第九話 無限書庫《アラド・ヴァル》
「…ここは」
ザディアは気が付くと、本が入れられている白い大きな棚が並んだ図書館のような空間にいた。
「気がついた?」
ザディアは振り向きざまに黒い魔力を帯びた腕を振るうが、そこには既にフィーレアの姿はなく、高い所の本を取るための足場で本を片手に座っていた。
「ここは私の神威開放によって作られた世界よ。この中では私が“知っている”あらゆる事象を操れるの」
「空間破壊」
ザディアはフィーレアの言葉を無視して破壊の力を使おうとするが、なんの効果も示さない。
「無駄だって分かってるでしょ?貴方が私の神威開放の能力を知らない訳がないもの…」
「何を企んでるの?」とフィーレアは怪訝そうな表情を浮かべて問う。すると…
「…バレたか?」
ザディアは口の端を釣り上げ、余裕の笑みを浮かべる。
「言っただろ?ちょっとした…」
ザディアはそう言いながら懐から黒い水晶球を取り出す。
「試験運用だってな?」
ザディアが水晶球を砕くと同時に、中から紫色の紫電が発生し、無限書庫内を駆け回る…
…そして、無限書庫は“崩壊”した。
「グッ!?」
「大丈夫ですか!?師匠ッ!!」
突如、何もない所から出現したフィーレアをゲイルは抱きとめる。幸い何処にも外傷はないが、冷や汗と共に苦悶の表情を浮かべている。
「まずは第一段階完了っと…」
ザディアはそう呟くと、空間破壊を行使してとある空間と繋げて、そこに最後の一人であるベネリネを放り投げて自身も潜ろうとしていた。
「ま…待ちなさいッ」
「今回はこれで勘弁してやるよ、魔導の女神様」
ザディアはそう言って、姿を消した。
魔導の女神:フィーレア
〈神威開放:無限書庫〉
:能力
・相手を指定して、この空間に呼び寄せる事が出来る。
・この空間内では、本人が知っている事象を操作する事ができる。例えば、「マッチを擦れば火がつく」という事象を、「マッチを擦っても火はつかない」という事象に変えることが可能。
・ただし、自身の目で見た事のある事象しか操作できず、知らない事象には対応出来ない。つまり、初見殺し相手には負けるという事。
・実は、この中でならフィーレアは死という事象すら操れる。




