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星々の旅々ーThe stars of Shitoraー  作者: レモンパンチ
第1章 旅の始まり
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第31話 霧の奥で

暗い森の中を永遠と彷徨う感覚に陥りながらもシトラ達は前を歩いていく。


「白夜花、隠れてないで出ておいで」


「動物じゃあるまいし、植物が身を潜めるなんてありえませんわ」


「むぅー、もしかしたら二足歩行で歩く植物がいるかもしれないじゃん」


「は、そんな植物なんているはずが……」


「あ、何か二足歩行で歩く花いますよ」


モルフの指す方向に二足歩行で枝に座る花が花弁を整えている。花はシトラ達に気づくと慌てて逃げて森の中に消えていった。


「……なんですのその目。今すぐやめてくださいまし」


「やめない。パスタ女が認めるまで見つめてやる」


「ああもう、認めますわよ! ああいう植物もいるんですわね! すみませんね!」


「なんか思ってた反応と違うんだけど」


パスタ女なら突っぱねて何がなんでも認めないと思ってたのに意外だ。


「怒ると思ってたのに」


「心外ですわね。ただ私は間違ったことを許せないタチですの」


「へぇーそうなんだ」


プライドの高い奴と思ってたけど案外そうじゃないのかもしれない。そう思うとなんだか親近感が湧いてくる……かもしれない。


「シトラ、ミラ、なんか暑くないですか?」


モルフは舌を出してテカる毛を見せる。


「暑くないよ」


「毛量のせいではなくって?」


「まぁ獣人ですからヒューマンより暑く感じやすいですけど、なんかじめっとした感覚もあるんですよ」


私は探索機ゼナに温度と湿度を確認してみる。


〈温度は25度、湿度は80%です〉


「湿度が高いみたいだね。そのうち収まるんじゃない?」


「でも湿度が上がっている感じがします」


「モルフは湿度計かなにかなの?」


しばらくしてモルフの言ったことがその通りになる。白く濁った霧が包み込み、私達の輪郭が消えようとしていた。


「これだいぶまずくない?」


「まずいですね。紐で繋いでいるとはいえ、姿が見えなくなりそうです」


お互いの姿が見えなくなれば食人植物に襲われる。このままではいけないと思い、私はモルフとパスタ女に声をかける。


「ちょっと近づこう」


「それがいいですね」


「ほら。パスタ女も早くして」


「……ふん」


私達は背と背が当たるくらい近づき、現状を確認する。


「ゼナ、マッピングに支障はないよね?」


〈問題ございません〉


「おっけ。じゃあこのまま進むよう」


「自殺志願者ですの? ここは戻るのが最善ではなくって?」


「戻ってもいいけど、もう時間がないよ」


空を見上げると真っ暗な星空が青く染まり始めていた。試験が終わる日の出まで残り一時間ちょい。このままだと失格になるのは明らかだ。


「それともパスタ女は土壇場で命が惜しくなった?」


「馬鹿を言いなさいまし! 生きるなら死んで不合格になった方がまだマシですわ!」


彼女の目は一点の曇りもなく澄んだ目で私を見ていた。覚悟いや、決意に近いそれはシトラと同じもの。夢を叶えるための灯火(こころ)だ。

ふとモルフを見ると彼も同じ目をしている。夢を叶えるために全てを擲つ決意を。私達は敵同士だし、パスタ女に至っては仲良くなれる気がしない。

けれど夢は違えど叶えようとする同士だ。


「……まぁ時間がないのは確かですし、不服ですけど今回は従ってあげますわ」


「いいの?」


「ええ、ですが白夜花を見つけれなかったら覚悟して下さいまし」


「さては責任転嫁だな?」


「ふん。リーダーたるものそれくらい自覚が必要ですわ」


リーダーになった覚えないんだけど。あと地味に手を強く握られたんだけど。


「僕もシトラに従います」


「モルフまで。言っとくけど確証ないよ?」


「いいえ、シトラなら何かやらかしてくれると僕は思っています。あの時の宝箱みたいに」


「あれは偶然閃いただけだよ」


「その閃きに僕は賭けます」


そんなに期待されても意味ないと思うけど。ただ進むだけだし、閃きもあったものじゃない。

けど、無作為に進むよりも私の出来る範囲でその期待に応えた方がいい気がした。


「うーん」


私は少ない情報を抱えて思考の海にダイブする。白夜花の由来、湿気、月明かり、食人植物……ふと目の前に広がる光景を見つめる。


「霧って水の集合体だよね」


「そうですね。水蒸気が冷えることで発生する現象です。また霧が発生するには近くに水辺があるか、湿気が溜まりやすい場所になります」


モルフは淡々と説明する。もちろん私もある程度知っているが、専門家ほど詳しくない。きっとモルフは専門家並の知識があるのだろう。


「パスタ女、白夜花の特徴って何がある?」


唯一白夜花の特徴を知っている彼女に聞くと眉間に皺を寄せながら答えた。


「湿気が多くて月明かりの当たる場所に自生してますわ。あとこれは本当かどうか分かりませんが、触ると死ぬと言われてますわ」


「なにそれ。絶対不合格になるじゃん」


触れるだけで全身に毒が回る花なのか。それとも嘘なのか。あるいは非科学的な呪いの花か。

まぁどれにせよ私の選択は変わらない。


「まぁ何があっても進むだけだけどね」


「闇雲に進んでも意味がありませんわよ?」


「そうでもないよ。だってこの先に……いや、この霧のどこかに白夜花があると思うからね」


ミラは首を傾げるとシトラは霧の中を指す。


「霧って湿気の塊じゃん? つまりここら辺に溜まりやすい場所があるってことだと思うんだけど」


投げやりに思いついたことだ。けど的は得ていると思う。


「……あるんですの?」


「可能性は高い方だと思う。なかったら不合格になるけどね」


「随分と弱気ですわね」


「仕方ないでしょ。白夜花の自生地なんて知らないし。というかパスタ女はなんで白夜花のこと色々と知ってるの?」


ミラは口を閉じる。だが、少し間をおいてゆっくりと一言だけ口にした。


「夢に近づくためですわ」


開拓者(セトラス)になるためは分かる。けどそれ以上の夢を叶えようとしていた。


「ほら行きますわよ」


「あ、ちょっと!」


「ミ、ミラさん!」


ミラの手に引かれてシトラ達は前に進む。

たとえ夢が別々だとしても。

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