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PrototypeForce  作者:
6/17

6

PM7:00 東校舎一階 逆神結


玄関扉の施錠を確認

「よし」

保安官になってから、今日でちょうど一年

正式な単独行動の任務は、これが初めてとなる

まさか将来こんなことをしていようとは、一年前の私は到底想像もしていなかっただろう

今回の行動目標を、再度復唱する

「本作戦においての私の役割は、『食人事件』における容疑者の特定、可能ならば逮捕すること。必要に応じて応援を要請することも許可。『能力』使用に制限は無し」

比較的自由度の高い内容の任務だが、それは同時に、捜査の進行度の低さを意味するものでもある

数ヶ月前から突然始まった連続殺人事件

その猟奇的な殺害方法と状況から、公正保安部では『食人事件』と呼ばれている

確認されている事件の件数は全部で十六件、そのどれもが大胆な手口でありながら、一切の犯人特定に繋がる決定的証拠を残していない

はっきりと分かっているのは、どの殺人にも使用されるのは、大量の強酸性の液体であること、被害者の半数がこの学園の生徒である、ということくらいか

「学校、酸性の液体、で、化学室、っていうのは、流石に無理がありすぎたかな……」

この辺りで酸性の液体を扱う工場は一つ、だが現場に残されたもの程強力な濃度ではない上に、原液は県外で製造され、薄化された状態で運搬されてくる為、事件との関連性は今のところはっきりしていない

実際、警察と保安部が幾度となく工場の調査を行っているが、何も発見できないでいる

「そもそも殺害方法が『能力』によるものだったら、こういった捜査も全部無駄足、ってことになっちゃうけど……」

念の為、足音を殺しながら中央階段を上がる

化学室は東校舎五階

校舎は中央階段を軸として四方に十字状に建てられているので、この位置からは各階の廊下が突き当たりまで見渡せた

「二階に人影無し……三階も無し……まぁ、当然―――?」

四階

南校舎

真っ暗な中央廊下が、ここだけやけに見通しがいい

「!」

息を殺し、柱の影へ

端末で校内全域の施錠状況を確認する

開錠、一

南校舎四階、第五実習室

再度物陰から奥の教室を見る

向かって右側、小さく空いた隙間から漏れる光の色は、明らかに月明かりのそれではない

電気が、付いている

生徒は午前三時には全員下校、教職員もその二時間後には帰宅するよう指示されている

警備局への連絡で、警備員の巡回も今日この時間帯はされない筈

玄関の開閉は、されていない

誰かが学校に潜伏していた?

ウエストポーチの中を確認、『希少金属』は補充済み

ホルスターからスタンガンを抜き取り、威力を調節する

まさか、とは思っていたが

数日前に聞いた、この学園に広まる噂を思い出す

「……学校の、怪物」

一応その噂も思慮に入れた上で、こうして調査に来ていたのだが、まさか

ゆっくりと、壁伝いに足を運び、電気のついた教室の扉の横まで移動する

物音は無い

幸か不幸か、扉についた小窓は目の粗い磨硝子である為、教室内は鮮明に見えないでいた

小さく深呼吸、扉の取っ手に手を掛ける

相手が一般人ならそれでいい

拘束後、警察に連絡、連行してもらえばそれでいい

だがもし相手が能力者であったら

その時、私は――――

「ッ!」

勢いよく扉を開くと同時に、スタンガンを構えて教室内へ向ける

「保安官です!速やかに両手を挙げて、攻撃の意思が無いことを……」

明るい教室

素早く全体を見渡すが、誰も居ない

奥に一人だけいた

両手両足を拘束され、倒れている少年が

驚いた顔でこちらを見るその表情には、どこか昔見た面影があって

「……半沢、君……?」

「え……?」

思わず口をついて出た言葉が、更に彼を驚かせた

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