EX STAGE1-②~オセロと盤上連合~
何の因果でスゴロクロードのワープの影響から、大人のギャンブルに水を差さなければいけないのか。剣は後悔の念を強く抱いた。
今なら10分は、あの設備に文句を垂れ流したい所だが、それどころではない。
巨大な盤上を囲む、極道一直線な男たちに四方八方から睨まれているからだ。
「ふわぁ~……あれ、私何してたんだろ―――ッッ!!!???」
双六の『一回休み』効果で熟睡していたみのり。
爽やかな目覚めも、周辺の男たちの鋭い目付きを見た瞬間、一気に現実に引き戻される。血の気も急速冷凍ものと言わんばかりの冷えっぷりだ。
「な、な、な、ナ……何がどうなってるの、剣くん!!?」
「遺書書いておけば良かった……」
この修羅場を知らずに狼狽えるみのり、そして威圧に耐えきれず目に涙を浮かべる剣。人生色々、感情も色々である。
「さっきから何を黙りこくっとんのじゃガキ共が!! ワシら連合のシマに土足で入るとぁ、どう落とし前つける気じゃ!! あ゛ぁ!!?」
連合? ショバ!? ホンマモンやないか!!? と剣は思ったが、口から漏れるのは溜息ばかり。反論する勇気など湧いてこない。それでも精一杯、絞り出すようなカスカスの声で説明を試みる。
「…………ぁの、その……スゴロクロードが、ですね……」
「何や!? 言い訳すんならもっと声出せ声を!!」
精一杯口を開いても、怒号にかき消される始末。何を答えてもタダでは済まないと、この時彼は悟った。
そして、プツンと理性が切れた。
「―――エリアのスゴロクがねぇッ!!?『ゲームのどっかにワープ』するとかアホみたいなマス付けやがってぇ!! んで気が付いたらこんな所に飛ばされて、こっちもえらい迷惑ですわ!! こんな殺生な仕末、どない思いまっかあああああぁぁぁッッ!!!??」
(剣くんが壊れた……)
ヤケクソになった剣の剣幕に、みのりも強面たちも唖然とする。と、そこへ――。
「もうエエやろ! はよお前ら、その子らから離れんかい!!」
「「へ、へい! 親分!!」」
遠くから響いた年配の男性の覇気ある声。強面一同は即座に剣たちから離れ、地に片膝を突いて跪いた。まさに典型的な「親分」の登場シーンである。
「全く、寝耳に水なことが起きたくらいで、学生相手にギャーギャー威嚇すんなやボケナスが――!!」
黒のスーツよりも目立つスキンヘッドに、物凄いガタイ。現代の組長顔負けの威圧感。貫録プレミア級のオーラを放つその男が、剣たちに歩み寄る。剣とみのりは震えが止まらず、互いに抱き合って覚悟を決めた。――ところが。
「いやぁ、済まなかったな若ぇの! うちの者が粗相をしちまったようで!! あのスゴロクロードにゃ程々困っとったんよ、毎回君らみたいなプレイヤーが水を差すもんやから」
「「は、はぁ………?」」
剣とみのりは呆気に取られた。落とし前をつけられるかと思いきや、親分たる男は豪快に笑いながら二人に詫びを入れたのだ。
「いや、な、何かこちらこそすみません。そちらの縄張りに勝手に入っちゃって……」
(ちょっ、剣くん!?)
「縄張り? んな野蛮なことはせぇへんよ。うちらのグループは【盤上遊戯愛好連合協会】、略して『盤連会』で通っとる。ワシがその盤長の伴場萬代(71)じゃ!」
盤上の盤長? よく分からないが、どうやら「そっち」のグループではなさそうで一安心だ。
「それで、そのばんばん……じゃなくて、盤連会って普段は何をしてるんですか?」
(お、オイ、みのり!?)
事情が分かった途端、躊躇なく質問するみのり。この胆力は案外バカにできない。
「名前の通り盤上の遊戯、つまりボードゲームを愛好するグループや。紀元前数千年前から存在するボードゲームの歴史、その素晴らしさを後世に語り継ぐために作られた連合……と言っても、実態は地域ボランティアみたいなもんやがな」
現実では、紀元前三五〇〇年頃のエジプト遺跡から発見された『セネト』を始祖に、チェス、オセロ、囲碁、バックギャモンなど、様々なゲームが世に出されてきた。
彼ら盤連会の目的は、ボードゲームの素晴らしさを日本各地、ひいては世界各国に伝えていくことにある。
超次元ゲーム時代に入り、最先端のゲームばかりが注目される傾向にあることから、盤長の伴場が名乗りを上げて連合を作り上げたのだ。
しかし、なぜか強面でゴツい若者ばかりが集まるため、極道の方だと誤解されやすいのだという。
(あんな威嚇されりゃ、誰だって間違えるわな)
「『ボードゲームは古い』とか『ワンパターン』だとかいう戯言も聞くが、そんなものは頭の固いプレイヤーの決まり文句じゃ!! ボードゲームも時代と共に進化するということを世に知らしめるため、このエリアで特訓を積んでいた訳じゃ」
「おぉ~☆(パチパチ)」
みのりは盤連会の壮大な目標に興味津々で、目を輝かせて拍手を送る。
その話を傍らで聞いていた剣も、彼らが悪人ではないと知って安心したのか、プレイヤーとしての習慣から言葉を投げかけた。
「………じゃあ、ボードゲームの普及のために一肌脱ぎますよ。誰か俺と勝負させてください! きっと有意義なゲームができると思いますから!」
「おぉ? 急に大きく出たな若造。そこまで豪語するってことは、相当腕に自信があるんか?」
「まぁ、それなりに! 俺は『マスターオブプレイヤー』を目指す男、桐山剣ですから!!」
(ん、桐山………? まさか!?)
剣の名字を聞いた途端、伴場は何かに感づいたような反応を見せた。
「あい分かった! そこまで言うのなら、勝負に付き合ってもらうで。ワシらの足元にある、この六十四マスのフィールドで繰り広げる――進化したオセロをな!!!」
「………進化したオセロ?」
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PLAY GAME No.5
【エクストリーム・オセロ ―EXTREME OTHELLO―】
・ジャンル:ボードゲーム
・プレイヤーレベル:20
【概要】
黒と白の石を担当する二人のプレイヤーが、相手の石を挟んで自分の色に変えていき、最終的な盤面の石の数を競う。ルール自体は誰もが知る伝統的なボードゲームである。
しかし、通常と異なるのは使用する「石」の性能にある。
各自が持つ三十二個の石のうち、五個は【スペシャルストーン】(赤・青・黄などの特殊色)となっている。
このスペシャルストーンを使用することで、取った石の強奪や盤面の天地をひっくり返すような凄まじい効果で、戦況に大胆な変化を起こすことが出来る。
このスペシャルストーンの使い道が勝敗を大きく分ける、まさに『進化したオセロ』である。
◆―――――――――――――――――――――◆
(そしてその進化オセロをやるのが、このでっけぇフィールドって訳か――!)
そう、強面集団を囲った巨大な盤はエクストリームオセロの為のフィールド。
このフィールドを舞台に、法則をも凌駕するオセロのタイマン勝負が幕を開く……!!
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