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破片録  作者: 林 四斜
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既視感

次々に迫り来る電灯の礫が、私の深部へ潜り込み、かつての冒険心を湧きたてる。

先頭に近い座席の恩恵というべきか、運転手の見ている景色に近似したものを見ることができた。

ぼんやりと変化の少ない景色を眺めていると、ふと、正面にぬっと広がる夜空に既視感を覚えていた。懐かしい訳でもなければテレビで見たような軽い感じでもない。いうならば、頭の中の上辺りがふわふわと刺激されているような、尚且つ幾分昔に感じたもののようである。

東京を出発した時には感じなかった。その理由を、辛うじて短期記憶に残っている景色を辿りながら見つけようと試みる。

今、視界には目線より高いものは少なく、眼下には山々が顔を出している。東京のように見上げるようなビルも建物もない。

そして、星々が音も無く煌めき、自分はその世界にぷかぷかと浮かんでいる気がした。

これは何を経験したときの感覚だったろうか、長らく使ってなかったシナプスの回路をゆっくりと辿る。


こつん。


ああ、あの時だ。

小学校の高学年の頃、ボーイスカウトで週末にキャンプに行ったときだ。

場所は復元できなかったが、たしか山梨の丹波辺りだった気がする。夜、車で星が満遍に見渡せるスポットまで連れて行ってもらい、通りの無い道路にビニルシートを敷き、大の字に寝転がった。

世界は星々が燦々と煌めき、その音は夜に吸収されているかのよう、静寂であった。星の名前も知らない、形容する言葉も知らない、ただ少年の感性に破片として散りばめられていたのだった。

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