第5話①~ゲーミングチーム・シャッフル~
立海銃司とのバトルに敗れた桐山剣は、河合みのりを改めて『親友』として認め最強のプレイヤーを共に目指す決意を固めた!
今こそ、二人の果てしない挑戦を示すゲームチームの旗を掲げるのだ!!
第5話へゲート・オープン!!!
【ゲーム超次元時代】を迎えてから約五十年。超次元ゲーム西暦0050年。
舞台は日本、関西の中核・大阪。この街は国内でもトップクラスのプレイヤー数を誇る激戦区だ。
そんな大阪の中心、通天閣を望む浪速区の下町。新生活の風吹く四月の朝、女子高校生の元気な声が響き渡る。
「行ってきま~す!!」
彼女の名前は河合みのり。私立『天童学苑高等学校』の1年生だ。ミディアムヘアを揺らし、純粋無垢な笑顔を振りまく彼女の物語は、ここから加速していく。
――さて、語り部である私Mr.Gが少しばかり状況を整理しよう。
かつて、関東からの黒船ゲーミングチーム『立海遊戯戦団』のリーダー・立海銃司に完膚なきまでに打ちのめされた少年がいた。その名は桐山剣。
絶望の淵にいた彼は、河合みのりと出会い、再びゲームへの情熱を取り戻した。そして今日、新たな一歩を踏み出す。
日曜日。
みのりは近所の公園で剣と待ち合わせていた。そこには『ゲームワールドオンライン』への入り口――黒いモノリスが鎮座している。
「――剣くん! お待たせ♪」
「お! 来たなみのり。俺も今来たところだ」
剣は少しガサツな面もあるが、約束には律儀な男だ。
「じゃ、早速行きましょうよ!」
「あぁ。まずはいつもの『プレイヤー・バザール』だ」
二人はモノリスにプレイギアをかざし、ログイン認証を行う。今日のゲートコードは――『しんでしまうとはなにごとだ!』。
「物騒なコードね……」
みのりが呆れ顔で呟く間に、空間が歪み、デジタル粒子が舞い上がる。
「「ゲート・オープン!」」
二人の身体は光となり、プレイヤー達の登竜門『プレイヤー・バザール』へとダイブした。
「うわぁ、日曜日だからすごい人!」
「休みにゃまずはここに来るのが定石だからな。……さて、行くか」
今日ここに来た目的はただ一つ。現実と仮想世界の両方で活動する『ゲーミングチーム』を結成するためだ。
「ねぇ剣くん。私達二人だけでチームって作れるの?」
「『二人以上』が最低条件や。今は俺とみのりだけだが、いずれは最高のメンバーを増やすつもりやぞ」
「じゃあ、私みたいなゲーム好きの女の子も来るかな!?」
「そやな。ま、みのりみたいに下手っぴじゃなきゃえぇけど!」
「ちょっ、ひどーい!」
剣が笑う。その瞳には、かつての闇を振り払ったような輝きが宿っていた。
二人が向かったのは、エリアの端に佇む木造建築の店。その名も――。
「『アディウルの酒場』?」
「そ。情報交換の場だが、チーム登録の公式カウンターもあるんだ」
スイングドアを潜り、二人は受付へと向かった。
「すみません、新規チームの登録をお願いします」
剣が声をかけるが、カウンターの店員は無愛想にタブレットを差し出す。
「……ID確認するからプレイギア出して。あと、ここにリーダー名、メンバー名、チーム名、特徴を書いて」
事務的な手続きが進む。リーダーは桐山剣。メンバーは河合みのり。チームの特徴は――迷わず『本気型』を選択した。
そして、最後の一欄。
「剣くん、チームの名前はどうするの?」
「……もう決めてある」
剣が書き込んだ単語は――『SHUFFLE』。
「シャッフル……。確か、剣くんのおじいさんのチームも……」
「せや、『浪速シャッフル騎士団』。おじいちゃんが築いた伝説を、ただの昔話で終わらせたくないんや。これは『継承』や」
剣の言葉に力がこもる。
「俺はあの人の孫や。勝負運もセンスも、全部叩き込まれた。どん底にいた俺を見守ってくれた恩を、ゲームで返したい。今は二人だけやけど、いつか最強のチームにしてやる。だから『シャッフル』なんや!」
祖父の意志を継ぎ、過去の自分と決別する。その決意を胸に、剣はカウンターへ申請に向かった。
だが、その道すがら。酒場のテーブルから漏れ聞こえる会話が、剣の足を止めた。
「――聞いたか? 昨日、あの『立海遊戯戦団』が大阪に来てたらしいぜ」
「マジかよ!? 東京のAランクチームが何でまた……」
「大阪中のゲーセンを制覇して、店の経営権まで奪っていったって噂だ。まさに地上げ屋だな」
「そういや、なまくら刀で銃司に挑んでボコられたバカもいたらしいぜ」
「ハハッ、命知らずな奴もいるもんだ!」
剣の拳が震える。嘲笑の渦を抜け、彼は無言で手続きを終えた。
「……あ、剣くんおかえり。……って、どうしたの?」
戻ってきた剣の顔は、明らかに暗く沈んでいた。
「……みのり。約束してほしいことがある」
「?」
「これから前線に立つ上で、絶対にやっちゃいけないことがある。――ゲームに、絶対に溺れるな」
剣の声は、絞り出すような悲鳴に似ていた。
「俺の親父は、ゲームに狂った。仕事の金も全部つぎ込んで、最後には自分の命まで賭けやがった。死んじゃいねぇが、欲と闘志を使い果たして廃人同然や。おふくろは心労で倒れて別居中……家庭を壊したのは、間違いなくゲームやったんや!」
みのりは息を呑んだ。剣が抱えていたのは、敗北の悔しさだけではなかったのだ。
「ゲームは楽しいだけじゃない。溺れれば心を狂わせる。優しい心も、純粋な心も、非情に変えてしまうんだ……!」
項垂れる剣。その震える手を、みのりは優しく、力強く包み込んだ。
「私は絶対に溺れない。そして、剣くんも大丈夫よ」
「みのり……」
「だって貴方は、人としての弱さを知っているもの。傷ついて、それでも強くなろうとしている貴方なら大丈夫。――ゲームの強さだけが正義じゃないって、このチームで証明しようよ!」
その言葉は、迷える騎士を導く一筋の光だった。剣の瞳に、再び確かな火が灯る。
「……へっ、みのりに励まされちゃったな。だったらとことんやってやろうぜ! このゲーム時代を、俺たちの手で変えてやる!」
「おーっ!!」
二人の手が重なり、熱い誓いが交わされた。
ゲーミングチーム『シャッフル』。この瞬間、伝説の第二章が幕を開けた。
ふと見上げた酒場のモニターには、最新のランキングが映し出されている。
1位――『立海遊戯戦団』。
(……銃司、見てろよ。俺は必ず這い上がって、お前らのいるフィールドまで行く。俺とみのりの、『シャッフル』の旗と共に!)
目指すは最強の称号『マスターオブプレイヤー』。
桐山剣の、本当の戦いはここから始まる!




