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猫の額
猫の額で人形が踊った。猫の隣で鼓を叩く人。
ようっ。ぽん。
人形の体からは血が溢れ、地が溢れ、字が溢れ。
猫は土に埋まり呪詛の文字に踏まれ、人形は猫の額から飛び出した。回る回る回る。
くるくる、くるくる、くるくる。
面白きことよの。我が世の春じゃ。
人形は烏帽子がずれても踊り、扇が割れても踊り、面白きことよの、を繰り返す。
愉快じゃ、愉快じゃ。
人形を見下ろす鼓を叩く人。
ようっ。ぽん。
人形は地平線を見て目を細めた。何と柔らかな地平線。曲がり、くねり、まるで猫のような形。
おや。
人形は猫の額で踊っていた。面白そうに踊っていた。それに気づいても後の祭り。人形は羞恥を隠すために面白そうなふりをするしかない。
面白きことよの。我が世の春じゃ。
愉快じゃ、愉快じゃ。
猫の額で人形が踊った。やれやれ、と鼓を叩く人が言った。それは春風吹き荒れる蕗の薹の季節だった。
《了》




