第ニ十ニ話 剣の女神を冠する者
アグニフェルが戦闘を開始し、その近くでも新たな戦闘が始まっていた。
「うふふ、何処からでも来ていいわ…?」
「そうですか…では」
歪な笑みを浮かべるべネリネの首を、蒼刃の剣が知覚される前に斬り飛ばす。剣の女神であるレクサは、それを実行する為にたった一歩で至近距離に近づき、剣を振るったのだ。
「そんなんじゃあ私は倒せないわよ?」
次の瞬間にはベネリネの首が復元されており、その異常なほど白い手が掴みにかかるが、レクサはそれを屈んでで避け、蒼刃の剣を戻して今度は“無骨な赤黒い大剣”を顕現させ、ベネリネの脇腹を面の部分で叩きつける事によって吹き飛んで、少し離れた岩場に衝突した。
「【圧し潰せ】」
「うぐぅ…」
衝突によって舞い上がった土埃から姿を現したベネリネだったが、レクサの言葉に反応した無骨の魔剣が、その命令に従うようにしてベネリネを地面にめり込ませた。
「その…魔剣っ、は…」
「あぁ、これですか?これは【魔剣:グログディス】です。確か…先々代の魔王が使っていたものですよ」
その言葉に、ベネリネは驚きによって目を見開く。それもその筈、魔剣:グログディスは先々代の魔王と勇者の戦いによって跡形もなく消し飛ばされた筈なのだ。だが、その剣は何故かレクサの手の中に収まっている。
「不思議そうですね…なら教えてあげましょう。私は剣の女神:レクサ、その権能は『剣を司る』というだけの能力です…ですが、それによって私はありとあらゆる剣に関する事に干渉する事が出来ます。それは、剣術であったり…かつて存在した剣、今尚現存する剣、そして未来に存在する剣であろうと、その名に剣を与えられた武器ならば私は扱えます…まぁ、私が知っている物でないと呼び寄せられませんけどね」
レクサはそう言って魔剣:グログディスを地面に突き刺す。すると、それはまるで幻のように姿を消した。剣の女神であるレクサが呼び出した剣というのは、本来この場所に在ってはならない物。
レクサ自身がその手で手に入れた物以外は所詮は借り物。その手から離れた剣は、レクサからの魔力を貰う事が出来ず形を維持できなくなり、有るべき姿へ、有るべき場所へ戻される。
…次にレクサの手に握られた剣は、黄金に輝く細身の長剣だった。レクサはその長剣の柄を左手で握り、左斜め横に降ろす。
「【聖剣―――…武装開放】」
その言葉と同時に、聖剣が白い光の粒子に包まれる。その気配の重圧に、ベネリネの額に冷や汗が浮かぶ。そして…その剣の銘が紡がれる。
「【エクス…カリバーッ!!!】」
左下から右上へ、掬い上げられるようにして振るわれた聖剣から白い光の奔流が放たれ、ベネリネの身体を無慈悲にも呑み込んだ。




