第16話①~謎のチップ~
疾風の如く駆け抜ける槍、しかしその刃に躊躇いを見せたときその魅力は一気に衰えていく。
パラディンの本気はこんな物ではないだろう!?
さぁ宇宙を飛び越え2nd STAGE、シューティングゲームの世界へ誘わん!!
第16話、オープン・ザ・ゲート!!!
G−1グランプリ関西予選・1st STAGEを終えた剣は、直ぐ様みのり達シャッフル・オールスターズの居る控え室へ駆けつけた。
「―――あ、剣くん帰って来た!」
迎えた剣の表情はブラックヘロンの刺客との戦いを終えて、勝利した満足感に浸っていた。
「どうだった? 大会ゲームでNo.1取った感想は」
「もう最高ッッ、ごっつ気持ちえぇ!!」
そう言って剣は槍一郎と肩組んで、仲間と恍惚の瞬間を分かち合う。
1st STAGEゲーム『チャンバラ・ファイター』では、シャッフル・オールスターズは剣、槍一郎、豪樹の3人がNo.1を取っていた。
「ほんで、俺が戦ってた間はアイツらの動きはどうだった?」
「それが全然だ。会場内の管理室にも異常は見られないって聞いたし、何より不審人物らしき輩も居ないって報告があった」
槍一郎だけではない、他のメンバーも「NO」と同じ答えが飛んできた。
「ところがギッチョン、俺は良いものを手にいれたぜ!」
剣はゲーム終了後に拾った黒いマイクロチップを槍一郎に見せた。
「何だい、そのチップは……?」
「あんときフニャチン野郎とチャンバラ勝負した時に奴の竹刀ん中に入ってたチップ。胡散臭さ100%や」
一見普通のマイクロチップだが、見かけで判断されてはいけない。白字で細かく『BH.Bat』と書かれていたチップには、改造コードを染み込ませた回路がぎっしり詰まっていた。
「こ、このチップだ! WGCでも問題になっていた『BH.Bat』……剣、これは大手柄だぞ!!」
「そんなに凄いチップなの?」
みのりも横からマイクロチップをチラ見した。
「凄いもなにも、ブラックヘロンが不正行為を起こさせる大根元がこのチップだ。
このチップを読み込めば最後、チート行為を起こしゲームバランスを大きく狂わせる。不正バグの塊みたいなものだ」
「かぁ~ッ、聞いただけでも恐ろしいこっちゃ!!」
槍一郎は苦虫を噛み潰し、それを豪樹はわざとらしく身震いしてチップを見つめる。
このチップ一つで、オフィシャルの面目を潰したと分かればその心境も理解出来るだろう。
「だったら早く管理の人に渡さないと!」
レミは急かすように剣にチップを預けようと促そうとする。しかし……
「いや、待て! ――そいつは剣が持ってる方が良い」
「俺に?」
どうやら槍一郎には、確信が一つあるような思わせ振りだった。
「どうも出来すぎてると思わないか? 前からBH.Batの存在は知りつつも、詳細が明らかになっていないことに。しかも剣以外誰もこのチップを見た人がいないと言うんだ。おかしいだろう?
これは僕の予想なんだが……運営側は既にブラックヘロンに乗っ取られてるんじゃないかって思うんだ」
「……それって、WGC側が隠蔽してるって訳か? お偉いさんがグルになってるとか」
「いやそうじゃないよ、剣。逆だ。社長や管理者がブラックヘロンに脅されている可能性も考えられる。」
「やりかねへんな。下手にチップを渡してブラックヘロンに知られたったら、WGCのお偉いさんの命は無いし、それこそワイらの作戦はオジャンや」と豪樹も釘を刺す。
「だからこのマイクロチップは剣が大事に保管すべきだ。本当の切り札は『切り札騎士』の君が持つに相応しいからね」
そう言うと槍一郎は、再びBH.Batを剣に返した。
「まぁ確かに俺は『切り札騎士』やけど……槍ちゃんはどうなん?
俺をヒーローのように魅せるのは勝手やが、お前だって少し見栄張る資格はあると思うで。槍ちゃんも俺と同じゲーム戦士なんやから」
「……僕はそんなに凄くはないよ。剣達のフォローで精一杯だ」槍一郎は目を反らしながら返す。しかし負けじと剣は背く槍一郎に正面向いて諭した。
「ゲームはお前にとって義務かもしれへんが……少しくらい楽しんでみなよ。俺ァお前の真面目な面を笑って崩すのが見たいんや」
剣は隙を突いて茶化しながらも、そこには何処かしら納得の行かない何かが引っ掛かっている様だった。
(剣くん、やっぱり槍くんの事……)
みのりには、その真意を悟られていた。




