第1巻 第9章:恥の轍
「なんで?…どうやって…こんなこと、ありえるの?」
頭がふわふわして、ガンガン響いた。朝なのに、こんなにグッタリしたの、初めて。目は閉じない。くっついて、痒くて、ピクピクするけど、閉じるとすぐパッと開く。
しばらく天井を見て、毛布から出た手に視線を移した。
ルイザの手を握ってた手、もう離れてた。いつの間にか、離した。
いつだか、気づかなかった。私が…それとも彼女が。
でも、手のひら、まだ温かい。彼女の感触が残ってる。ついさっきまで、握ってたんだ。
昨日まで私の聖域だったベッドに、二人で寝てた。ここ、私の小さな王国だった。でも、ルイザが来て、そうじゃなくなった。彼女の存在、まるで侵略。自分の領土で、仕方なく譲った。
彼女の指先が私の腕に触れ、ビクッとした。彼女の手、私のパジャマをギュッと握った。私が消えるのを怖がるみたいに。寝言で何か呟いてたけど、枕に消された。
少し待って、そっと彼女の手を覆った。私の温もりが、彼女を落ち着かせる気がした。指が緩んだ。
すぐには分からなかった。最初、離れようとしたら、捕まった。抱きしめられただけだけど、力の差で、窒息技みたい。私、意志のないぬいぐるみ、温まるためだけにギュッとされる。
後で気づいた。触れるだけで、彼女、落ち着く。でも、私には逆効果。彼女の手が触れるたび、心臓が狂ったメトロノームみたいにドキドキ。寝るの、どんどん難しくなって、結局、諦めた。
どうすれば避けられたか、ずっと考えた。でも、答えはいつも同じ――無理。ユリエルが去った後、全部、決まってた。異議なしで。
で、その状況…
いろんな理由。似ても似つかない、無数の理由。ユリエルが出口に立ち、ルイザが私とエミリアの間にいた理由も、考え出したらキリがない。
外は冬が暴れてた。さっきまで静かだったのに、吹雪の咆哮が窓の隙間や床板を突き抜けた。棚の振り子時計、チクタクが胸に重い鼓動で響く。家の中、雪の結晶を真似るように埃が踊ってた。
感覚、極限まで鋭敏。でも、頭、氷の霧に覆われたまま。
「ルイザをこの1ヶ月、預かってくれてありがとう。ヨリ、お互い助け合うよね?」
ユリエルの言葉、壊れたレコードみたいに頭で繰り返す。過剰反応かもしれないけど、その一言で、それまでの全てが塗りつぶされた。その後も話は続いたけど、意味ない気がして、うなずいて笑顔作って、聞いてるふり。
本当は、ちゃんと聞こうとした…でも、できなかった。
ユリエル、なに期待してる? エミリアとクイント、なにを了承した?
考えてみれば、人付き合い、努力して関係保つの、苦手。たぶん、冷淡すぎる。
まあ…そんな私。
何も求めず、自然に続く関係、滅多にない。流されるほど、弱くなり、ついには切れる。
あの女の子とも、そうだった。数世紀あっても、二人を繋ぐ脆い橋、架けられなかった。
1ヶ月で何?
どれだけ時間かければ、手が一瞬でも糸で繋がる? 分からない。彼女の無関心な顔見ると、永遠でも足りない。でも、永遠、ないよ。
ユリエルの言葉で、誕生日、終わった。彼、これをプレゼントだと思った? だって、他に何も持ってこなかった。
プレゼントって、主観的。残るものが贈り物。でも、私の時代、人を「贈る」ってなかった。レンタル? よく分からない。
吹雪の遠吠えと一緒に、ドアがバタン。ユリエル、ルイザに無造作にうなずいて、消えた。世界、動いてる。分かってる。でも、迷子の感覚、全部歪めた。夢遊病者みたい、道も目的も分からない。
彼女の目、ただ私の反射。でも、よく見ると、過ぎた年月が、夜空の星みたいに浮かぶ。
地上から見えるけど、届かない。踏み固められた跡を歩くたび、消えかけた星が彼女の存在で輝き、新たな星座が生まれた。
ルイザと私の記憶。両方見ようとしたけど、彼女にしか焦点合わなかった。なんで? 彼女、近かったから。結局、過去ほど遠いもの、ない。
ルイザの目、命のない草原みたい。それ見て、思った。彼女の目に何か見える? また花開く運命?
「ん? なんの目?」クイントが私とルイザの間に割り込んだ。あごに手を当て、彼女と私を交互に見た。「惚れたな?」
バカな推測で、顔、部屋の温度より熱くなった。口開く前に、クイントの図々しい笑い声が玄関に響いた。ルイザに弁解しようとしたけど、必要なかった。彼女、周り、気にしてなかった。
パチン!
空気が弾けた音。エミリアの手のひら、鞭の振りみたいに、ハイエナの笑いを止めた。ビックリした。クイント、最近は抑えてた。ウザいけど、我慢できるくらい。でも、新顔で、道化が飛び出した。
「子どもをからかうな、バカ」とエミリアが疲れたため息で言った。
ルイザには新鮮だったみたいで、クイントが地面に頭を下げそうになるのを見て、ビクッとした。ルイザ、完全な石じゃないんだなって。いい兆候、たぶん。
クイント、眉をひそめ、後頭部をゴシゴシ。ビンタの記憶ごと消そうとしてるみたい。唇を突き出し、大人の男より拗ねた子どものよう。
「ひどいな」と声を伸ばした。「ただ、場を和ませようとしただけなのに」
ユリエルが去った後のバタバタでも、変わらないものがあった。クイントとエミリア、そばにいる。それだけで、肩の荷が少し下りた。全部、私一人で背負わなくていい。
でも…これから1ヶ月、一緒に暮らす。
関係を築ける自信、あった。なんで? だって、どんな内向的な人とも、なんとか通じ合えたから。…まあ、いつもいい結果にはならなかったけど。
だから、近いうちに、何か変わるよね?
半年前、見知らぬ建物の階段での一瞬の出会いが、また私たちを繋いだ。今、お互いの名前と親を知ってるけど、他人同士。
私の誕生から続く偶然の連鎖で、一緒に暮らすなんて。驚くべきことに、ね?
その現象、名前があった。
運命。
で、めっちゃ…めっちゃ疲れる。
「二人とも、寝る前にお風呂ね」エミリアが私の肩に手を置いた。
「んー」と声を伸ばした。「ルイザが…」
「だめ、二人ともよ」とバッサリ。
「へへ…」気まずく笑って、体をよじった。「今日、きれいだよ!」
「全然」とエミリア、肩を強く押した。
逃げようとしたけど、エミリアに首根っこをつかまれた。母猫に運ばれる子猫みたい。彼女が背後から近づいた理由、わかった。逃がさないため。
エミリア、ルイザに振り返り、軽くうなずいた。
「君も」
エミリアの表情、見えなかったけど、逆さでもルイザの恐怖が分かった。一緒にお風呂、彼女も乗り気じゃない。でも、私と同じ、選択肢なし。クイントは、エミリアの注意が私たちに移った瞬間、逃げ出した。
リビングから階段へ、お風呂に向かった。エミリア、私を簡単に持ち上げ、まるで椅子に忘れたセーターみたい。私は彼女の手でブラブラ、階段の各段が絶望を突きつけてきた。
頭の中、反対意見が多すぎて、一つに絞れない。
なんでルイザと一緒にお風呂? エミリアの前でも気まずいのに。
今、この疑問だけが頭を占めた。どうやって回避する? いろんな考え、全部そこに。
言い訳、まとまらない。エミリアの声、揺るぎなく、滑らか――反論できない。
普通の子なら、駄々こねれば済む。でも、「普通じゃない」から、できない。たぶん、だから、私抜きで決まった。
エミリアの手で、鞄みたいに揺れながら、2階へ。浴室のドア、キィっと歓迎。部屋の隅々を照らす黄色い石が天井で光った。動きに反応する、光の魔法の石。センサーライトの代わり。
この石、どう動くんだろ? いつも気になる。
私の部屋にも同じの。真っ暗な時だけ光る。私の世界のどんなランプより、賢い。
「服、脱いで。浴槽、準備するね」エミリア、私を下ろして、浴槽に向かった。
一瞬、ルイザを見て、すぐエミリアに目を戻した。異常な夏より熱い感覚。でも、それだけじゃない。気づくの、遅かった――ルイザと隣に座る…
温かさと一緒に、冷たい汗が肌を滑った。ゴクリと唾を飲んだ。
「どうした、ヨリ? 服のまま入る気? 早く脱いで」とエミリアが促した。
「明日でもいいよね?」歪んだ笑顔で。
「脱ぎなさい」と命令。
なんでこんなに頑固? 理解できず、呆然と彼女を見た。
私が床に根を張ったみたいに立ってると、ルイザが横を通った。彼女を見た瞬間、血がドクドク、興奮と緊張を運んでる気がした。
何、これ?
あの女の子の姿、日々ぼやけるけど、だからって…いや、絶対違う。
ただ、変で、くすぐったい状況。昔、公共のビーチで、子どもたち、水着なしで平気だった。私も、別に気にならなかった。
そう考えると、そんな変な状況でもないよね? たぶん。
重いため息をつき、Tシャツの裾をつかんで頭から脱いだ。浴槽の湯気が肌に触れ、かすかにビクッとした。
ルイザへの気持ち、なんとか折り合いがついた気がする。でも、一つ問題――彼女にこんな無防備になる覚悟、できてる?
状況考えれば、普通のはず。でも、ズボンのベルトで手が震えた。恥ずかしさで胃がキリキリ。
頭の中で、ルイザを見るたび、泡みたいに何かが弾けた。小さくても、浴槽、二人には狭すぎ。向かい合って座るの、全然助けにならない。むしろ、真空パックみたいに縮こまりたくなる。絶対、触れたくない。
目標、足を体にピッタリ。隣よりはマシだけど…もう一つの理由。隠したかった。
浴室の温度なのに、足、震える。ルイザをチラ見するたび、顔の赤みが広がった。
彼女を避ける理由、特になかった。体、どっちも女の子。心が男でも、ルイザ、若すぎて惹かれない。それなのに、心臓、鐘みたいにドンドン。もう少しで、水面に波紋が走りそう。
ルイザ、黙って向かいに座ってる。無言すぎて、私、悪者みたい。こんな雰囲気、どうやって和らげる?
水をかける? 賢い選択じゃない。いじめたと思うかも。
正直、こんな状況、初めて。新しい経験だけど、できれば二度とゴメン。
ルイザ、うつむいて、顔の半分が水面下。まるでワニ、私をじっと見てる。
彼女、黙って見つめ続ける。私の髪から落ちる水滴だけが、静寂を破る。
「洗うの、嫌い?」突然、彼女が…たぶん。
泡の音と声が混ざり、聞き取りにくい。でも、急な質問にビックリ。考える暇、なかった。
「なんで?」
「だって…無理やり連れてこられたじゃん」水面から顔を上げ、ルイザが答えた。
その瞬間、長い髪が肩に滑り落ち、体の上が見えた。私は慌てて目を逸らした。彼女の歳で…いや、考えるのもダメ。
「違う、違う、違う!」頬をパチパチ叩き、頭を振った。水しぶきが飛び、ルイザ、両手で顔を覆った。
見えた光景、壁みたいに立ちはだかり、無視できなかった。
この感情、どこから? 哲学的な言い訳で、俗な誘惑から逃れようとした。でも、無駄。息、短いため息に変わり、浴槽、どんどん狭く。
頭、完全に沈没。私、浴槽の縁を滑り、ほぼ全身、水の中。
「水、好き」とつぶやき、羞恥と湯気の下で丸まった。
ルイザ、見るつもりなかったけど、チラ見、どんどん長くなる。何? 興味? 戸惑い? 分からない。でも、この瞬間、浴室に彼女しかいない。
無意識に目が合った。彼女、手を下ろした。で、一瞬――彼女の顔、三日月みたいな微笑み。
胸で誰かがマッチを擦ったみたい。花火が頭にバーン。
何が起きてるか、分からない。でも、彼女の笑顔、もう一度見たい。
姉役、難しいってすぐ分かった。でも、妹からの少しの反応で十分。その一瞬の目の輝き、ちょっと幸せにしてくれる。気づくの、遅すぎた。
歳じゃ私が下なのに、役割、受け入れられない。
「何やってる、バカ?…あ、ごめん」ルイザの声、だんだん小さく。
口の端、下がって、よそよそしい表情に。私は、ニヤニヤするアホみたい。
ルイザの唇、ギュッと閉じ、私、落ち着こうと目を逸らした。
「ただ、私と一緒、嫌だっただけよね?」
また、言葉に詰まる質問。
本当だけど、言いたくなかった。
水が体を飲み込み、黙ったまま、答えられなかった。
胸、痛い。言葉を絞り出そうとしたけど、舌、リボンで結ばれたみたい。動くたび、唇が少し開くだけ。
なんで、優しい嘘もつけない?
しばらくして、ルイザの顔、ゆっくり下がる。私の肩も。一緒に。熱いお湯のせいか、頭、粥みたい。
その後、完全な静寂。水滴の音だけ、時折、響いた。
水面のぼやけた反射、揺れる波紋、私の心そのもの。割れてないけど、ひびだらけの鏡みたい。
「愛情たっぷりの父さんなしで、どうするんだ!」
影が光を遮り、壁がドサッと落ちてきたみたい。私はビクッと飛び上がりそうに。
「ギャッ!」ルイザの叫び声、登場の100倍響いた。クイント、驚いてよろめき、私、心臓が飛び出しそう。
どうやって入ってきた? ドア、開いてないのに。けど、すぐルイザに気を取られた。
彼女に飛びつき、守るように…。
あ…。
耳と目、車の曇った窓みたいにぼやけた。熱、濃すぎて息ができない。長すぎるお風呂で、頭クラクラ。
で、突然…
強い風、まるで送風機、頭を包み、髪をくすぐった。面倒で目を開けず、乱れた髪を耳に。
今、柔らかい、知ってる感触――ベッド? さっきまで浴室…。朝陽の光線みたいに、記憶が頬を叩いた。考えるほど、なんかおかしい。で、気づいた。
「ルイザ!」肘で体を起こしたら、痛みが全身に。「イテテテ…」
肌、日に焼けたみたいに赤い。浴室の熱、まだ体に。
「静かに、静かに、大丈夫よ。慌てなくていい」エミリアの手、額に。枕に押し戻された。彼女、ベッドの端に座り、顔が近く。距離、緊張して、従うしかなかった。
彼女の手、水の透明な手袋みたい、肌を滑る。涼しい波、熱を層ごとに吹き飛ばす。動きごとに楽になり、緊張が解けた。
首を振ると、ルイザ。司教の娘らしい、普通のパジャマ。指、ベッドの端をつかんで、微かに震えてる。手術台のそばで飼い主を心配する子犬みたい。
可愛い、認めざるを得ない。
「ほら、ルイザ、逃げてないよ」エミリア、軽く笑って、彼女の髪をくしゃっと。「もっと近くに」
「そういう意味じゃないよ」歯の間でつぶやき、目を逸らした。
エミリアとクイント、なんか…妙な目で見てる気が。考えすぎ?
でも、エミリアの無垢な言葉、なんか恥ずかしい。なんで?
「パパ、どこ?」気を取らせようと。
「ん? まぁ…昼寝だって」
エミリアの曖昧な笑顔。ルイザの反応、もっと雄弁。目、毛布やパジャマに逃げて、私たちと合わない。
すぐ分かった。クイント、「寝る」なんて自らじゃない。
で、思った。ユリエル、ルイザの内気さを本気で心配するなら、エミリアに預ければいい。数時間で、彼女、感情の嵐。全部いい感情じゃないけど、エミリア、殻をナイフでこじ開けるみたいに、人を引き出す。
「そう…パパ、どうやって浴室に? ドアのキィって音、聞こえなかったよ」
「ん? 鍵、かけてなかったでしょ」エミリア、驚いた顔。私の前髪を上げ、額に軽く唇。「大人っぽいけど、ほら、独り立ちの結果?」
彼女の声、優しさじゃなく、からかい。でも、温かい触れ合い、反論できない。
私が額を彼女の唇に寄せた? ありえない。絶対。
気まずさのせい。
「さ、寝る時間よ、二人とも」エミリア、私を見て。「今日、初めて一日寝なかった。カレンダーの太陽、意味あるね」クスクス笑い、もっと恥ずかしく。
「3年間、エネルギー貯めてただけ」ブツブツ。
「ほんと? 賢いね」曖昧な笑い、彼女の唇から。
エミリア、ゆっくり立ち上がり、ボサボサの髪をさらにくしゃっと。私はムッとして、髪を整えようと手を。
「そうそう、プレゼント、どう?」彼女、ベッドの端にうなずき、視線を誘った。
ベッドの端、雲みたいな柔らかいパジャマ。グレー、白いお腹の模様。手に取ると、布、指で弾む、温かい。フードから、小さくてバカ可愛い丸い耳。
私の世界じゃ、キグルミってやつ。これ、どうやってここに?
モチーフ、色と耳でコアラみたい。でも、猿の失敗思い出すと、確信ない。
「これ、どんな生き物?」エミリアに。
「ドレモールよ」と彼女。
「ドレモール?」
「そう」エミリアがうなずいた。「怠け者で、ブツブツ唸るの。誰かに似てない?」
彼女の暗示、気づいた瞬間、頬が熱くなった。パジャマの耳、私のだったら、きっと縮こまってた。
つまり、彼女の目には、怠け者で不平屋? 完全な嘘じゃないけど、なんかムッとした。
子どもの心から生まれた感情かもしれないけど、本当にそう感じた。
「ありがと…」
自分でも言うけど、素っ気ない返事。エミリアのからかいで、気まずさと感謝が頭でグルグル。
「気に入ると思った」エミリア、ウィンクして、部屋を出ようとした。
「え、ママ、じゃあ…?」ルイザを目で示した。ずっとベッドのそば、柱みたいに動かず。
話してる間、彼女のこと、ほぼ忘れてた。でも、今度こそ、過去の失敗、繰り返さない。
「え、まだ分かってない?」エミリア。
「何が?」
彼女の目は雄弁だったけど、聞き返さずにはいられなかった。答えの代わり、短いクスクス笑いと肩すくめ。で、ドアを閉め、ルイザを私と残した。
それが答え、よね?
「あ…」
「悪人に休息なし」って、頭に浮かんだ最初の考え。静かで孤立した生活だと思ってたのに、罰されるなんて。結局、どっかの国じゃ、分離すら罪だ。
今日、いろんなこと、楽しくないことが多かった。選ぶ権利、なかったから。
人類、何世紀も、自分の声を持つために戦ったんじゃない?
また、ため息。さっきより静か。
「まぁ…仲良くできるといいね」歪んだ笑顔で、ルイザに。
一瞬で、彼女、私から飛びのいた。
マジ? 何?
困惑の中、ルイザ、鞄をガサガサ。この世界、魔法なかったら、あの小さな布にそんな物が入るの、ビックリ。セーター、シャツ、ズボン、もう一本、下着、全部床に飛び散り、何か必死に探してる。
「え、ルイザ?」慎重に声かけた。
返事なし。代わりに、本を手にした瞬間、ホッと息。なくしたかと怖かったみたい。
「前に渡すべきだったけど…」言いかけて、ルイザ、本を差し出した。
続き、聞かなかった。彼女、抑えてるけど、この仕草、嫌われてない希望。なんで? 本、持っててもよかったのに。
「ありがと、でも…読めないんだ」本を受け取り、気まずく笑った。
「え?」彼女、本気で驚いた。「でも…」
文を終わらせないの、ちょっとイラッとしたけど、追い払った。私たち、共通点ないけど、ここにいるんだから…我慢、かな?
「字、全部分からないんだ。教えてくれる?」
彼女、曖昧なブツブツで、またため息。関係、一日じゃ築けない…大人の話だと思ってた。子どももこんな複雑だなんて。
子どもなら、手を差し出せば、世界、すぐ笑顔で応えると思ってた。でも、現実、冷淡。子どもの期待も、裏切れる。
最初から、超難易度だった?
窓を見た。この世界、3度目の冬。前の冬と変わらない。季節、名前が変わるだけ、いつも同じ。
小学校の冬、全部キラキラ、ふわふわ。中学、早く終わって、時が進めと願った。高校、輝き失った。たぶん、私と一緒に。
で、今、幼児期の冬…ルイザと過ごす。
彼女、ベッドのそば、警戒した小さな衛兵みたい。髪の巻き、若さを際立たせ、頬のそばかす、緑の目と髪に意外と合う。
待て…
「なんで立ってるの?」慎重に。
「着替えてなかった。邪魔したくなくて」彼女の声、遠慮がち。
「お…」
急いでパジャマに飛び込み、フード、顔に落ちた。下着姿、気まずかったのか、ただ慎重なのか、分からない。独りで、見た目、気にしてなかった。でも、彼女と部屋を共有するなら、気をつけないと。
「そんな遠慮しなくていいよ。この部屋、二人で使うんだから」ベッドから降り、鏡へ。
「共同の主?」
「そう。えっと…ここ、君の家だと思って、気楽にね」
彼女の顔、ほんの一瞬、戸惑いがチラリ。私、気づかないふり。代わりに、鏡の自分を見つめた。パジャマ、柔らかくて温かい。昔、似合わなかった色が、今、意外と…悪くない。ちょっと可愛い、かな。
これが、女の子の魅力? どんなダサいものでも、なんか可愛く見える?
もう一度フードをかぶり、固まった。鏡、ドレモールが私の頭をユーカリみたいに噛んでる。
背後で、キラキラした笑い声。私、フードの端をギュッと握り、隠れるように。鏡に、ルイザの口、笑いでパッと開き、目、キラキラ閉じてる。
「…全然、笑いごとじゃないよ」囁いた。
「君…ハハ…めっちゃ…ハハ…可愛い!」
彼女の笑い、続くほど、縮こまって這いたくなる。こんなバカらしいの、絶対クイントの仕業。こんな笑いもの、私を誰が? でも、エミリア、なんで賛成した…?
突然、ルイザの手、私のお腹に。私、息を吐いた。彼女の頬、フードにスリスリ。
「初めて、ドレモール見た。こんな柔らかい…」
彼女の言葉、抱きつき、振り子トラップみたいにドン。なんとか立ってられた。
体、危険を感じたハリネズミみたいにピン。でも、ルイザの触れ方、脅威じゃない。彼女の匂い、めっちゃ近くて、息、恥ずかしいくらいハッキリ。
「君も、子どもっぽく可愛いとこ、あるんだね」バカっぽく笑って、言った。
心の底からの言葉、ルイザの顔、真っ赤に。
こうやって、石って砕ける? まずヒビ、で、崩れる。めっちゃ鮮やか。
自分の無力さに毒されてたけど、リードする可能性、初めて、笑えた。
たぶん、この笑い、小さな一歩。短いけど、感じる。で、私たちの関係、数分進んだ。
「ダメ、ダメ、ダメ…」
ルイザ、ボールみたい、ピョンピョン跳ねる。昔、冷蔵庫の前で、突然あの女の子が戻ってきたの、思い出した。似た人、引き合うんだ。
ルイザに比べ、私、何年も建つビルみたい。でも、もう、深い溝、感じない。
彼女の反応、無視して、話を続けた。
「想像して。友達と焚き火、座って。本の話、笑って、マシュマロ焼く。話しながら、湖に小石、ポイ。完璧に水切り、きれいな波紋」
「え?」
ベッドの本に目をやり、ルイザにも見るよう促した。
「いい絵でしょ?」
「…分からない」彼女、首振った。
「読むの、教えて。全部、話して。そんなの…現実になってほしい」
彼女、子どもっぽさと真剣さ、切り替え上手。感情、いっぱい隠してる?
「本当に読めないの?」彼女、半分囁き。
「ん?」
「…大人っぽく話す」
彼女の言葉、みぞおちにパンチ。歯、ギリッ。彼女の警戒した目、頭の中で壁を築いた。軽い雰囲気、油断して、溝、また開いた。
気楽さに夢中になり、警戒、忘れてた。これが、欲しかった気軽さ?
でも…
大人と子ども、同時に? 共存できる? 感情が理性より先に飛び出すのに、どうやって相手に合わせる? クイントやエミリア、気づいてた?
答え、見つからず、ただ笑った。
「…寝る時間、かな」
反応待たず、ベッドに登り、壁に背を向けてドスン、ルイザに背中。頭、ドキドキで脈打つ。まだ、関係、築く準備、できてない。どんなのでも。
まだ。
「君も、ルイザ」
彼女、吸血鬼みたい、招待待ってる気がした。
案の定、すぐ、マットレス、彼女が登る、わずかに沈んだ。
私たちがベッドに入った瞬間、明かりが消え、壁に影が這った。続いて、部屋を冬の月の柔らかな光が照らした。夏の月と何が違うわけじゃないけど、その光、なんか澄んでる。
風はないのに、頬に触れる感触、落ち着かせてくれない。
ルイザが寝てるか確かめたくて、チラッと見るの、抵抗した。でも、その衝動、消せなかった。肩越しにそっと――彼女、猫みたい、端で丸まってた。毛布、かけてない。
変な感覚、立ち上がって、彼女に毛布をかけたいって。なんだったんだろ? 気遣い? 責任? 名前つけられないけど、動くまで消えない、知ってた。
軽く手首を振って、バスケットにボールを投げるみたいに、ルイザに毛布をかけた。で、すぐ背を向けた。一瞬、ホッとした…けど、背中に触れた感触で、ビクッ。
「行かないで…」小さな声。
「え?」
振り返る前に、胸、ギュッと締め付けられた。頭、なんか弾けた。血、顔から引いて、震えた。
叫びたかった。抜け出したかった。でも、その前に…
「いて…」小さなすすり泣き、握りが緩んだ。その時、気づいた。私だけじゃなく、彼女も震えてた。
「ルイザ? どうした?」
振り返ろうとしたけど、すぐ、万力みたいに締め付けられた。胸の骨、ピキッて、咳が出た。いくら抜け出そうとしても、力、足りない。
「ルイザ…離して…」掠れた声。
「行かないで…パパ…」
え?
空気不足か、驚きか、目、大きく開いた。ユリエルが恋しい? でも…私と何?
このままじゃ、取り返しつかない。彼女、起きて、これ見たら、どうなる?
今、ここで終わらせなきゃ。
彼女の手の中で、蛇みたいに動いて、抜け出そうとした。敵意に見えないよう、意識して。
今、ルイザの手、私のお腹に。私、かなり進んだ。でも、なんか、心にデカい穴、開いたみたい。あきらめたくなった。
彼女を止める意志、もうなかった。
私の手、彼女のに落ちた。彼女、だんだん緩む。流砂みたい――抵抗しない方が、生き延びれる。指、彼女の指の間に滑らせ、そっと握った。
少しずつ、ルイザの息、落ち着いて、首にそっと触れる。彼女の手、震え、止まった。でも、私の手、すぐ離さなかった。ルイザの罠、いつでも閉じそうで。
時間が過ぎ、彼女、反対に寝返り、私を解放。やっと、胸いっぱい、息できた。でも、彼女の手、私のに残る。誰かそばにいる、確かめるみたい。
窓の外、夜、冷たい。でも、ここで起きたこと、全部変えた…




