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西暦2032年
「修、水汲みに行くぞ。」
最初の中国とロシアの電撃的侵攻から1年。北海道は2回目の冬を迎えようとしていた。
「ちょっと待って!シロも連れて行くから!」
10月に入り朝晩の気温は1桁台となっている。木々の葉は色褪せ、夏の盛りに飛び交っていた虫達も影を潜めてしまった。
息子の修は、今年の暮れで二十歳になる。
修は、背負ったリュックサックに干した鹿肉を詰め込むと、愛犬のシロが繋がれている鎖を解いた。
「お父さん、今日はシロが家に来た日なんだよ?知ってた?」
「え?…そうか、もう1年も経ったんだな。」
衝撃的な中国ロシアの侵攻の前日、知人から譲り受けた茶色い北海道犬がシロだ。
「でもさ、茶色いのにシロって変なの。」
「クロだって黒くないのにクロだろ?そんなもんだよ。」
家には北海道犬のシロの他に、灰色の毛をしたクロという名の猫がいる。
「あははっ!まあいっか!シロ、行くよ!」
毎日の日課の水汲みだが、シロは嬉しそうに修の前にたって、人気の無い住宅街を歩き出す。
まだ少し肌寒いが、温かな日差しの穏やかな朝の光景だった。




