第八話 勇者パーティーVS破壊の女神
「あらあら、こんなものかしら?」
フィーレアは、ザディアを煽るように笑みを浮かべながら話しかける。ザディアが用意した3人はボロボロ、対してゲイル達はほぼ無傷という一方的な戦いだったので煽りたい気持ちも分からないでもない…
しかし、煽られたザディアは怒りを一切見ぜずにため息をついて…次の瞬間には、ガルドのすぐ近くまでザディアが接近していた。そして、ザディアの左腕は黒い魔力を帯びていた。
「ッ!?」
ガルドは、咄嗟にボコボコにして襟を掴んでいたラディスを手放して後ろへ大きく下がったが、そこには既にザディアの姿はなく、同時にラディスも消えていた。
「どこ見てんだ?」
「…ッ」
氷漬けにしたカルヴァディアの上に座っていたアルファの背後にザディアが現れ、振り返ったアルファに触れる。
「《アイスアーマー》」
「《侵食する破壊》」
ザディアの黒い魔力が、アルファの咄嗟に作った氷の鎧を侵食していく…が、それも一瞬で侵食は止まり、逆に黒い魔力を押し返すように氷の鎧が逆再生しているかのように戻っていく。
「…無駄」
「へぇ…破壊された瞬間に氷を生成して私の魔力が身体に直接当たらないようにしたか…」
お返しとばかりにアルファは空中に氷柱を召喚したが、またもザディアの姿はなく、カルヴァディアの姿も消えていた。
「《隔離結界》」
「チッ」
ゲイルは、ザディアが消えた瞬間に、上級魔法の隔離結界を使用し、ザディアの攻撃を無効化する。
上級魔法である隔離結界は、結果以外のあらゆる事に関して干渉できなくなる代わりに、この結界内に対して、結界の外側からは干渉できなくなる魔法だ。しかし、その魔法を前にしてもザディアはまだ余裕の表情を浮かべていた。
「《空間破壊》」
突如、空中がガラスのようにパリンッと割れ、そこから結界内にザディアの腕が侵入し、ゲイルに向かって突き出されるが火球をザディアの腕に当てて向きを逸らして回避しようとする。しかし、火球は黒い魔力を纏った腕に触れた瞬間に消失し、ゲイルにその腕が触れた…だが、空間が揺らぐようにしてゲイルが消え、レーヴァのすぐ隣に出現した。
「…闇魔法か、面倒くせぇ」
これも上級魔法で、自身の姿を消して任意の場所に自身の幻影を召喚するという魔法なのだが、召喚された幻影は耐久値がほぼ皆無で、本体がどんなに優秀でも幻影は下級魔法程度しか使用できないというデメリットが存在する。
「こっちとしては、隔離結界を無力化された事が面倒くさいんだけどね?」
本来外部から干渉されない筈の隔離結界を無力化されたが、ゲイルは至って冷静だった。
(あの腕に当たると魔法が無力化される…なら)
「ガルド、アルファ、お願い」
「言われなくても分かってるってのッ!!」
「…りょ」
ガルドは、大剣に分類されるプロメテウスを巧みに扱いながらザディアに斬りかかり、アルファは氷を纏わせた氷剣:サールダストを振るって氷の斬撃を飛ばす。
しかし、それら全てをザディアは回避して見せる。
「〈神威解放:破滅の悪夢〉」
その言葉と同時に、ザディアを中心に黒い魔力が広がっていき、周囲の物を片っ端から破壊していく。その光景にフィーレアは「もういいかしら…」と呟いて…
「〈神威解放:無限書庫〉」
フィーレアが神威開放を使用した瞬間、ゲイル達を残してフィーレアとザディアが消えた。
神威開放とは?
原初の女神:レクシアが創った女神の権能で、“通常は”全ての女神に一つだけ与えられている。能力は女神によって異なるが、どれも絶大な効果を持っている。
破壊の女神:ザディア
〈神威開放:破滅の悪夢〉
:能力
・自身を中心として魔力を展開する。(使用している間、硬直状態になる)
・魔力が触れたもの全てを破壊して魔力に変換、更に範囲を拡大させる事ができる。
・ただし、これには許容量が存在し、それを越えると自身にも破壊の効果が適用されてしまう。
魔導の女神:フィーレア
〈神威開放:無限書庫〉
:能力
・???