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イベリス (Iberis)    作者: Naoko
3部 ベラ
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          7話 別の嵐

 イベリスとアリアがロセウスに戻ると、新製品コンテストは終わっていた。

街は、騒ぎの後の静けさという感じで、落ち着きを取り戻している。

アリアは、アクィラから骨休めをするように勧められたので、しばらくの間、留まることにした。


 イベリスは、ロセウスの変わりない様子を見て、同じはずなのに違うものを感じ、

変化したのは自分の方なのだと思った。

そしてアクィラは、イベリスの生き生きした表情に、彼がラーウスに戻るのを決意したのを知る。



 「イベリス、その時が来たようだな」

「はい。王もご存知だったのですね」

「君がラーウスへ行くことになった時から、その可能性は考えていた。

最も、そうなるかもしれないと知ったのは、もっと前からだ。

実は、王に就任した後に開かれた前王の遺言状に、そう書かれてあった」


 「遺言ですか?」

「そうだ。

前王は、エルナトを犠牲にする代わりに、

君を、エルナトを復興するために育てるということを、君の父上に約束していたのだ」

「エルナトの復興のためということは・・・」

「王の助言者の契約は無効と言うことだ」

「なぜそのことを、わたしには知らされていなかったのでしょう」

その質問に、アクィラは、少し間を置いた。


 「イベリス、それは、君が戻ることを望んだ時にだけ適用されるからだ。

君の父上は、そのことで、君に圧力を掛けるのを禁じていた。

エルナトは難しい問題を抱えている。

そして君が、将来、悩むことも知っていたので、自分で考え、決めて欲しいと願っていたそうだ。

もしロセウスを好む様であれば、戻らなくていいのだが、

君に、エルナトを愛するようになって欲しいとも望んでいた。

それで前王は、君を、そのように育てることを約束したのだ」


 そしてアクィラは、再び、一呼吸置く。

「それにわたしは、君にここへ残って欲しいと願っていたこともある。

イベリス、君は、助言者である前に、兄のようだからだ。

君がエスペビオスへ行った後、この遺言を知り、わたしは慌てて君を連れ戻しに行ったんだ。

あのまま、あそこに留まられては困るからね」


 イベリスは、しばらく黙ってアクィラ王を見ていた。

この王に仕えるのは、やりがいがいのある仕事だと思っていた。

ところが今は、未練はない。


 「それは光栄です。

それでもわたしは、エルナトへ戻りたいのです」

アクィラは、微笑んだ。


 「君は、自分の望む通りにしたまえ。

エルナトの復興には、ウィリディスから費用を出すことになっている。

それは長い間、蓄積されていたものだ。

帝国には、災害防止の工事だと伝えることにしよう。

いぶかるだろうが、それはこちらに任せてくれ。

これをきっかけに、新たな外交にも発展するだろう。

面白くなりそうだ」


 イベリスは、楽しそうだというように笑った。

「それに参加できなくて残念です」

「間接的に参加することになるがね」とアクィラも言って笑う。



 「ベラは、フロースだったそうだな。どうするつもりだ?」

「そうですね、喜んでくれるとは思うのですが・・・」


 イベリスは、ベラが自分のことをどう思っているのか分からないでいた。

彼女は自分を避けている。

それでも、自分が率先してエルナトの復興をやるのだから、喜ぶはずだと思う。


 アクィラは、イベリスの、はっきりしない様子に、

「元々は、わたしがけしかけたことだったな」と言った。

イベリスは苦笑いする。


 アクィラは、自分が二人を引き合わせたのに、

イベリスを彼女から引き離したのも自分だと思っている。

当時、彼女は、帝国の貴族の娘だったから仕方が無かったのだけれど、

その後で、彼女は不幸になってしまった。

自分に出来る償いは、彼女がしようとしているエルナトの復興を助ける事だ。


 「共にエルナトの将来を考えるのなら、彼女も喜ぶだろう。

時間をかけて、信頼を勝ち得るしかないな」

アクィラは、すまなさそうに言った。


 イベリスはアクィラを見て、彼は、その名前の通りに賢い王なのだと思った。

そしてまだ若い。

若い王の成長を、そばで見られないのは残念だが、自分はもう別の道を歩き出している。

それにコンテストも無事に成功させたのだから、もう心配はないと思った。



 イベリスは、

「コンテストはいかがでしたか?」と聞いた。

「何だ、何も聞いてないのか?」

アクィラは自分の使命を終え、緊張を解いて少年のように目をキラキラと輝かせる。

イベリスは、やはり何かあったのだと思う。



 それはイベリスが推薦した、スファエ王国のステファナ姫のことだった。

この姫は、素行が良くないとのことで、一旦、アクィラの花嫁候補から外されていたのだ。


 ところが、このコンテストは、地方の特産品を開発・促進することを目的としているので、

貧しいスファエ王国を除外するのは、理不尽だという声が上がった。

しかもこの国の王大使は、王宮でアクィラと共に学んでおり、友人でもある。

その妹を無視するのもどうかと言うことで、開催直前になって彼女を招待したのだ。


 もちろん委員会は、まさかこの姫に、アクィラが関心を持つとは思っていなかった。

しかもイベリスが、唯一推薦していた姫なのも忘れてしまっていた。



 「あの姫は、実に、やる気のない姫だった」とアクィラは言う。

イベリスは、それなら、あなたも同じでしょうと思った。


 「あの者は、こちらの公費を使って好き放題にし、

コンテストはそっちのけで、ウィリディス王国の視察ばかりしておった」

イベリスは、まあ、そうだろうと思う。

彼女が、アクィラに取り入る気がないのは、初めから分かっていた。


 「その素行は噂どおりで、山猿のようなのに、

王宮の晩餐会では、打って変わって品位のある姫を演じた」

と、そこまでは、イベリスの予想していた通りだった。


 ステファナは、アリアと同じように行動力のある姫、いやそれ以上かもしれない。

それでイベリスは、アクィラが彼女に興味を持つだろうと思ったのだ。

ところが、次にアクィラが言ったのは、イベリスが予想していないことだった。


 「おまけにあの者は、裸同然でわたしの前に現れたのだ」

イベリスは、

「えっ!?」と言った。




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