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【16KPV感謝】魔女の姉の身の回りの世話をしていたら、いつの間にか近衛騎士団長に抜擢されていました。  作者: 夜刀神遼
episode.03 〝剣神〟の故郷 編

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第26話―〝剣神〟V.S.〝剣神〟【ラグナ視点】

 ――進み始めて、十数分が経った。

 霧のせいで見通せはしないが、先ほど感じた反応はおそらくほぼ目の前だろう。

 ふと、意識が遠のいたような、そんな錯覚が私を襲った、ような気がした。

 かぶりを振り、改めて〚魔力探知〛を行使すると、先刻の私の考えを裏付けるように一つの魔力反応が引っかかった。


「……この魔力」


 思わず、私は呟く。


 この魔力を、私は、知っている。


 つい最近感じていた、研ぎ澄まされた、まさに剣とでも言うべき鋭い魔力。

 半ば呟くように、私は眼前の人物を呼ぶ。


「……祖父上」


 しかし、祖父上は何も言わず、緋き妖刀、彼岸刀を抜く。その切っ先と共に向けられるのは――ただひたすらに練り上げられた、純粋な殺気。

 空気が張り詰める。嫌な汗が、背中を伝う。その鋭さに、生存本能が逃げろと警鐘を鳴らす。


「……なぜ……なぜ、私に剣を向けるのですか」

「抹殺せよというのが、お上からのお達しじゃからの」


 そう、冷たく言い放つ。

 祖父上のここまでの殺気に当てられるのは初めて故の困惑からか、上手く呼吸ができていない気がする。酸素が脳に回らず、思考が麻痺しているような感覚に陥る。


「……お上というのは?」

「言うわけがなかろう。言うたとて今のお主は信じぬじゃろうて」


 そう問答をする間にも、祖父上は変わらず殺気を放ち続けている。


「話は終わりじゃ。抜け。お主も剣と共に生きる者ならば、この窮地、おのが信ずる刃にて切り抜けてみせよ」


 祖父上の言葉に、私は震えながらも絶龍刀あいぼうを抜き、正眼に構える。


 ――これは、稽古じゃない。


 呼吸が浅い。手が震える。切っ先が震える。


 ――間違いなく、命と命のやりとりだ。


「……〚神醒・鮮雷〛」


 ――でも。なんで。


 混じり合う様々な色の雷光は、さながら私の心の中の迷いを表しているようで。

 さらに、私の呼吸が浅くなる。ドクン、ドクン、と、鼓動が脳内に響く。


「……っ…………ぁぁああああッ!!!」


 煩いほどに鳴り響く心臓の鼓動を掻き消すように叫びながら、我が師(祖父上)へ斬りかかる。

 普段とは見る影もない雑な斬り下ろし。通用するはずもなく、いとも簡単に弾かれ、空いた胴へ蹴りを入れられ、吹き飛ばされる。


「かはっ……」

「彼岸刀、極致其の伍――」


 木に打ち付けられた次の瞬間には、祖父上は眼前に迫っていた。


「――“緋天葬炎ひてんそうえん”」

「其の、“絶龍”ッ!!」


 ギリギリで刀と魔力を重ね合わせ、祖父上の紅炎を下から斬り上げる形で受ける。龍が炎を絶たんと牙を剥き、炎が龍を葬らんと荒れ狂う。

 しかし、その拮抗は一瞬にして崩れ去り。

 私は再び木を薙ぎ倒しながら吹き飛ばされ、十本ほどぶち抜いて止まる。


「……なん……っ、で…………!」


 激しい痛みの中立ち上がりながら、絞り出すように、叫ぶように問う。

 祖父上はまたも刹那の内に私を間合いに入れると、彼岸刀と魔力を重ね合わせる。


「極致其のしち、“悲焔咲乱ひえんしょうらん”」

「……なんで、貴方と殺り合わなければいけないんですか……っ!!」


 絶龍刀、極致其の参、“煌々龍転(こうこうりゅうてん)”。


 一呼吸の内に、青紫色の炎と輝く龍が数十回交錯し、再び鍔迫り合いになる。

 心の奥から漏れ出た私の叫びに、しかし答える声は無い。

 だが、相変わらず濃密な霧の中、祖父上の炎によって照らされて見えた、彼の表情かお

 それはとても苦しそうで。或いは、とても泣きそうな、そんな表情かおをしていた。


「……ッ!」


 一瞬、ほんの一瞬だけ、祖父上の力が緩んだ気がした。いや、間違いなく緩んだ。

 その瞬間、私は無意識で祖父上の刀を弾き返し、権能を――“術”を、行使する。


「〚極醒・虹雷〛」


 私の額に、二本の鮮やかなツノが出現する。変化した私の姿を見て、祖父上が少し目を見開く。


「……ついに、成ったのじゃな」

「ええ」


 もしかしたら、まだ――。そんな根拠もない、泡のような希望を抱いて、私は改めて愛刀を構える。

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