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【GAMEWORLD ONLINE】極限遊戯戦記 ゲームウォーリアー  作者: Kazu―慶―
第1章【シャッフル・オールスターズ編】

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第2話⑤~切り札はエース~

 (あれ……? あの人の手先が……)



 2度目のスピードコールを、今にも詠唱しようとする時、みのりは、山札を取る手とは異なる服部の不審な右手の動きに、嫌な予感を抱いていた。



「「せーのッッ!!」」



 ―――『スピード』ッッ!!!!




 服部は大きくカードを振りかぶった。


 その隙に剣は、ポケットに忍ばせていた100円玉を服部の手元目掛けて弾き飛ばし、その出鼻を挫いた。




「がっ……!??」


 その反動で服部の手元の裾に隠していたカードが、地面に1枚ヒラリと落ちる。




「なっ、何しやがる!!」


「何しやがるじゃねぇ。てめーの足元に落ちてるその『ジョーカー』は何だ……!」


 いつの間にか剣は服部のフィールドに入り込み、足元に落ちたカードを拾い上げた。青筋を立て、低い声で問い詰める。 そのカードは、愚者を嘲笑うピエロが描かれたジョーカーだった。




 (ジョーカー!? 確かルールじゃ抜いてプレイするんだったような…?)



 スピードの公式ルールでは、ジョーカーを除いた五十二枚でプレイする。

 スピードコールの瞬間に学ランの裾からカードを滑り込ませ、あたかも配られたカードであるかのように見せかける巧妙なイカサマ。不良軍団『伊火様』の名に相応しい、卑劣な不正行為だ。




「……オイオイ、大丈夫かぁ? この柄からしてお前が渡したトランプじゃねぇか! まさかボケてジョーカー抜き忘れてたとか言うんじゃねぇよな? 俺様しらねーぞ!?」




「いや、俺はちゃんとジョーカーを2枚抜いてるぜ。新品にはババが2枚同封されてるからな。それに、不利になればズルをしてでも勝ちたがるお前のことだ。あえて泳がせて、不正の決定的瞬間を捉えたかったのさ」

 剣は胸ポケットから、あらかじめ抜いておいた2枚のジョーカーを提示した。


 剣がシャッフルの際から目を光らせていたのは、服部の袖口にカードらしき影が見えていたからだ。往生際悪く粘る服部を、剣は一喝する。




「冗談じゃねぇっ! この絵柄、プレイヤー・バザールのP−ストアで購入したトランプと同じじゃねぇか。俺様のじゃないって言えるん……」


「言えるねッッ!!!!」



 剣がキレた口上で話を遮り、先程証明の為に持っていたジョーカーと、零れ落ちた服部のジョーカーを比べてみれば一目瞭然。




「お前の持ってるジョーカーは傷だらけだ。カードを粗末に扱ってりゃ、すぐにボロが出る。イカサマで使い古したカードが、新品相手に通用すると思ったか!?」




「!!!?!?」

 誤算だった、というよりは詰めが甘かった。




 トランプを嗜むプレイヤーにとって、対戦する際は細工もイカサマも無い未開封トランプで挑むのがセオリーとされている。


 更にシャッフルの様子から見て、カードを傷付けずデリケートに切っていた剣に対し、服部は乱暴かつ粗雑な切り方で早くもカードが傷んでいた。




 これらの証拠から、剣はいち早く仕組まれたジョーカーの存在を察していたのだ。不正に対するチェックメイト。もはや言い逃れはできない。




「図星やな。お前がメダルやら何やら連勝したのはマグレじゃないって事はよう分かったよ……」


「ッ……!!」




「不正なんざ実力でも何でもない。今この時点で俺の前に立ってるのは、一人の【ゲームウォーリアー】でもない! 恥を知りやがれイカサマ野郎!!」



「黙れ貴様ァァァァァァァァァァッッッ!!!!!」


 イカサマを見破られ、ここまで煽られた事のなかった服部の理性がブチキレた。




「剣くん、もうやめましょうこんなゲーム! あの人達が不正したのが分かってこれ以上続けることないわ!!」




「なに言うとんねんな、寧ろ好都合や。久々に楽しませてくれる!!」


「―――剣くん!?」



 みのりの静止を聞かぬどころか、恍惚に燃える桐山剣。そんな彼は何を考えたか、自分の持ってたジョーカーカード2枚を服部に遠方から渡した。



「………どぉぉぉいう事だ??」



「ハンデだ。そのジョーカー2枚も加えて俺に勝ってみろ。そうしたらお前に忠誠でも何でも誓ってやる。だが負けたら、相応のペナルティを覚悟しろ……!」




 剣の瞳孔が開いた視線、不正行為上等の構えでこの不利を楽しんでいるように見えた。


 立ち塞がる敵を徹底的に潰す、真の強者の眼だ………!!!!






「……さぁ来いよイカサマ野郎!!


 ―――相手になってやるぜッッ!!!」




 コォォォオオオオオオ……!!




 剣がカードを掴んでいる右手に迸る覇気を感じる。その覇気は、騎士が剣の鞘を握りしめるが如く、真剣にその命に託す戦士の魂か――!?





「……ケッ、上等だ。このハンデに後悔するなよ、キザ野郎がッッ!!!!」


 服部は使おうとしていたジョーカーを躊躇いなく使う。次の瞬間ッ―――!!




「使わせるかッッ!!!」

 服部が1枚目のジョーカーを出した瞬間、剣は手札から♠5、6、♣7、8を電光石火の勢いで叩きつけた! ジョーカーによる場札の更新を逆手に取り、一気にリードを広げていく。




 ―――いや、それだけでは無かった。




「気のせいかしら。現実のブロック崩しもそうだったけど、ただゲームしているだけなのに、武器も持たない素手で戦っているのに……剣くんの動きそのものが『騎士』のよう!!





 ――戦場を果敢に駆ける、円卓の騎士に見える……!!!」





 素人が見ても、メタバースの世界で普通にゲームをしている風景にしか見えないだろう。


 しかしみのりのように、ゲームを愛する心を持つ者の目には、その光景は一変して映る。静かなフィールドが、命を懸けた戦場へと変貌していく。

 ゲームはいよいよ、クライマックスを迎えた。



 剣の手札は残り2枚、対する服部も残り2枚。だが、服部の残る手札はすべてジョーカーだ!「お前のジョーカーが仇になったなぁ!」 服部が最後の一枚を出すより速く、剣は♠2を場に叩き込む!


「これで終わりだ、くたばれッ!! 剣ィィィィィィィィッッ!!!!」 

服部が勝利を確信し、ジョーカーを振りかざしたその刹那――!


「いや、終わりなのはてめーだ」

「……あぁ!!?」


「最後に一つ教えてやる。カード一枚、ボタン一押し、ダイス一振りにさえ全力を尽くすプレイヤーには【魂】が宿る。それは不可能を超える力となり、信じ抜く者を勝利へと導く。

――それこそが、真の≪切り札≫だ!!」 


剣のラストカードは――『スペードのエース』! 

服部のジョーカーよりも速く、光速のカードが場を制する!  




―――SLASH!!! 


それは暴君を打ち払う刃、敵の鎧ごと斬り裂く横一文字の一撃の如く!




『ゲーム・セット!!』


 フィニッシュのコールがフィールド全体に木霊する。




 剣から見て右の捨て山札、一番上に服部のジョーカー。


 その下に『SPADE♤️・ACE』!!!!!




『桐山剣、WIN!!』




 勝利は桐山剣、近未来の騎士にあり!!!


 ジョーカー3枚のハンデを越えての白熱した勝利となった。




「剣くん、本当に勝っちゃった………!!」


「何故だ………ジョーカー3枚掲げてまで、あんなヤツに負けるなんてッッ――!!!」




 敗因はそのジョーカーにある。




 確かにジョーカーを乗せることで番号や連番関係なしに動かせる。だが剣はそれを利用した。


 剣の常人以上の瞬発力でジョーカーを乗せた瞬間を見切り、場札の連番4枚を一気に消費させていく。


 その勢いで相手はペースを崩し、差を付けた。




 さらにラストの2枚、服部が決めで取っておいたジョーカーの1枚目で剣は♤️2を割り込ませ、さらに♤️ACEでフィニッシュを飾った。




 この勝利は紛れもなく、ゲームに本気になって挑む剣の戦術で飾ったものだった…!!


 そして失意に堕ちた服部に剣は言った。




「ルールの下で自分の最大限のパワーを出して戦うプレイヤーと、イカサマを使った小賢しいやり方で実力をごまかすプレイヤー。果たしてどちらが『最強』なのか……?




 それにお前は、ルールを破ってでも勝つ為のイカサマを俺の戦術(タクティクス)に利用された。結局お前は最後の最後まで弱かったんだよ」





「ふざけんな! 俺様は弱くなんか……!!」


「強い奴は、最初からイカサマなんて必要ねぇんだよ」


「…………………」



『違反報告、違反報告、『デュエルフィールド』エリア A-13』



 エリアA-13は、剣達のいるフィールドである。そして服部含む『伊火様』のグループに転送依頼が要請されていた。




「オイ、何しやがった!?」


「何って『ペナルティ』だよ、不正行為の。あんたこれだけじゃなくて現実のゲーセンでも不正やって、ブラックリスト載ってるらしいじゃんか?」






 ゲームワールドでは不正・違反が発見された場合、運営管理を通じて相応のペナルティが課せられる。

 悪質な場合には、現実と仮想、二つの世界でゲームを禁止されることさえある。服部たちの余罪を考えれば、妥当な処置だろう。




「暫くゲームを取り上げて、どんだけテメーが自惚れてたか反省するんだな!!」




「―――クソォォォォォォォ!! 覚えてろよ剣ィィィ!!! 必ず復讐してやるからなァァァァァァァ!!!!!!!」


 小悪党らしい捨て台詞を吐いて、『伊火様』の面々は強制転送されていった。




「お前ごときがマスターオブプレイヤーになれるか。これで暫くは近所も静かになるだろうよ」


「剣くん!!」


 遠方からみのりが剣の懐目掛けてガバッとハグっと抱き付いてきた。




「何だよ、まだいたのかお前」


「だから『お前』じゃなくてみ・の・り! 剣くんすっごいカッコ良かったよ!!」




「………そうかい」


 これでやっと、みのりもあの言葉が言える。




「あのね剣くん、お願いがあるの。私と友達になって―――」





「やなこった」




「…………え??」





「俺はただ、自惚れた連中にケリをつけたかっただけだ。……それに、俺に友達なんて必要ないから」




 そう言いながら剣はただ一人、元の世界へ帰還転送した。






 (………どうして? ゲームをしてた剣くん、あんなに輝いていたじゃない。あんなにカッコ良かったじゃない!!



 剣くんに何があったか知らないけど……私、絶対剣くんと友達になるんだからッッ!!!!)






  剣が友達を拒む理由が何なのか、この時のみのりはまだ知る由もなかった。しかし、これしきのことで彼女の心が折れることはない。

 この最悪で最高の出会いから、カードと魂で繋がる壮絶な物語――『ゲームウォーリアー』の幕が、既に切って落とされていたのだから。


小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも『★★★★★』の評価、「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を付けて、応援してください!



次回もゲームウォーリアーをお楽しみに!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初期遊戯王並みの治安の悪さと妙に勢いのある台詞回し……なんていうか濃厚ですね。っていうかオンラインでスピードやるなら乱数に任せてシャッフルなんて要らなかったんじゃ……いや、これは無粋か。 …
2019/12/16 02:31 退会済み
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