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星々の旅々ーThe stars of Shitoraー  作者: レモンパンチ
第1章 旅の始まり
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第10話 名付け親

辺りは暗くなり帰路につく人が増え始めていた。シトラは探索機(ナビゲーター)に胸をときめかせ魂抜けたココナを連れてオズマの元に戻った。


「おや、お早いご到着ですね」


受付ドローンに社長室に案内されて少し緊張が走る。


「こちらです。少々散らかっていますがお気になさらず」


オズマは椅子から立ち上がり隣にある部屋にシトラ達を入れる。中は様々なアタッチやパーツが青い箱に入れられて棚に収納されている。修理部屋というより趣味部屋に近いインテリアだ。


「『武士の天笠(あまがさ)』と呼ばれる探索機です。販売台数百弱と少なくレアな探索機になっています。ちなみに名前を付けると喜ぶらしいので付けるといいですよ」


私は作業机に置かれた探索機の電源を入れる。

ビコンっと起動音がなり中心にある緑色のランプが灯りゆっくりと浮かんだ。


〈システム良好。バックアップ完了。新たなご主人のサポート……了解。只今より製品番号009が主人のサポートを務めさせていただきます〉


赤くとんがった無機質な探索機(ナビゲーター)に胸をくすぐられ私は探索機を撫でる。


〈ご主人、ベタベタされるのはいいのですが出来れば名前を頂けると幸いです〉


すっかり名前のことド忘れしていた。名前を付けるならどんなのがいいだろうか。


「オズマさんはどんな名前がいいですか?」


「私ですか? そうですね。宇宙突破つのドリルはどうですか?」


〈却下します。とんがり頭はドリルではありません〉


「お気に召さなかったようで」


「ココナは何かない?」


「名前付けるの苦手。適当にポチでいい」


〈却下します。犬ではありません〉


「ボタンの音をイメージしたのに」


〈それ擬音ではございませんか?〉


「不満ならシトラがかっこいいの決めてくれる。主人だから文句ないよね?」


何故かハードルを上げられて二人と一台のプレッシャーがシトラにのしかかる。一応シトラは名付けは苦手ではない。かと言って得意でもなく人が無難でいいんじゃねっと思うくらいの興味なさである。


「えーと……」


与えられた数少ない情報を元に名前を構築する。カチリっと歯車が噛み合って自信満々に答えた。


「ゼナでいいかな?」


〈ゼナ。名前の由来お聞きしていいですか?〉


「0と9を掛け合わせてそれっぽく名前にしたんだけど」


「微妙」「可もなく不可もなくです」〈無難ですね〉


二人と一台が同時に答える。


「分かってたけど意外と心にくるなぁ」


まぁ名付けは得意じゃないので仕方ない。


〈ゼナ、悪くはありません。では今後ゼナと名乗らせて頂きます〉


「もしかして気に入ってくれたの?」


〈下手な名前を付けられそうなので、今の無難な方がマシだと判断したまでです〉


「可愛げのない探索機だね」


〈なるほど。では……主人、あなたは宇宙一の美少女です! どんな惑星も主人の手にかかればイチコロ。主人の可愛さにメロメロ間違いなしです! きゃー!〉


「ごめん。美少女って言われるの嬉しいけど、恥ずかしいからやめて」


シトラは羞恥に包まれて赤くなった顔を隠す。


〈では今後武士スタイルでよろしいですか?〉


「武士は知らないけど、とりあえずそれで」


オズマから一通り説明を聞いてゼナの調整を終える。その後、オルバスからメールが来るまで私達は他愛のない会話をした。


「じゃあ、私達はこれで」


すっかり暗くなった夜道にシトラとゼナは別れの言葉を告げる。


「何かあればいらしてください」


オズマは笑顔で手を振るが背中にいるもう一人の少女は神妙な顔で明日を見ていた。


「馬鹿弟子、挨拶くらいしなさい」


キツめの拳骨が頭上に降って涙目になりながらシトラの方に体を向ける。


「昨日、無理矢理連れていこうとしてごめんなさい。けどもし開拓者(セトラス)に興味があったらあんな……ひぶぅ!?」


機械少女なのはずが二つのたんこぶが膨れて上がるもオズマは笑顔でシトラ達を見送る。


「ではまた!」〈さようなら〉


一人と一台は夜道に消えていった。少ししてオズマの表情が崩れ本来の姿が表れになる。


「馬鹿弟子、先ほど案内すると言いかけましたよね」


「だ、ダメ?」


「ダメです。目指さぬ者に場所を教えては不公平になります」


「……じゃあ目指すようになったら」


「ダメです。ですが彼女が試験を受け、辿り着いたのなら教えて構いません。くれぐれも私達は審査員であることをお忘れなく」


オズマは店に戻ろうと二三歩進む。と何か思い出したように止まる。


「馬鹿弟子、一つ聞いておきたいのですが、なぜあの子を執拗に気にかけているのですか?」


オズマの目にはシトラは少し能力のあるヒューマンだと映った。だがそれだけだ。世界中いや宇宙中に何万、何億人もいる。それこそシトラが埋もれてしまうくらいに。


「別に。ただ私はシトラがなれるかもって思っただけ」


意地っ張り馬鹿弟子にため息をつく。


「嘘ばっかりですね。本当は友達になりたかったのでしょう。なぜそこまで友達になりたいかは知りえませんが」


「……」


「黙ると肯定になりますからね。本当、私の馬鹿弟子はどうしてこう素直になれないのですかね」


「……私はただ見極めて」


「はいはい。見極めるなら今日来た挑戦者の実力を見極めてください」


「めんど〜」


「私と百本組手やりますか」


「見極めます」


開拓者二人は店の光に包まれて新たな挑戦者の来店を待ち続ける。

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