魔王ミレミアム来襲
幾つかストーリーを変更しなおしてみました。
北部平原上空side
ミミside
間もなく北部平原上空に入る、さっきの砲撃や轟音は私が知りうる限りでは巨大列車砲の物だ。
まさかあんな物まで用意している可能性はあったが、流石に実戦配備はもう少しかかるとみんながそう思っていた。実際、あの巨体のシステムでさえ作るのに10年くらいはかかるだろう。どうやら、イストリアは度し難いほど貪欲な技術革命を起こしていて、周りの諸外国にさえ悟られないように完全に秘匿していたようだった。
なるほど、あの時の飛行船は全て【観測射撃指示】を行うための観測飛行船だったのですね?
ルーフ連邦の飛行隊もイストリアの空軍に阻まれて飛行船を墜とせないようですし、それに飛行船もどう見ても防弾仕様ですから、あれを墜とすとなると【ミサイル】が必要ですね? もしくは体当たりは……論外ですね? では、我々の魔王の影騎士団と竜騎士団に飛行船を墜とさせるしかないですね。
<では、エミュレス将軍、サラ竜騎士団長頼みましたよ。あの目障りな飛行船を適当に何隻か鹵獲してください>
<イエス・マイ・マスター>
「承知」
今回、私が同行を選んだのは、かって飛天魔族の中でも勇猛だったエミュレス将軍と現魔王自治領の空の主力の竜騎士団の二つのみ。魔王の影騎士団は私に死後も忠誠を誓っているいわば魔将軍や魔王軍の中でも指折りの精鋭の者たちの亡霊たちの戦闘集団で撃たれても怯まない。斬られても死なない不死の軍団で私の数少ない【切り札】ともいえるがそれ故欠点もある。私の命令しか聞かないし、何より私の魔力を際限なく自分たちの活動に持っていくので、大半は魔王自治領の魔力の流れ道の竜脈から魔力を吸いあがているため遠征などの長距離の運用はできない。
まあ、今はそんなに急がなくても足場を固めていけば問題は無いですね。
それはともかく、飛行船からの間接射撃指示は確実に妨害しないと、ルーフ連邦・フヨウ王国連合軍が崩壊しかねない損害がでますね。なんとしてもそれだけは阻止しないといけません。
各魔王軍はそれぞれ飛行船に攻撃を開始、飛行船も対空機銃で応戦を始めるが分厚い鱗と対弾性の防御魔法をあらかじめ刻み込まれた鎧に守られた竜騎士たちを仕留めることが出来ずに、飛行船のガス袋の外皮や舵を壊され三隻が地上目掛け墜落をする。水素ガスの爆発でも起きると思っていたミミだったが、イストリアは水素より安全なヘリュウムを開発していて飛行船が大爆発するような事はなかった。
※※※※※
北部平原上空観測飛行船【ホークアイ】sside
ティアラside
生体兵器研究部門の主任ことわたしティアラ・アルトロスは、実験に思量していたこの世界の転生者のナタリアをミレミアムに奪われ、施設を破壊されたしまった責任を押し付けられて前線に駆り出された。
観測飛行船は巨大列車砲の正確な着弾を指示る為の飛行船で対空機銃が装備されているだけで後は通信機器が最新のものばかり搭載している。
わたしは戦闘能力が極めて低い魔人だから今回は、これらの飛行船の実戦における正確な観測射撃指示の検証や運用方法の検証を行うという任務で派遣されたがそんなものは当に終えていて実際は研究所の破壊の責任を負わされての捨て駒だということをこの艦の乗員には秘密にしてある。
実際、飛行船は動きが鈍く戦闘では良い的にしかならない。
「レアダム船長、わたしは最弱の魔人なので空から敵が来たら真っ先に……」
「はい、何も考えずに逃げますのでアルトロス様はそれで宜しいですな?」
レアダム船長は冗談めいた口調でそう答える。彼なりにわたしを気遣っているのだろうか? その時、乗員の緊迫した声が伝声管から響き渡った。
《本船団、13時半正面より魔王軍の竜騎士団と見たこともない人型の怪物集団が接近してきます!》
「防空班、対空機銃撃ち方用意ッ、目標を視認次第ありったけ撃ちまくれ!」
襲い掛かってくる竜騎士や不死者の翼をもった魔族の迎撃に対空砲火が弾幕を上げるが大した効果がない。竜騎士や飛竜の身に着けている鎧はどう見ても防弾障壁の魔法が施されていて、こちらの機銃の弾を弾いていた。そして次々と一撃離脱で飛行船のガス袋の外皮やエンジン舵を破壊され次々と運が悪く3隻が空中分解をもう1隻が不時着をしていた。
後方にいた5隻は煙幕を焚いて早々に退却を始めていた。
《こちら、機関部ッ、エンジン1・2停止、舵破損!》
《く、船が傾いてやがるっ、重いものは全部捨てろ!》
「レアダム船長、速やかに不時着をしてください。本船自体が危険です」
「うむ、アルトロス様、少しお力添えをお願いしたい」
「はい、わたしの魔力でギリギリまで船のバランスを取ります。ただ、風に流されていますので、最悪、魔王軍の本隊のど真ん中に不時着することになります」
船体が大きく揺れているが、何とかそれをコントロールして不時着ができるように柔らかい草とかが生えている地表を選んで不時着を出来るように誘導をする。
外をよく見ると、に運よくわたしたちより先に不時着していた観測艦【ネイガル】も魔王軍の兵士たちに救助され捕虜として、無傷の兵士は一か所に集められ、負傷者は彼らに丁寧に治療を受けていた。
わたしも意識を集中して、船を不時着させると、船長に負傷者を連れて魔王軍に降伏するように願い出た。無事着地が終わってから、魔王軍の指揮官らしい魔族が船に乗り込んできて、穏やかに官名を告げた。
「初めまして、私は【クロイチッル・ガストーネ】魔王軍のダーク・マスター(影使い)です。お見知りおきを。不躾ではありますが、皆さんに我々に対して降伏する事を要求いたします。私は【影】を操る者ですので、先ほど貴方方の全ての影を我が支配下に置きました。抵抗した場合は不本意ではありますが貴方方の影に拘束を命じます」
「わたしはイストリア王国技術研究所元所長のティアラ・アルトロスです。これよりわたし達は魔王軍に投降します。兵士たちの扱いは丁重にお願いいたします」
わたし達は投降をし鹵獲された飛行船と共に一時的に後方のルーフ連邦・フヨウ王国の後部隊に預けられることになった。
※※※※※
北部平原上空side
ミミside
ミミが地上の戦いに目を配るとルーフ連邦・フヨウ王国連合軍が何とか形勢を立て直しつつあった。魔王軍の竜騎士団の空爆や飛兵の攻撃でイストリア王国陸軍自慢の戦車が次々と撃破されていた。
そこに体勢を立て直したルーフ連邦・フヨウ王国連合軍が巻き返しを図る。ここは放っておいても大丈夫だと彼女が確信した時、イストリアの方向から音速で【何か】が飛んでくる音が聞こえた。
(なるほど、観測飛行船の射撃指示が出来なくなってしまいましたから、形振り構わず無差別砲撃と来ましたか?)
彼女は指を鳴らすと地上目掛けて飛んでいた巨大列車砲の全ての砲弾の信管が作動して空中で大爆発を引き起こす。
「とりあえずはこれで、最悪の事態は避けれましたね。可能なら巨大列車砲を一門鹵獲して私だけの花火大会(演習)に使用してみたいですね。ストレス発散にアレの砲弾を撃ち落とすのは気持ちがよさそうですから」
それだけ考える余裕が出来てきた。本来の歴史通りの展開であれば、ルーフ連邦・フヨウ王国連合軍が巨大列車砲の砲撃で壊滅をし更にフヨウ王国のイスルガ王はこの戦いで無念の戦死を遂げた挙句
風の聖弓も奪われフヨウ王国はサクラ姫が奮戦をするもイスルガ王が目を光らせていた貴族や盗賊達の反乱で僅か5年でフヨウ王国は崩壊する運命だった。
「おや、リリス軍から信号弾が放たれましたか? ええと、ルーフ連邦・フヨウ王国連合軍が我々の要請通り此処より撤退を始めるそうですね? これでフヨウ王国が崩壊するのは防げそうです。ですが……」
そう私が言葉を切るのと同時に、数にして約20体の魔人級の化け物が突然空間転移してきた。巨大列車砲が無力化何らかの状況で使用不可能となった場合の切り札として、もしくは対魔王用(私)の切り札として送り込まれてきたようですね?
「やっぱり来てましたか? イストリアの魔神宰相殿?」
「ええ、ここで貴女を斃しておかないと我が君が安心してお眠りになられませんので、ミレミアム様申し訳ございませんが此処でご退場して下さい」
ギムリアはどう言う訳かイストリア王国の宰相職に就いて自らを【魔神宰相】と名乗ってイストリアの国家運営に当たっている。イストリアが傾かないのは彼の手腕によるところが多い。
しかし解せないですね。私と同等の魔神が一介の人間に使えるなど。
まぁ、流石に私一人でこれだけの魔人+魔神を相手にするのは骨が折れますが何とか古の盟友たちが打建てたルーフ連邦・フヨウ王国を安全に撤退させるために、此処はしんがりをいたしましょう。
私は突然魔法陣を無数に展開させると一斉に魔導弾の弾幕を放った。これが避け切れるのはそう何人もいない次々とこの魔導弾の攻撃に自らの回避パターンを狂わされ20中10人が直撃弾を受けて地面に墜落をした。残りはギムリアが張り巡らせたシールドに守られて私の攻撃を防ぎ切った。
「なるほど、これが貴女の実力という訳ですか?」
「ええ、解りやすくて助かります。そしてぇ、これからが本気の元魔王(私)ですよ!」
我が愛剣【ソードブレーカー】を異空間から引っ張り出す。ソードブレーカーといってもショートソードではない。私が素手で倒した神龍の牙を魔王領一の刀鍛冶が加工した魔剣で冥王様と冗談抜きの殺し合いを挑んだ時にかろうじて彼に手傷だけを負わせることが出来た剣である。
手加減なしで容赦なく超音速で次々と魔人たちを葬っていく。ギムリアと言う存在が此処に居る以上、手心を加えて戦う余裕が無い、ギムリアは私と同格の化け物で恐らく準破壊神クラスの存在。
なら、全力で今此処で潰さないと後々、厄介な相手になる。
(せめてサクラ姫が王位継承か自力で覚醒するまでは、こちらに手出しできないダメージを与えておかないと)
悲鳴を上げる暇も与えず9人の魔人を一気に切り伏せ、ギムリアと対峙する。そして彼目掛け凄まじい斬撃を休む暇さえ与えず鋭い一撃を繰り出し続ける。
ギムリアは私の攻撃を余裕で捌いていく思ったより油断できない相手のようですね。
「はぁっ!」
「フッ」
ギムリアに魔族の視線でも負えないような斬撃を繰り出し攻撃をしていますが、先ほどからまるで私の手の内が全て解っているようなギムリア。彼に私は不気味な物を感じていました。
彼とはこれで会うのが二回目、つまりイストリアの女王に戦争(喧嘩)を吹っ掛けたときと、今、戦っている時の二回目だけですが、こちらの攻撃を予測しているような、いえ、初めから解っているかのような機敏な動きで攻撃を回避していきます。
「ギムリア、貴方は一体何者なのですか? 私の剣の癖を知っているのといい、私が魔術を使うタイミングを予測しているのといい、でも、私の部下に貴方という存在はいなかった」
「そうですね、私も少し疲れたので、少し昔の話をいたしましょうか? 私はかって、貴女の御父上の魔王様に戦いを挑んだ勇者でした。と、言っても、あっさりと魔王様に敗れて、生き残ったのは私とかって恋仲だった女神官の二人のみ、そこで魔王様は私に仲間になれと言い、その代償にそこで脅えている女神官を【殺せ】と命じられましたので、私は躊躇なく女神官(彼女)を殺してやりました。だって、圧倒的な支配者に出会えたのですから、当然、その方にお仕えした方が良いに決まっているでしょう? 私はそれ以来、魔王様の側近の一人として魔王様にお仕えいたしました。それから、何十年かして、貴女がお生まれになりましたが、他の闇王子たちとは違って、貴女は生まれつき身体が魔王の力に弱かった。
それで、貴女のお母様共々、貴女を幽閉する事を進言いたしました。ふふふ、それからしばらくして、魔王様はご自身の配下たち全てに襲われて命を落としました。それでも、あのお方は冥界で力を蓄えて再び世界を征服する準備を始めていたのに、よりにもよって貴女と冥王に打倒され、私は別の主を見つける事を選び現在に至りました。まぁ、イストリアの小娘に使えているのはただの気まぐれですよ。さて、ここで疑問が一つありますね? なぜ私は貴女の技の全てを知っているのか? それは、貴女に技を教えてきた魔族の魔戦士の師が私の師でもあるからですよ!」
ギムリアはそう叫ぶと、今までより激しいサーベルの鋭い突きを繰り出してくる。そしてそれらは私の動きを完全に捉え私の回避パターンを乱していき手傷を負っていく、咄嗟に剣先から雷撃をゼロ距離で放ち間合いを取り直して、遠距離からの魔導弾の撃ち合いをする。流石に魔力の消費が激しくなってきて息が上がってきてしまう。ギムリアめ、私の体力切れも狙って来ましたか! ふふふ、陰湿な殿方は女性受けが良くありませんよ?
「ほう、今、私の悪口を考えていましたね?」
「貴方、絶対モテませんよ」
強い上にまるで読心術も使えるのでしょうか? 嫌味気たっぷりの表情で私を見るギムリアは刃がなったボロボロにサーベルを捨てると、素手で今度は殴り掛かってきたので私は両腕をクロスして防御に徹する。
ほとんど出鱈目過ぎてギムリアの動きが読めない所を脇腹に一発パンチが入る。そして文字通り地面に叩き付ける様な一撃を受けごみ箱みたいに無様に地面をゴロゴロバウンドして身動きが取れなくなったところを更に手足を撃ち抜かれた。
「かはっ!」
「おやおや、女性や子供は優しく扱うのが私の流儀ですが、いささか乱暴すぎましたね? ははははは、まぁ、貴女を捕まえて、下等な人間の血が混じっているあなたの娘の前で貴女を見せしめに殺して差し上げるのも良いですね~」
「そうですね確かに、それも面白いかもしれませんがそろそろギムリアさん、お帰り下さい、これ以上のミミさんへの乱暴狼藉は、この冥王が貴方を直接退治する事になりますよ? 本当なら色々貴方からお聞きしたいのですが……目障りなんですよ、駄犬風情が」
聞き覚えのある声がする方向を辛うじて見ると一人のコートを羽織った金髪の少年がギムリアに向かって誰もが凍り付くようなゾッとするような笑みを浮かべて、ギムリアを挑発していた。
彼の背後には無数の魔法陣が展開していて、そこから私とはけた違いの魔力が溢れ出していた。
「久しぶりに僕の会社の株式総会がアメリア大陸であるから創始者として参加していたら、アメリア大陸連合国総統もイストリアに対して事を構えそうだから、僕もあいさつ代わりに此処まで飛んで来たら
ミミさんがピンチですし、ミミさん回復魔法を受けながらでいいのでそこでじっとしていてくださいね?」
「……はい、冥王様……」
「……ッ、冥王が相手ではここは退かせてもらいますよ? これ以上は化け物の相手は私もキツイので」
冥王様はギムリアを本当に犬のように「しっしっ」とてで追い払うと興味がないといった感じで私の手当てを行っていった。ギミリアは隙を見せる事無く素早く姿を消していった。
「申し訳ございません冥王様、この度の失態の責務は……」
「ああ、気にしなくていいです。僕はブラックな上司なんかじゃないですから、むしろアットホームなホワイト上司ですよ?」
にこやかにそんな事を仰る冥王様、ホワイトな上司ならめんどくさいと言って、書類の山脈を押し付けたりしないですよ? と内心ぼやきながら私は意識を手放した。
当初はフヨウ王国の負け戦で王様が死んでしまう展開でしたが
これでは詰みゲー展開になると思い、ストーリーを編集していました。
次回不定期ですが更新を頑張ります。