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【GAMEWORLD ONLINE】極限遊戯戦記 ゲームウォーリアー  作者: Kazu―慶―
第1章【シャッフル・オールスターズ編】

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第3話②~凡人と秀才~

「よーこそ、桐山君。俺達eスポーツ部の本拠地へ」




 ゲームに長けた者は、同じく強き者に惹かれる宿命か。ゲームワールドオンラインでの桐山剣の活躍を目の当たりにした高木――天童学苑高等学校3年、eスポーツ部キャプテン――は、彼を部室へと招き入れた。




(ホンマ先輩背ぇデカいわ。頭ぶつけそうやもん)




 ホントはバスケ部じゃないの?という野暮なツッコミは伏せといた剣。というのも、招待という名の挑戦状を叩きつけられては、フレンドリーな触れ合いなどあり得ない。




「準備して差し上げな。俺のと、ゲストの筐体の立ち上げだ」


「「はっ!」」




 軍隊のような規律で、後輩たちが淡々と向かい合うゲーミングPCの電源を入れていく。

 片や、最新のゲーミングチェアからデスクまで完璧に整えられた高木の席。対して、立ち上げにすら時間がかかる古ぼけたPCが用意された剣の席。露骨な格差に、剣はあきれて言葉を失う。




「な、何をする気だ、高木?」


「ちょっと遊びに付き合うだけですよ先生。同じ高校でゲームにイキってる後輩君に《《制裁》》をね……!」


「制裁!?」




 この高木、桐山剣を歓迎するつもりは毛頭なし。


 学校近所の嫌われ者だった『伊火様』をコテンパンにした剣に妬みにも似た感情を抱いていた。この高校で一番ゲームに強く、FPS界でもトップクラスを誇る強さを持つ自分。それ以外の者が注目を浴びる事を何よりも嫌う性質の高木。




 気が付けば、剣の周りには高木の後輩達によって囲まれていた。逃げる事は不可。そして挑戦するゲームに敗れたものなら、見せしめとしてリンチが待つという魂胆か。既に剣本人も、下らない妬みの標的になった事を悟り、怠惰なため息を吐く。




「何をアホな事を! 素人相手にそんな横暴な!!」


「―――っせぇな……!」




 おっと、高木の理性を逆撫でしたか。南澤先生のズボンポケットに手を忍ばせて取り出したのは、先生の万能スマホ・プレイギア。




「俺らの心配より、先生のプレイギアの心配でもしてろよ!!」




 ―――ガチャーーーン!!!




「ッッ!!」




 この行為、横暴極まりなし! 先生のプレイギアを、二階の部室の窓ガラスをぶち破って叩き落した!!


 間もなくして後から響くは、液晶の割れるような甲高くも嫌な音。剣はこの行為を見せられて唖然。その様をFPSによって人情が消えた後輩共はバカ笑い。




 桐山剣のゲームに対する(ハート)は、ブチギレた……!!




「ねぇ高木先輩、どーせ俺が負ければフルボッコするんでしょ? 殴る蹴るなんてしねぇで………






 ―――テメーの手一本賭けるつもりで、真剣勝負でやろうや!!!」




 命知らずか桐山剣! 理不尽な挑戦に乗るだけに飽き足らず、ヤクザのような賭けまで持ち込んだ! それ程までに高木の恩師である先生への軽率な態度が、ケンカを吹っ掛ける引き金を引かせた。最早彼らを止めるものは誰も居ない!!




 今回のゲームはサバイバルバトル型FPS。ゲーミングパソコンにキーボードと、ゲームワールドとは一線を画した普通のeスポーツだが、その最先端技術は我々が慣れ親しむものと遥かにスケールが異なる。




 専用のVRヘッドギアを装着し、五感全てが本当に戦場で戦ってるかのように魅せる事も可能になった。ダメージの衝撃も、移動感覚もリアルそのもの。そのトップクラスを飾るのが高木なのだ。




(ぬ~! ゲームやりそうなのは分かるけど、画面が見えないよ〜〜!!)




 こちらは教室の扉ガラスから野次馬根性で覗き見するみのりちゃん。遠目のモニターでプレイしている為、その様相は殆ど見えてません。残念。




 FPSの準備も整い、いざ戦場へ……と思いましたが早とちり。その舞台はオンラインではなく、筐体同士で繋げたグループ内のマッチ。


 それも舞台は、荒れ果てた荒野に無数の武器や弾丸などが備わった『射撃訓練場』であった。




「オンラインじゃ100人一斉に戦わなければいけないからね。一対一の勝負をするにはこれしかない。了承してくれ」


「……別に構わないっすよ」




 すると、VRヘッドギアを装着して早速操作する高木が手にしたのは武器。サブマシンガン・SS−1000。1秒に27発の弾を放つ超高速軽量型マシンガン。主に近・中距離で力を発揮する武器を手に、彼は練習用のダミーロボットを1体セットさせる。




「桐山君。FPSにおいて、イチバン大事な要素が何か分かるかね?」




 そう言って高木、ダミーロボットを起動させ、ハイスピードに移動・回避するモードに変換。チョコマカと動き回る標的を、1.3mの距離を保ってサブマシンガンを構える。




 〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕〔15〕―――バシュッ!!




 疾風の如く、ダミーロボットに対するダメージ数値のエフェクトがなだれ込むように表記される。


 サブマシンガンの弾倉から込められた弾丸27発全て、ダミーロボットに被弾し、火柱を上げて破壊された。ノックダウンの証である。




「これが俺の力の全てだ。装填された弾を零さず、全弾を相手に打ち込むワンマガジン・キル! ―――俺の【エイム】の成す実力だ!!」




 ★【エイム】★


 エイム(aim)とは、もともと英語で『狙う』という意味の言葉。 FPS、TPSゲームでは敵に武器の「照準を合わせる」という意味で用いられる。バトル中に相手を狙い打つために中央に表示されている丸い照準を確実に合わせ、狙いを定める。


 ※G−バイブル『百戦錬磨ガンナー・育成記』より抜粋。




「さぁ、桐山君も武器を一つ選びたまえ。まぁ何選ぼうが、蜂の巣になるだろうが」


「……どうですかね」




 そう言われて剣も、既に決めていた超長身のスナイパーライフルらしきものを装備し、高木の面前まで操作する。




「……スタートの合図をくれ」


「はい! ゲーム始めええええ!!」




 後輩の甲高いコールと共に、颯爽と剣の前に突撃する高木。近距離である程サブマシンガンの被弾率も高くなる武器では、敵への突進も常套手段。対して剣は突っ込む敵に対して背中は見せず、不動のまま!




「や、止めろおおおお高木!!」


「まぁまぁ先生落ち着いてぇ〜」




 悪ふざけ半分の後輩達は、ゲームを中止するよう促す南澤先生を制止する。


 エイムは完璧、俺の瞬発力は最強だ。俺の能力は凡人どもを悠々と超越する!!




 ―――そんな絶対的な自信と共に撃ち放つ、サブマシンガンの弾丸雨!!!




「…………!!?」




 …………が、ダメージエフェクトは一切表記されてない!? 桐山剣にはノーダメージだ!!




「それがワンマガキル? 「ヤンマガでシコる」の言い間違いとちゃいます?」




 それは高校生にしては低カロリーなオカズですな。……って何言わせんですか!!




「ちぃっ……!!」




 ここで高木、一旦空になった弾倉から弾を補給するために距離を置いて、岩陰に隠れてのリロード。


 全弾ミスは気のせいだ。反動の計算をするのを忘れたんだ。そう言い聞かせるように高木は再び剣に向かって突撃。


 剣の胴体目掛けて、サブマシンガンで狙いをつけるが……銃を撃つ高木は刹那にとんでもないものを見てしまった。




(……んなアホな!? 随一の掃射速度を誇るSS−1000の弾を全部見切ってるのか、アイツは!!?)




 弾丸の雨を、まるで人を横切り素通りするかのようにお気楽ながらも避け切る剣。たった一秒の攻撃でかすり傷をも負わせない。彼こそが人間を凌駕する瞬発力の持ち主でありましょうか!?




「ふざけんなテメェ!! ぶっ殺してやる!!!」




 ああっと!? エイム完璧主義の高木がキレた!! リロードからの連射は先程とは打って変わってエイムガン無視の暴走掃射だ! もうこれは剣に一発でもダメージを負わせたい高木の我を忘れた怒りか!




「オラァ死ね死ね死ねやゴラァ!!! テメェみたいな生意気な野郎が、頭ぶち抜かれて死ねぇぇ!!!!」




 最早eスポーツプレイヤーとは程遠い罵詈雑言。こんな奴がトップになっていると思うと反吐が出てきたか、不潔なものを見るように舌出しての皮肉を放つ剣。




「………この情緒不安定が。クールな先輩が一度や二度敵を仕留められへんからってブチギレてアホか、多重人格者か!」


 だがそんな皮肉も耳に入らない高木の猛攻は止まらない。




「どうした桐山くぅぅん? 俺にビビってんのかぁ? 逃げても無駄なんだよぉ、引き金は引く時ぐらい躊躇うもんじゃねぇぞおおおおおおお」




「……そうっすか」




 乱射する高木に急接近する剣、胴長のスナイパーライフルを高木の額に突き付けて、右手で湾曲した銃爪を後ろに力を入れる……!!






 ―――BOOOOOOOOM!!!!!!!




 〘KNOCK DOWN!!〙




「頭吹っ飛ばすアドバイス、ありがとよ。先輩☆」


 その先輩の頭を吹っ飛ばしたのは貴方ですよ。剣さん。






 勿論やられたのは高木がコントロールする分身。しかし狂気も覚めるような会心の一撃を食らわれた高木本人は、ゲームが終わっても尚腑抜けた様子で放心状態だ。


 そして剣も、ヘッドギアを外して高木の元に近寄れば、したり顔の中に物凄い殺気あり……!




「どうすか、凡人と舐めてた相手に一発で仕留められた気分は?」


「ひ、ひぃぃいッッ!!?」




 なんともはや、剣の強烈な倍返しを食らわれた先輩は完全に腰を抜かしてます。情けないですねぇ。




「ゲームの世界じゃ、アンタの理想とはかけ離れた世界がある。たかがFPSでトップを取って粋がってる奴なんか前菜感覚で喰われるほどに。




 ―――いっぱしの【ゲームウォーリアー】を気取るなんざ100年早ぇんだよ、クソボケェ」




 弱腰と化した弱者を喰らう野獣の眼で威嚇しつつ、剣は高木の右手の指を、あらぬ方向へ持っていってへし折ろうとするが……


 その剣の手首を掴む者あり。南澤先生のストップコールだ。




「もういい、もう許してやってくれ。桐山君」


 そう言われた剣は殺気を解き、高木の手を離してのしたり笑い。




「高木はどうしようもないダボだが……私が3年間監督して目指してきた頂点を掴む夢がある。助けてもらって悪いが……eスポーツ部は、私の夢でもあるんだ……!」




 それを聞いた高木はまたしても放心。それは先生がそれだけ自分に期待を寄せていた事と、自信過剰だった浅はかさを身をもって思い知らされた故のものだった。


 そんな彼に剣は、容赦なく胸ぐらを掴みながらの意地悪くも満身の笑みが。




「良い先生じゃないすかぁ。アンタが優勝したら、その賞金で先生に最新型のプレイギア買ってやんな! 契約もアンタが請負で!」




 かくして、喧嘩を吹っかけられた桐山剣のざまぁな倍返しゲームは終わった。


 キレはしたが終われば上機嫌の剣は部室を出れば、奥の扉の前でずっと覗き見していたみのりに近付いた。




「さっきから何しとんねん、俺の跡付けて」


「……あはは……バレちゃってた♡」




 ◇◇◇




 ――日は夕暮れ、天童学苑高校を下校する剣の帰り道にも茜色に染まる頃。


 ここ大阪・浪速区は最先端の技術が行き交う近未来においても古き良きを忘れず、下町風情漂う賑やかな町。


 中途半端な舗装が目立つ道路に、一台車が通るのに精一杯な細道を我が物顔で真ん中を歩く剣……と、もう一人。




「……何でまた俺に付いてくるん?」


 デジャヴな展開に例のヒロイン。部室の覗きに飽き足らず、今度は堂々と剣の後ろに付いていく河合みのり。




「だって、まだ剣くんと友達になってないんだもん」


「理由になってねぇよ。こんな俺よりも他のイケメン男子をダチにすりゃえぇやん」


「私は剣くんとじゃなきゃ嫌なの! それと何なのよ、最強チームの『シャッフル騎士団』キャプテンの孫って」




 強気かつわがまま、それでいて質問もされては流石の剣の顔も一気にしわ寄せる。




「……『シャッフル騎士団』はこの大阪で名を馳せたゲームの常勝チームの名や。そのキャプテンが俺のおじいちゃんだったってだけ。もう50年前の話やけどな。けど俺とおじいちゃんとは関係ないやろ! えぇからはよ家帰れ!!」




「嫌よ! 今日こそは友達になって貰うんだから!! それに家今日もお母さん帰り遅いし、やること無いのよ! しばらく剣くんの家におじゃましますからね!!」


 強気な性格に強引な友達交渉。女子にはキレないという暗黙の信念を持つ剣もこれには怒っちゃった。




「はぁ?! 何勝手な事決めとんのじゃお前! いいからはよ帰れや!!」


「あっ、また『お前』って言った! もう決めた、私絶対剣くんの家行くもん!!」




「帰れ!!!」


「嫌ッ!!!!」


「帰れッッ!!!!!」






「―――何騒いどんねんな、剣?」


 二人の口喧嘩に、ガラッと玄関を開けて現れた老人が間に口を挟む。




「あ、おじいちゃん……」




 (おじいちゃん? って事は、この人が桐山矛玄(きりやまむげん)さん……?)




 桐山矛玄(69)。桐山剣の祖父にして、超次元ゲーム時代黎明期を支えたゲーム戦士のレジェンド。




 彼とみのりの出会いは、またしても新しいゲームへの誘いを呼ぶ事になるのでした……!

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