第2話③~プレイヤー・バザール~
――ゲームが世界を動かす「超次元ゲーム時代」を象徴する電脳異世界、『ゲームワールドオンライン』。
初めてそこに足を踏み入れた河合みのりの目に映るもの全てが、普段テレビの奥で展開していたオープンワールドそのものだった。
夢のような世界に興奮冷めやらぬみのりは、ふとプレイギアの表示に気が付く。
(ん、こんな画面あったかしら? これは……ゲームのステータス?)
みのりが見ているのは、ゲームワールドで挑む際に欠かせない成長要素を可視化したシステム――【プレイヤーステータス】である!
◎――――――――――――――――――――◎
☆河合みのり / プレイヤーレベル:1
[プレイヤーステータス]
・アクション:100 ・シューティング:100
・ロールプレイ:100 ・タクティクス:100
・スピード:100 ・ブレイン:100
・ハート:100 ・ミュージック:100
・ラック:100
[プレイヤースキル]
・なし
◎――――――――――――――――――――◎
みのりは初めてゲームワールドを訪れたため、数値はすべて初期値だ。
ここから様々なゲームに挑むことで『プレイヤーレベル』が上がり、9つのバロメーターが強化されていく。
レベルを上げることで挑戦できるゲームが増え、エリアが解放されるなど行動範囲も広がる。また、ゲームをクリアしたり対戦で勝利したりすれば、必ず『クリア報酬』が手に入る。
報酬の内容は、現実世界で換金もできる賞金や、特殊能力を得られる『プレイヤースキル』のデータ、さらには隠されたエリアの鍵など多岐にわたる。
ゲームの数だけ冒険があり、熱い戦いがある! それがゲームワールドの醍醐味なのだ。
そして、この世界の登竜門と言えるエリアが、ここ『プレイヤー・バザール』である。
ここでは全国のプレイヤーたちが、最新のゲーム情報の交換やアイテム購入、オンラインでの交流、対戦の申し込みなどを行うことができる。
ゲームに慣れていない者や、手強いゲームに挑む者は、必ずと言っていいほどこのバザールに集まり準備を整える。まさにプレイヤーのための市場なのだ。
「ねぇ剣くん、こんなところで何かやらなきゃいけないことがあるの?」
市場の熱気に圧倒され、みのりは周りをキョロキョロしながら剣に尋ねる。
「何をって、決まってんだろ。『スピード』をするためのトランプを買うんだよ」
「トランプ買うなら、元の世界の100均でも買えるじゃない!」
100均の名前が出るところ、みのりも一般市民である。
「あのな、相手は悪名高いチンピラだぞ。あっちが勝手にルールを決めて好き放題やらせたら、絶対にこのゲームには勝てねぇ。ここはトランプにもこだわって、フェアに勝負すんねん」
「確かにそうね……。で、ゲームワールドのトランプってどこに売ってるの?」
「東の方にある『P-ストア』だ。この世界のゲームアイテムは現実でも使えるし、むしろこっちの方が使いやすいんだ」
剣たちが向かった先には、角ばった建物に『P-ストア』の看板が掲げられていた。
どこか懐かしい、古めのおもちゃ屋のような佇まいの店だ。現実世界では少なくなったこうした店構えは、見る者の郷愁を誘う。
「『対戦型スタンダードトランプ』ください」
「はいよ! 500円ね」
この時代、支払いは電子マネーが主流だ。通貨は日本円と変わらないが、プレイギアをお財布代わりに、二つの世界で共通の残高を使えるようになっている。
「これでよし。これがないと安心してプレイできひんからな」
トランプの裏面は、中世の王宮を思わせるロイヤルなゴシック調の絵柄。
角度を変えると光を反射するシャイン加工が施されており、とても500円とは思えない良品だ。
「『スピード』は瞬発力が要だが、カードの手触りや重なり具合が勝敗に大きく影響する。サラサラな新品のトランプが一番相性がええねん」
「綺麗ね……!」
みのりもそのトランプの美しさにうっとりとする。用を終えた二人はP-ストアを離れ、次の目的地へ向かった。
◇◇◇
「剣くん、ゲームワールドのどこで『スピード』をやるんだったっけ?」
「『デュエルフィールド』だ。酒場からそのまま転送して行ける」
【デュエルフィールド】とは、プレイヤー同士がタイマンやチーム戦を行うための、対戦に特化した決闘エリアである。
ゲームワールド内からはもちろん、現実世界からでもゲートコードとマッチIDを入力すれば、即座にオンライン転送が可能だ。
大会のエントリーや会場としても利用され、年間を通じて数多くのイベントが開催されている。
「ここでのゲームは最先端の演出が使われるから、地味なトランプゲームでもめちゃくちゃ盛り上がるんだ。一日に40万人くらいは来るかな」
「40万!?」
「大したことじゃない。祭りの時は200万人も押し寄せてた。ルームは足りてるから平気だが、それだけ皆が戦いに飢えてんだろうな。あいつらも」
(戦いに飢えてる……?)
みのりは剣の言葉に一瞬考え込み、問いかけた。
「ねぇ剣くん、皆は何のためにこの『ゲームワールド』に来るの?」
「【マスター・オブ・プレイヤー】を目指したいんだろうな」
「マスター……え?」
「プレイヤーの頂点を意味する称号のことだ。ゲームワールドのエリアを網羅し、全てのゲームを制覇した『マスター・オブ・プレイヤー』は、宇宙をも超越する究極の報酬を手にすると言われている」
「究極の報酬!? それって何なの?」
「そいつは誰も知らない。何しろゲームワールドを網羅したプレイヤーは、まだ一人もいないんだからな。だからこそ皆、躍起になってその称号を奪い合おうとしている」
「剣くんもなるつもりなの? その、マスター・オブ・プレイヤーってやつに」
その問いに、剣は少し躊躇った。
「なりたい。いや……なりたかった、というのが今の気持ちだ」
「……?」
剣が心の奥に何を隠しているのか、みのりはまだ知らない。だが今は、目の前の勝負に挑むのみだ。
二人が向かったのは酒場内にある『エリアリンク』。別のエリアへと移動するためのワープ転送装置だ。
「対戦ゲームは『トランプゲーム・スピード』、ルームはA-13……と。よし、ゲート・オープン!!」
剣が情報を入力し、エリアリンクに発生したゲートをくぐると、二人はデュエルフィールドへと転送された。
「わぁ……!!」
視界いっぱいに、巨大なモニターパネルが埋め尽くされている。テニスコートのようなフィールドや、対面型、パーティー型など、様々な対戦台が整然と並んでいた。
剣たちのフィールドは、長方形のテーブルの前後端にカードを置くラインが刻まれたものだ。テーブル自体がモニターの役割を果たし、置かれたカードを大きく映し出す仕組みになっている。
剣は自前のトランプを使うため、自動シャッフル機能などはオフに設定した。
画期的なのは、テーブルに備えられたカードスロットだ。
そこにカードを通すことで、スピードの「捨て札」としてデジタルモニターに即座に反映され、スムーズかつフェアなプレイが可能になる。
「俺たちは招待側だから、あいつらがルームIDを入力すれば対戦が成立する」
と、言ってる側から。
『プレイヤー、服部 詫摩様、入室致しました』
プレイヤー入室のアナウンスコール。『服部』って事は……?
「………来やがったな」
服部率いる『伊火様』、ご入場。
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次回もゲームウォーリアーをお楽しみに!!




