第50話⑦~立海銃司・覚醒~
「お前は……立海丈か?」
「……おう、また会ったな蒼真」
プレイヤーを死傷させた銃司を処刑するために一文字蒼真の炎が注がれる直前、兄の丈が突如現れた。
(兄貴……!!)
無様に倒れる銃司の肉眼から、確かに兄の姿を確認した。
そして蒼真も割り込んだ丈に対し構えた指先の炎を自ら消す。
「……コイツはお前の弟か?」
「――あぁ、俺の親愛なる弟だ。城に居るときは威勢張ってた癖して、今は随分無様だがな」
「…………」
憎たらしい兄の捨て台詞を吐かれて、今の銃司には怒るべきか感謝すべきか複雑な気持ちだった。
「お前が弟に炎を向けるということは……コイツがトンでもないことを仕出かしたか?」
「……あぁ、プレイヤーを襲った」
「まさか……殺したのか?」
「いや……分からん、だが皆重症を負ってる。だから俺の手でコイツを処刑しようと思った所だ」
「……そうか…………」
二人が淡々と会話するその周囲の空気はとんでもなく張り積めてる事を銃司はその身体で感じ取っていた。
そして、丈が死んだ目付きで蒼真を睨みながら……呟いた。
「弟の代わりに…………俺を殺す事に変えてくれないか?立海のプレイヤーが殺めたとなれば名が廃る。城主である俺が命を持って責任を取ろう」
「ッッ!!!!?」
銃司は息が出来なくなるほどに絶句した。今まで冷たい態度を銃司に取った兄が、身代わりになろうとしていた。
「……バカ言うな!!お前を処刑の代理にするなど有り得ん!!第一ルールにそんな事は書いていない!!!」
「……お前はいちいちルールに申し立てないと動けないのか?
前まで俺に喧嘩を売ったお前が、俺を殺す程の殺意が湧かないか、見た目と裏腹に腰抜けだな」
銃司が言っていた丈が喧嘩をふっかけた相手とは蒼真だったのだ。
一度喧嘩を売った相手に丈は、依然として屈することなく挑発を仕掛けた。
「…………変な気分だな、俺は弟よりもお前の事を殺したくなってきた。
お前と喧嘩した時から……プレイヤーを見下すようなその強情な面を潰したくて仕方がないんだよ――!!」
怒りの矛先を丈に向けた蒼真は再び指先の炎を着火させ、丈に向ける。
……しかし。
「待て。俺を殺るなら……コイツで殺れ」
丈はPASの波動で蒼真のPASを相殺させて炎を打ち消し、腰に下げたコンバットマグナム『S&W M19』を取り出す。
そして空のリボルバーにポケットから取り出した1発のマグナム弾を装填、そして……
――――ジャリリリッ!!
手で思い切りリボルバーシリンダーを回し、それを蒼真に手渡して銃口を……丈の額に強引に押し当てた。
「さぁ…………殺れよ」
「!!!」
蒼真は改めて丈の真意に恐怖を覚えた。
処刑する予定の無い立海丈を蒼真の手でロシアンルーレットをするなど……正気の沙汰では無い。
自らの手で撃つのではなく、他人の手で撃ち殺すなど良心を逆手に取る悪意でしかない。
あれこそ真の狂気では無いだろうか――??
「……引き金を引けないのか?そりゃそうだよなぁ……殺したくない相手を撃ちたくないもんなぁー?――意地でも引かせてやる」
丈がくいっと指先を手前に引く仕草をすると……
「……な?!指が勝手に動く――!?」
――カチッ!!
無意識に蒼真の指先から引き金の引く音が聞こえた。
「お前……何をしたんだ!!?」
「遊奥義『ハンドコントロール』。お前が引かないなら俺が遊奥義で強引に指を動かして、俺のルールで引かせるまでだ。
――さぁ、2発目だ!!」
マグナムのハンマーを丈が操る蒼真の指で引き、再び引き金へ指先に力を入れた。
――カチッ!!!
「――――3発目!!!」
――カチッッ!!!!
「止めろ……止めろ、もう止めろ丈!!!!」
「――――――4発目!!!!」
――カチッッッ!!!!!
……6発中4発、空撃ち。恐らく次の引き金を引いた瞬間で……!
無意識のままに引き金を引くこのとてつもない恐怖に、蒼真の冷静な面が引き金を引く毎にひきつる。そして今やパニック寸前。
「……どうしたよさっきの殺意は何処へ行った?俺の強情な面潰したいんじゃ無かったのか!!
――この不条理なルールを覆す度胸の無い奴が、プレイヤーを裁こうなんざ1000年早いんだよッッ!!!!!」
遂に丈の理性がぶち切れ、5発目の引き金に力を指に入れられる蒼真。
「さぁ撃ってみろ……!!撃ってみろよぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!!!!」
「う、うわあああああああああああ!!!!!!!!」
――――――――カチッッッッ!!!!!!
「…………ハァ……ハァァ……」
「……お、お前……ツイてるなぁ…………ハハハ……」
――5発目も、ハズレ。この予想外の結末にただため息と空笑いのみが木霊する。
そして、理性を取り戻した丈は改めて冷静になり、またしても銃口を自分の額に押し当てる。
「遊びは終わりだ。お前がやれないなら俺が自らこの命を葬る。立海の城主として……その罪を死を持って償う――!」
丈は蒼真の抱える銃のハンマーを自分で引き、引き金は彼の指を乗せるように指を差し出して撃つ準備をした。
「…………だ、駄目だ……駄目だ!!死ぬな兄貴!!!」
恐怖で声を出せなかった銃司はこの事態にようやく兄に向かって大声で叫んだ。
それに対し、兄貴は………
「…………銃司、今まですまなかった。お前を辛い目に会わせて……」
「!!?」
今まで弟に対して1度もしたことが無かったであろう、弟からの心からの謝罪だった。
「――最期に言わせてくれ!お前は俺と同じ立海の血が流れているが、そのPASの力、そして実力は俺以上だ!この俺が保証するんだから間違いない!!
……だがお前の持病であるPASの暴走を止めるにはどうしても城へ幽閉させるしかなかった!だからお前のその魂は決して呪うな!!呪うならこんな仕打ちをさせたこの俺を恨め!!!」
「ち……違う、違うよ兄貴!!俺は兄貴の事……」
「――銃司!!縛られた運命を覆す誇り高き魂を持て!!!そして立海の未来をお前に託すぞ――――!!!!」
「やめろ!!!!兄貴ッッ!!!!!!死ぬなあああああああああああ!!!!!!」
そして……引き金の力が強まる――!!
「頼んだぞ…………俺の、大好きな弟よ――――!!!!!」
……桜にカミングアウトした死ぬ予言の運命の話、あれは本当は…………
―――銃司が死ぬ予言だったんだ。
――――ズガアアアアアァァァァァン!!!!!
その銃声が聞こえたその刹那、額に風穴を開けた丈の最期は呆気なかった。
弟に偉そうな口を叩いた兄が、弾の1発を脳天に貫通しただけで…………
目も見開き、ただ血を床から垂れ流して倒れ、動かなくなった。
――城主としてのプライドを一気に地獄へ叩き落とした、無惨この上ない最期であった。
「……兄貴…………う、う…………」
――――うあああああああああぁぁあぁあああああぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁああああァァァァァァぁぁああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!!!!!!
―4月18日 午後23時51分 立海丈 死亡―
――――翌日。
銃司が気絶して倒れていた所を立海プレイヤーが発見し、それと同時に丈の死亡も確認された。
……蒼真は銃司を殺さなかったが、その犠牲は立海遊戯戦団にとってとてつもなく大きかった。
そして葬儀を終えて、紅蓮城の裏庭の中央には団員総出で建てた城主、丈の墓石が。
「……お前、良く裏庭を眺めてたもんな。ここなら花も太陽も良く見れる。特等席だ」
史也が墓石を見つめながら無情に呟く。
「人間ってのはちっぽけだな、あんなに大きな地位を築き上げた丈が、死んだら墓石の中なんてな」
「………………」
兄の犠牲で九死に一生を得た銃司は、魂が抜けたように途方に暮れていた。
墓にお供えをする門番の瑠璃も速やかに持ち場へと戻り、今や庭園は史也と銃司の二人のみ。
「……なぁ史也、桜は――?」
「……部屋に閉じ籠ってる、理由は言わずもがな、だ。そっとしてあげろ、丈と桜とは特別な関係だったしな」
「ゴメン…………」
「謝ることはない。お前も皆と同じく辛いだろうしな」
「違うんだよ……俺のせいで……兄貴が――!!」
「……これは丈がけじめを付けて望んだ事だ。――丈にだって欠点もあったんだ。弟である銃司には常に不器用だし、やたらに喧嘩を売ってばかりだし。
でも、丈が弟を守りたいというのは本気だったぞ。これだけは死ぬ直前まで貫き通した丈の真実なんだ。だから……兄の丈の事は嫌ってやるな………」
「…………今更すぎるだろ――?幾らなんでも言うのが遅すぎるよ……」
そして銃司はあの言葉が脳裏にフラッシュバックした……
≪――お前なんか大ッッ嫌いだ!!!!!死んじまえッッッ!!!!!!!!!!≫
これと同時に銃司の涙腺にボロボロと大粒の涙が大量に溢れてきた。そして墓石に抱きながら泣きつく。
「兄貴ィ…………ッ!!!
兄貴に大嫌いだなんて言ったの、あれ嘘だからな!?死ねなんてのもマジで言ったんじゃないからな!!?だから…………
――――――兄貴に、謝らせてくれよぉぉぉぉぉぉぉ…………ッッ!!!!!!」
死ぬ前に先に謝った兄に対し、弟も失言に対して謝れなかった事を後悔した。
心の奥底に、2度と消すことの出来ない大きな傷を負った銃司に、更なる追い討ちが……
「――ガァッ!!!?」
またしてもPASの影響による発作だ――!!
「……オイ銃司!?大丈夫か!!?」
「だ、大丈夫、だ……」
「無理するな!!早く常備薬を……」
「大丈夫――――オレハコンナニゲンキダゼェェェェェェ!!」
ハイドの面の如く狂気の面がまた呼び起こしてしまった。
「オレノアニキガクタバッテセイセイシタゼ……コレデオレハホントウノジユウニナレタンダ!!ヒャハハハハハ!!!」
だが、裏の狂気の面は気づかなかった。
≪縛られた運命を覆す誇り高き魂を持て!!!そして立海の未来をお前に託すぞ――――!!!!≫
銃司の心の底に眠っていた、覚醒の魂が目覚めることを……!!
「サァコレデ、プレイヤードモヲミナゴロシニ――――」
――黙れ、地獄に落とすぞキ◯◯イ面!!!!!
そして狂気の魂の心臓に、風穴が………
――ズドォォォォォォオオオオオン!!!!!!
「…………司、オイ返事しろ銃司!!」
「――大丈夫だ」
呼び掛ける史也に対し、銃司は何事も無いように起き上がった。
「……ったく、心配ばかりさせるな焦るだろう」
「すまない…………なぁ史也、俺のお願い聞いてくれるか?」
「……何だ?」
「兄貴がしてた城主の仕事、俺に教えてくれないか?あと俺の部屋は封印してくれ、ゲームも要らない」
「……何言ってるんだ銃司、まさか……?!」
「立海の名は長い歴史と共に築き上げたプレイヤー貴族の象徴だ。こんなところで失うわけにはいかない。
――――立海の未来は、俺が守る」
「……無茶だ。お前にはPASによる持病が…………」
「あぁ、その事なら――――
俺自身で治した」
「………………は???」
……PASの力は偉大である。
それはゲームでの能力としてでなく、その力を宿すプレイヤーの心を、精神を遮る障害でさえも打ち消す力を持つと言う。
つまり…………!!
「俺の邪魔な狂気など……今俺の手で破壊してやったわ――――!!!!」
右手にマグナムの濃紺の波動、そして左手には最強のハンドガン『パイファー』の臙脂の波動。
最後に鋭き眼光から放つ、強者の魂……!!
―4月19日 立海銃司 覚醒 そして立海遊戯戦団21代城主兼団長 即位―
次回、第51話。
桐山剣VS立海銃司、後半戦突入!
銃司が繰り出す新たなアメイジングシステムが剣を襲う!!
宿命の好敵手リベンジ、結末や如何に!!?
お楽しみに!!
そして、連載2年目突入の感謝を込めて……!!
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