戦況
「さて、奴らは何処まで侵攻してくるのかね。」
根室から上陸したロシア軍は、根室市に司令部を置くと、中標津空港を占拠して更にオホーツク沿岸の制圧を進めている。
遠軽の自衛隊駐屯地は開戦時のドローン攻撃によって無力化されたが、殆どの隊員が沖縄方面の後方支援部隊として移動していた為に、上陸して来たロシア軍との戦闘は無かった。
道内全ての自衛隊駐屯地がミサイルによる攻撃を受け、遠軽と同様に無力化されている。
そして、生き残った自衛隊員は、僅かな装備と共に帯広と旭川に集結していった。
「ここからが正念場だ。本土からの増援は無し、補給路は全て掌握されている…事実上全道が占領されたということだからな。」
日本側が何もしなければ、このまま全道を掌握され、実行支配されるだろう。中国よりはロシアのほうがマシに思えるが…。
僕の祖父母は樺太で終戦を迎え、その後のソ連軍による日本人大虐殺を生き延びた人だった。子供の頃、その時の話をよく聞かされたものだ。戦時など、そんなものだという思いがある。
「この状況だと、降伏する事が最善だが…捕虜ならそうそう殺される事は無いからな。自衛隊は反撃に出るつもりなのか?」
サハリンから上陸して来た部隊が、何処まで侵攻するつもりなのかが分からない。彼等の目的が北極航路の利権だとするなら、内陸まで侵攻する事は考えにくい。
しかし、旭川まで南下するなら防衛線を引くであろう自衛隊との戦闘になる。
北海道の政治家達には、中国の息がかかった人が多い。恐らくこの侵攻が終わった後の事まで、既に決まっているはずだ。本当に民間人の敵となり、実際に戦わなければならないのは、日本人の政治家達であった。
「内戦のシナリオか…ショボい相手だこと…。いっそのこと、尻尾巻いて海外逃亡とかしてくれたら楽なのにな。」
「ブー…ブー…ブー…」
スマホにメールが入る。「デモ隊が国会議事堂前で暴徒化 煽動者あり」
「東京はそうなるよな。問題は札幌だが、少なからず影響は受けるだろうね。」
北海道侵攻から3日。これから食糧の確保も難しくなるだろう。
空腹は怒りへと変わりやすい。
特に幻想の平和に浸りきっていた一般人には、突然襲ってきた理不尽に対しての怒りをぶつける対象が必要であった。




