけですの!』


 明るくユウトに話しかける少女は、ユウトと話しているにもかかわらず、声を一度も発していない。しかし、彼女の『声』は、しっかりとユウトに届いている。


 南中央支部所属、第三級『遠隔知覚能力者テレパス及び過去視能力者ポストコグ』、古賀埜アズリ。


 古賀埜の実の妹である彼女は、三年ほど前に事故によって声帯を潰しまい、それと同時に現在の能力を手に入れたのだという。

 彼女は自分の意思を他者に伝えることで、意思疎通を可能としているのだ。その力は、人のみならず電子機器などにも応用が可能らしい。

 二人が話していると、古賀埜は椅子に座らずにデスクに直接腰掛け、仲間はずれになっているのが面白くなさそうにバトンをくるくると回しながら足を組んだ。


「おい。私も仲間に入れろ」

「支部長、椅子にお座りください」

「黙れ渡瀬。私のモットーは『天上天下唯我独尊』だ」

「意味履き違えてませんか?」

「私に口答えするとは、随分と生意気になったものだな、篠山」


 古賀埜がバトンをユウトに向けた。中年の男性――渡瀬支部長補佐が、肩をすくめる。

 それで観念したと認識したらしい。古賀埜は楽しそうににんまりと笑った。美人なのに、何故かその笑い方はとても不気味である。いや、美人だからこそ。だろうか。


「では、話題を変えよう。『禁書目録』が見つかったというのは本当なのか?」

「……あの、いきなり大きく変えすぎてませんか?」

「質問に質問で返すな、馬鹿者」


 古賀埜がバトンで机を叩いた。使い方を大いに間違えているのだが、あえてそこには誰も触れない。

「篠山君、報告を頼む」

 渡瀬がため息をつきながら、ユウトに説明を求める。ユウトもやれやれ。とでもいう風に小さく肩をすくめた。


「……分かりました。『禁書目録』について、報告します」

「おう。頼むぞ」


 一向に椅子に座る気配を見せない古賀埜を目で見やりつつ、ユウトは報告を始めようとした。

 そのとき、


『支部長! 緊急事態です!』


 局員からの放送が、局長室に響き渡った。

 




   ◆




 ユウトが古賀埜局長と会話をしていた数分前……。


「トウマくん……」

 ヒカルはモニター越しに、何重にも拘束されたトウマを見ていた。

 何度見ても、あの光景は決して見慣れない。ヒカルは思わず目を逸らしそうになる。


(……駄目……!)


 でも、ヒカルはモニターから目を逸らさなかった。あそこにいるトウマが、きちんと向き合っているのなら、ヒカルが目を逸らしていいはずがない。と心に語りかける。

 隣を見ると、レンがイツキの横でモニターを怒っているよう目で見つめていた。当たり前だ。普通、あれは『拷問』にしか見えない。


『検査を開始します』


 聞き慣れた無機質な声。それと同時に、トウマの両腕に当たる部分に変化が現れた。

 金属製の拘束具が少しずつ盛り上がっていく。それに合わせて、板との接合部がメリメリと浮き上がる。


「え……?」


 イツキの横でそれまで怒りに満ちた目をしていたレンが、驚愕の表情を浮かべている。無理はない。ヒカル自身、『アレ』をはじめて見たときは、驚きと恐怖感で何も言えなくなってしまった。


強固なる神ヒュペリオン


 それが、トウマの『真の能力』だ。ヒカルも詳しくは知らないが、脳から興奮物質を異常分泌することで、尋常ならない力を行使することができる能力だと聞いている。トウマは、この力を使っている間、身体中が沸騰したように熱くなるんだ。と言っていた。


「ああああぁぁぁっ!」


 両腕の拘束がいとも簡単に外れた。続けて、トウマは胸の部分の拘束具に手をかけた。指が拘束具に食い込む。まるで布を引きちぎるようにトウマは拘束具を剥がしていく。


 ――助けて……。


 ヒカルの脳裏に、八年前の記憶が蘇る。


 ――助けて、トウマくん……。


「……っ!」

 何度、過去をやり直したいと思ったか、数えきれない。あのとき、ヒカルがトウマに助けを求めなければ、彼はこんな場所にいなかったのかもしれないのに……。


「うあああぁぁぁっ!」


 突然響いたトウマの咆哮で、ヒカルは我に返った。モニター室がざわついている。モニターに目を移すと、そこには信じられない光景が映っていた。

「……なに、コレ……」

 拘束具に、電気が流れていた。それが直接トウマの体に流れ込んでいく。残す拘束具は下半身のみとなっていて、電流が流れるたびにトウマの上半身が跳ねるように金属の板に打ち付けられている。

 ヒカルは思わずモニターに駆け寄った。


「トウマくん!」


 モニターの向こうで、研究員の人たちがトウマの拘束具を外そうと計器を操作している。でも、拘束具が外れる気配は無かった。

 後ろで何かがぶつかる音がした。振り向くと、イツキが局員の人に掴みかかっている。


「おい、あんなのいつもの検査じゃしないだろうが! どうなっている!」

「わ、分からない! 私たちだって想定外の出来事なんだ!」


 イツキに掴みかかられた局員の人が戸惑いの声を上げている。周りで他の局員の人がどこかに連絡を取っている。

 トウマを襲った電流は、すぐに収まった。しかし、トウマはぐったりとして、ピクリとも動かない。周りの局員が急いでトウマの拘束具を外しにかかる。


「ちょっと、いったい何が起こってるの!」


 そこへ、キッカがモニター室に入ってきた。最初はただ慌てているだけだったが、モニターを見て一瞬で青ざめた表情に変わる。

「……トウマ!」

「ダメです! すべての機器が使えなくなっています!」

 局員の一人が、パソコンのような機器をいじっているけれど、うんともすんとも言わない。すぐさま、キッカが機器に触れる。

「……ハッキングされてる。敵は、こちらの第六十五プロテクトを突破。このままじゃここのプログラムをすべて支配されるわよ!」

 キッカは『精神感応』で得た情報をすぐさま局員たちに伝える。


「で、でも、どうすればいいんだ……?」

「アズリをここに連れてきて! 局長室に連絡は?」

「既にしてあります!」

「なら、それまでに使える機器を探して。今すぐよ!」


 キッカは冷静に局員たちに行動を指示していく。ある程度の説明を終えると、キッカは部屋の隅にある金庫のロックを外し、中から拳銃を一丁取り出して腰に装着した。そして、ヒカルたちの方を振り向く。


「ヒカルとイツキは私と一緒にトウマのところへ!」

「う、うん!」

「わかった。……行くぞ、レン!」


 ヒカルは頷き、イツキも隣にいるレンに呼びかける。ところが、レンは突然その場にうずくまり、動かなくなってしまった。


「…………」

「レン? おい、どうした、レン!」


 イツキがうずくまったレンに必死に呼びかける。レンは、何かをブツブツと呟いていた。

 イツキがレンの肩を揺さぶる。


「レン、レン!」

「……来る……」

「……え?」


 レンの呟きに、イツキが動きを止めた。ヒカルとキッカもレンを見やる。

 次の瞬間、レンが目を思いっきり見開いて上を見上げる。


「来る! ここに! 今!」


 レンがそう叫ぶと同時に、突然、すべてのモニターが別の画面に切り替わった。蝙蝠の羽根に交差した二本の三叉槍トライデントの意匠、その下には『M.CORPORATION』と書かれている。


「何だ、コレ……」


 誰かがそう呟くと、モニターから笑い声が響いてきた。


『超能力者特別支援事務局の皆様。はじめまして。我々は国際テロ組織、『メフィスト・コーポレーション』です。ただいまより、この南中央支部は我々が占拠いたしました』


 すると今度は、銃器を持った黒ずくめの人間たちがモニター室に入ってきた。「動くな! 手を上げて後ろで組め!」と局員たちに指示をする。

 ヒカルたちも大人しく手をあげてその手を後ろで組む。今はあまり派手な行動は取れなかった。

 黒ずくめの一人がキッカに近づいて、腰の拳銃を外しにかかる。

「変なとこ触ったら蹴るわよ」

 キッカが悪態をつくと、男はフンと鼻を鳴らした。

「相手の心情を読み取ることしかできない木偶の坊が何言ってんだ」

「なんですって……!」

 拳銃をホルスターごと外して床に放り投げると、男はキッカちゃんの頬を殴った。


「あぐっ」

「キッカちゃん!」

「所詮、銃がなけりゃ俺たちに対抗できないくせに、生意気言ってんじゃねぇよ」


 ヒカルがキッカに駆け寄ると、男は二人に銃を向けた。

「動くなっつっただろうが、この小娘!」

 男が持っていた銃の引き金を引こうとする。すると、モニター室に再びあの声が響いた。


『待ちなさい。まだ殺してはならない』


 その声を聞いて、男はチッと舌打ちを打った。引き金から指を外して「立て」とだけヒカルたちに言った。

 それを確認したのか、声が話を続ける。


『さて、私たちは決して貴方たちを殺しに来たわけではありません。ただ、交渉しに来ただけです』

「交渉……だと?」


 声に対し、イツキが不審そうな視線を投げる。その後ろで、レンが震えていた。

 そして次の瞬間、声の主はとんでもないことを口にした。


『『禁書目録』を渡しなさい。でなければ、本条トウマを殺させていただきます』


はい。支部長が登場しました。かなり変なキャラクターです(笑)。こんなこと言ったら後ろからあのバトンで殴られそうですね。

元々は渡瀬副支部長が古賀埜支部長の名前で支部長の立ち位置で登場の予定だったのですが、何となく思いつきで変えてしまいました(何

書けば書くほどにアクの強いキャラクターになっていきそうな匂いがプンプンする古賀埜支部長。イツキたちよりも目立たれても若干困るなー。と思いつつ、目立たせちゃって良いんじゃない?とも思えてしまう人です。

支部長トークが続きましたが、敵サイドも微妙に登場してきました。ってか、いきなりサイバーテロですよ。しかもトウマを人質にとってるし。

次回。レンとイツキたちはどうやってこの危機を切り抜けるのでしょうか?

頑張って執筆しますので、しばしお待ちを><

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