ラックカード
人生のどん底にいて、ビルから飛び降りようとした時、ある男があるカードを渡してくれた。彼は「使い方を間違えるなよ」と言った。
ラックカード。クレジットカードみたいなものではあるのだが、前借できるのは金ではなく幸運らしい。
俺の人生は不運の連続だった。
「ずいぶんと幸運が溜まっている。そういう人間もいる」
ラックカードは金色に輝いていた。
使い方はカードに触れて、声に出して叶えたいことを言うだけ。
さっそく俺は宝くじで一等が当たるように口にし、宝くじを買った。
「なんてこった」
俺は一等を引き当てた。同時に、ラックカードは真っ黒になった。
幸運を使い果たしたのか。
7億円で不動産や投資信託を買った。不労所得のおかげで人生は好転した。
結婚できたし、新しく会社も立ち上げた。愛する人がいて、社会に貢献しているという実感を得て、幸せだった。
ところが、だ。
妻が流産した。
毎日のように事故に遭いそうになる。
部下が会社の金を持ち逃げした。
不幸なことが立て続けに起きるようになった。
「これじゃ、ラックカードを使う前の人生と同じじゃないか」
夜、家に帰る途中で暴漢に襲われ、拉致されるところだった。ボディガードを雇っていなければ今頃は……。
マンションに帰ると、妻が泣いていた。流産してからずっとだ。俺は彼女を慰め、眠りにつかせる。
毎日、毎日、何かが起こる。
「ああ……」
どうにかなってしまいそうだ。ブランデーをグラスに注ぎ、マンションのバルコニーに出る。アルコールで脳を鈍らせ、夜景を眺め、深呼吸をする。
「使い方を間違えるなと言ったのに」
「!?」
見ると、暗がりにあの男が立っていた。ここは14階だぞ。
「あ、あんた。これ、どうなってんだ! 人生がめちゃくちゃだ! 使い方ってなんだ」
「宝くじの一等。7億円。これが何を意味すると思っていた?」
「え……」
「お前の持っていた運でまかないきれる量の幸運だと? 7億円で、いったい何人の命が買えると? 利子だって膨大な量になる。やはり物事の価値がわからない男に何をしても無駄だったようだな」
「じゃ、じゃあ、今の俺の人生は……」
「ツケを払っている状態だ。果たして返済しきれるか。見ものだな」
「返す! もう俺の資産は7億以上あるんだ! 返すから!」
「お前が払っているのは運。今更どうしようもない」
男はそう告げると、闇に消えた。
7億と利子分の不幸がこれからも毎日……。
いったい、あといくら残っているんだ?




