第50話⑤~コンバットマグナムと銃司のPAS~
・桐山剣 HP1200:手札3枚 EG①
フォロワー:なし
・立海銃司 HP1600:手札3枚 EG②
フォロワー:なし
―――銃司が手に持つ血のように真っ赤な『S&W M19』という回転式拳銃。
これに込めた弾が先代城主の丈を殺したと言うが……その真意は弟の銃司のみが知っている。
「――このままゲームを続行させるのも味気無いな。貴様に教えてやろう、この俺が何故G-パーツを奪い戦争を引き起こした訳をな。……ただし多少長いがな」
「じゃいいや、止めとく」
「そう言うな剣、ゲームは今中断してるんだ。貴様にはそれを聞く権利と義務がある」
(めんどくさ、俺ゲームしたいんだけど……)
いや、剣が渋るのも分かる。回想入るとこの作品長いんだから……また分割して3日後に待たねば行けな――――
「余計な心配は無用だMr.G、今回の更新日はゲーム・ウォーリアー1周年記念で、連続更新で一気に回想やる予定だから尺を気にする必要はない」
いや、そーゆー問題じゃないの!!!!
……ま、良いや回想やるなら早くやっちゃって。
「宜しい。――ところで剣、貴様も桜から我々の内情は少しは聞きかじっているようだが……何処まで知っている?」
「せやな……お前の兄貴の丈って人がプレイヤーに殺されたって所くらい」
「……桜らしいな。まぁ確かにこの銃で引き金を引いたのはプレイヤーに相違ない。――だがその原因を作ったのは間違いなく俺だ」
「……どういうことや?」
「……プレイヤーもとい俺達ゲーム戦士は生を受けると共に『PAS』という魂の潜在能力を受け持つ。俺もその特異な力を持って生まれ、そしてPASを覚醒させた。
――その能力の名は【MAGNUM】。最強の銃の名を持つPASは一撃であらゆるターゲットを破壊する能力を持つ」
◎PAS【マグナム】
・タイプ:アーティファクト/ウェポン
・プレイヤー:立海 銃司
・能力:立海遊戯戦団当代城主・立海銃司が持つ能力。
『マグナム』の名の通り、直感で相手の急所を見抜き、1発でターゲットを破壊されてしまう強力な力を持つ武器型PASだ。
立海の掟によると、代々銃のPASを授けられた者のみが紅蓮城を受け継ぎ王となるしきたりである!!
「そうか……お前と初めて会ったときにやったシューティングでの凄まじい轟音、そして威力はそのPASの力があってこそなんだな」
銃司と初めて勝負に挑んだ『ラピッドファイアー・スター』でのとてつもない一撃を目の当たりにしていた剣も、ようやく合点がいったようだ。
「……だが、その強大な力ゆえに当然デメリットも存在する。
ゲームにしかその能力は使えない上、マグナムの1発がとてつもなく精神に衝撃を受けるために、そのPASの維持が出来ない事。
下手をすれば精神崩壊もままならない、手痛いデメリットだ」
しかしPASの力は使い手の成長しだいでは使い方を生かす事が出来るが、銃司のような癖の強い能力の場合はそうはいかなかったようだ。
「――俺のこの両腕を見てみろ剣」
銃司は貴族の服を脱ぎ捨て、ノースリーブベストの状態で剣に腕を見せた。
「!!? ――お前……両腕ボロボロじゃねぇか!?」
両腕とも黒いアザや血管が切れて抉られたような惨たらしい傷痕が残っていた。多分その傷は一生消えることは無いだろう。
「貴族の俺が無様な腕だろう? だがその傷こそ俺の内面だ。無意識に湧き出る殺意と闘争本能によって、ボロボロに崩れ落ちた精神を表した【狂気】の象徴!!
故に俺は兄によって10年以上もこの紅蓮城に幽閉され、一度もゲームワールドの外を出たことはなかった」
「バスター・キャッスルに幽閉……!?? そんな事したら俺だって頭おかしくなるぜ……!!」
剣はカミングアウトし続ける銃司の過去に絶句するしかなかった。それは剣が受けた心の痛みよりも、想像を遥かに越えた壮絶なものであったからだ。
「まぁ俺は元々引きこもり体質でな、大抵城の中でゲームするくらいで十分だった」
え、それってニー……(咳払い)、インドア体質という事なのか。
「だが俺が成長するうちに外に出たいという渇望と、何故兄が俺を幽閉させたのかという疑問と不安が募ってきた。――当然の事だろう。俺は城の外で暴れ回る兄の事が、羨ましかったからな……!!」
■■■■■■
――――それは今から3年前、銃司がまだ13歳の頃であった。
長いこと紅蓮城に幽閉されていた銃司は、蓄積された鬱憤と兄に対する不満が遂に爆発し、生まれて初めて兄弟喧嘩をした事が悲劇の始まりとなった。
「――ふざけんなよこのクソ兄貴がッッ!!!!!」
城内の筐体ゲームを思い切り蹴りあげて損壊させながら憤る銃司。
「申し訳ありません銃司様……、丈様の御命令ですので……」
そしてそれをなだめるのは当時12歳の時実桜である。
「お前もそれしか言わねぇじゃないか! 何だよ、兄貴ばっか城離れてゲームするくせに、俺じゃダメなのかよ!? あぁ!!? ――俺だっていい加減外出たいんだよ!!!!」
長年兄によって抑圧された感情が、この日ばかりは我慢の限界に達し、非行寸前までやさぐれていた銃司であった。
「……こればかりは、本当に申し訳ありません」
桜も城主の丈の命令を優先し、銃司に深々と頭を下げるしか出来なかった。それを銃司は無言で怒りのボルテージを上げるのみ。
『――騒がしいと思ったら……またお前かバカ銃司』
ちょうど外から丈が帰って来て、この騒動を冷ややかな目で見下していた。
(げ、クソ兄貴……)
銃司も主権が絶対的な兄に対しては頭が上がらなかった。
「俺が怖くて桜に頼み込みとは、迷惑にも程がある。――てか桜も言ってあるだろう? こいつには遠慮ゼロでストレートに言ってやれって」
「し、しかし……申し訳ありません」
桜も反論したかったが、恩人である城主には弟同様逆らえなかった。
「……兄貴には関係ねぇだろ。俺は兄貴の枷じゃねぇし、俺の問題なんだよ」
「バカ、弟の問題は兄である俺の問題なんだよ。まさか13にもなって自分の持病の事自覚してないとか言わないよな?」
銃司の持病というのは、前述でも言ったようにPASの負荷の事である。
まだ銃司も年齢的に青い故にPASの強大な力を制御出来ずに暴走しやすい傾向にあった。
そう、これが原因で10年以上もこの紅蓮城で幽閉せざるを得ないと丈が判断したのだ。
「お前のPASの力は余りにも強力で危険すぎる。仮に外に出てプレイヤーにゲームを挑んでみろ、そのパワーでプレイヤーを殺めて立海の面前が立たなくなるんだぞ!?」
「知るか! 兄貴が言っても説得力が無いんだよ!! この前もオフシャンプーのプレイヤーに喧嘩打って半殺しにしたって聞いたぞ。兄貴のがよっぽど殺しそうな事してんじゃねぇか!!!」
……何ですか、オフシャンプーって??
「……もしかしてオフィシャルプレイヤーの事か?」
「どっちでも良いだろ」
「あれは我が立海の家名保全だ。我々を愚弄するプレイヤーに対する花火的な火遊びって所だ。
――だがお前の場合は加減が出来てない。PASを制御できないお前にとっては遊びであろうと、それはガソリンでキャンプファイアをやるほど危険な行為に等しい」
……その例えはめっちゃ分かりやすい。そして良い子は真似しないでね!!
「……んな事分かってんだよ……でも兄貴ばっかり、俺だって、俺だって……!!!」
「いや、分かってないな。こんなことで頭に血が昇る様じゃ到底無理だ。とにかく俺が良いって言うまで外出さないからな、そのつもりでいろ」
すると銃司は溜めていた怒りが急に収まり、ふて腐れていた。
「……結局俺は兄貴の御荷物にしか見えてないんだ。立海の面子ばかり気にして……、俺みたいな情緒不安定な弟なんか邪魔で仕方ねぇんだろ――?」
「な、オイ……ちょっと待――」
「だってそうだろ!? 俺よりも年下の桜や、ダチの史也ばっかり気にして!! 俺の事なんか気にもかけてねぇだろ!!? そうなんだろ!!!?」
次第に銃司は丈に食って掛かるように迫ってくる。それを桜が止めに掛かる。
「じゅ、銃司様! 落ち着いて!!」
「待て、桜。俺が説得する。―――落ち着いて聞け銃司、お前は俺と同じ立海の名を持つプレイヤーだ。けどな……」
「立海の事なんかどうだって良いんだよ俺はッッッ!!!!!!!」
「何を――――!!!!」
銃司の発言に怒りを買った丈は銃司と殴る蹴るの大喧嘩に勃発した。
桜はおろか、他の立海プレイヤーも止めに入り、3分後ようやく落ち着いた、と思いきや……
「クソ兄貴なんか…………お前なんか大ッッ嫌いだ!!!!! 死んじまえッッッ!!!!!!!!!!」
怒りで我を忘れた銃司が勢いに任せてドアを乱暴に閉めながら部屋を出ていった。
「………………アイツめ――」
銃司に殴られ傷だらけの丈もようやく落ち着いた所だ。
「――今日は随分厳しいんだな丈。冷静なお前にしては珍しい」
「なんだ史也か。資料室から出るなんてお前こそ珍しいな」
「周り見てみろ、野次馬達が皆お前の喧嘩を止めに来たんだぞ、それに桜も。――何かあったのか?」
丈が辺りを見渡すとメイドプレイヤーが束になって喧嘩を止めに来たのを改めて気付いた。
「……いや、別に。至って普通な日常だ、そうだろ? 桜」
「え、えぇ……………」
桜は何も言えなかった。理由はお察しの通り。
「……そうか、何かまた弟さんが地下の自分の部屋に戻ってったぞ?」
「丁度良い機会だ。史也、悪いがこの城のセキュリティを更に厳重にしてくれ。銃司がこの城を絶対脱出させないようにな」
「……………………あぁ、分かった」
◇◇◇
――紅蓮城地下の銃司の部屋。その周辺には数多くのゲームハード機とゲームソフトの棚、一般のプレイヤーと変わらないごく普通の部屋である。
「ちくしょう……!! 毎度の事ながら偉ぶりやがって、あのクソ兄貴が――!!!」
悔しさの余りに嗚咽が入り雑じる程に泣きじゃくる銃司。
「……もう、我慢ならねぇ。あっちがその気なら俺にだって考えがある――!!」
銃司は部屋のゲームのポスターの裏に隠しておいた抜け穴を露に、そこへ潜り込むように入り込んだ。
長年兄や他のプレイヤー達の目を欺き、城の外まで掘り続けていた穴である。
残りは城壁の内側にあるゲーム式のセキュリティデータを解除させれば銃司は晴れて自由になる。
そして…………
―――――ズドォォォォォォン!!!!
~4月18日午後20時17分、立海銃司 脱走~
本日を持ちまして、『極限遊戯戦記 ゲーム・ウォーリアー』は連載一周年を迎えました!!
読者の皆様からの熱い応援、心から感謝します!!
2年目も引き続き応援を宜しくお願いします!!!




