プロローグ ~俺たちのゲームとの出逢い~
【GAME WARRIOR・BEGINS WARRIORS】
LORDING……CONNECTED!▽
―――HELLO,PLAYER! WELCOME TO ≪GAMEWORLD ONLINE≫!!
―――俺が初めてゲームをやった時?
せやなぁ、あれは俺が五歳くらいの時かな。
家にあったトランプがきっかけやった。
★
俺が生まれたのは、ゲームが世界を揺るがすとんでもない時代――人はそこを【超次元ゲーム時代】と呼んでいた。
ゲーム好きの世界政府の重鎮が、電脳異世界ネットワークを作り上げたのが全ての始まりだ。
そのネットワークは、あらゆる娯楽が凝縮された電脳世界。
その名も、【GAMEWORLD ONLINE 《ゲームワールド・オンライン》】!!
地球規模の壮大なフィールドで、エリアごとに用意されたゲームを攻略し、時にプレイヤー同士で絆を深める……。
かつてモニター越しに眺めるだけだった世界に、文字通り「飛び込む」ことができるようになったんだ。
ゲームをクリアすれば最強の証が、莫大な報酬が、挙げ句の果てには世界の半分さえ手に入る! ……なんてのは魔王の誘い文句やから冗談やけど。
とにかく世界中がその異世界に夢中になり、誰もがゲームの虜になった。
現実も異世界もゲームを中心に回る、そんな時代に俺は生まれた。
そして五歳の冬、俺は初めて「ゲーム」というものに触れた。手に持ったのは、一組のトランプだった。
★
ある日、じいちゃんとその仲間たちが茶の間でポーカーに興じていた。俺がそれを横から覗き見ていた時のことだ。
「――丁度ええ、剣! ちょっとワシの代わりに打ってみんか!?」
「?」
急な誘いに俺は目を丸くした。いきなりポーカーと言われても困る。
当時の俺はルールなんて毛ほども知らん。そもそもトランプなんて、手裏剣代わりにして何枚ボロボロにしたか分からんくらいや。
「同じ絵柄や数字を揃えればええんや」
じいちゃんにそう教えられ、俺は言われるがままにカードを引いた。
一人五枚。不要なカードを一度だけ山札と交換する。
「――どや! フルハウスや!!」
ギャンブラー気質のおっちゃんが、『8』の三枚と『K』の二枚を叩きつけた。
他のおっちゃんたちは、良くてワンペア。出来損ないの役ばかりで勝負にならない。
「さて、剣坊っちゃんはどうかな?」
「流石にフルハウス超えは無理やろうけど……」
フルハウスもスプラッターハウスも知らん俺は、無造作に手札を晒した。
その瞬間、おっちゃんたちの時が止まった。全員が呆然と硬直している。中には顎が外れそうな顔をしている奴もいた。
俺の手札は、三枚の『A』。そして、一枚の『ジョーカー』。
「ふ、ファイブカードや……ッ!!」
ジョーカーという「ワイルドカード」を含めてのみ成立する、ロイヤルストレートフラッシュをも凌駕する最強の役。
「天才や、この子は!」
「流石は矛玄さんの孫や、将来が恐ろしいわ!」
「ガハハ! ワシの自慢の孫やからな! さあ約束通り、高級フグ料理を奢ってもらおうか?」
………はい??
「いや痛いって! あそこの定食屋、目玉飛び出るほど高いんやぞ!」
「だから矛玄じいさんと賭けをするなって言うたんよ」
「五歳の子供相手なら勝てる思うたのに……親子揃ってゲーム強すぎやろ、殺生やわ!!」
――後で知ったが、あの時俺が誘われたのは、晩飯の支払いを決める賭けのダシにされただけだった。
きっかけは格好悪いかもしれんけど、あれが俺の原点。最高に大事な思い出なんや。
★
――私が初めてゲームをやった時?
んーと、五歳の頃だったかしら。今思えば、あの出会いは運命だったのかもしれない。
私が生まれたのは『超次元ゲーム時代』。けれど、五歳になるまで私の家はゲームとは無縁の生活を送っていたの。
お母さんは仕事でいつも忙しくて、教育も生活の世話もすべてお手伝いさん任せ。
だから、世の中がゲームに熱狂していても、それを知らない自分に疑問を持つことさえなかった。
――あのゲームに出会うまでは。
それは何でもない日のこと。お母さんの部屋の近くで、一台の携帯ゲーム機が落ちているのを見つけたの。
家では一度もゲームの話題なんて出なかったのに、どうしてこんなところに? 私は好奇心に抗えず、その電源を入れた。
ドット絵のキャラクター、上から見下ろす平面の世界。
『たたかう』『じゅもん』という不思議な選択肢……それは、とてもレトロなロールプレイングゲームだった。
物語は王道。勇者の血を引く戦士が、魔王に囚われたお姫様を助け出し、世界を救う。
私は自分の名前を『みのり』と入力して、冒険の旅に出た。 レベルが上がった時の達成感。新しい町を訪れるたびに広がる世界。宝箱を見つけた時の胸の高鳴り。
その全てが、私の知らない「自由」を教えてくれた。
そして……ようやく助け出したお姫様を見た時、私は不思議な既視感を覚えたの。
このお姫様は、私にそっくりだって。
暗い洞窟に閉じ込められ、圧倒的な力を持つ魔王に怯え、ただ救いを待つだけの存在。
ゲームを知る前の私は、まさにそうだった。習い事と勉強に縛られ、管理された日々。私は心のどこかで、自分も囚われの身だと思っていたんだわ。
だからこそ、目の前の壁を切り開いていく勇者が、たまらなく格好良く見えた。
この時、私は心から願ったの。
『いつか、この勇者様みたいな素敵な人に出会いたい!』って。
結局、夢中になりすぎてお母さんにバレちゃったんだけどね。
家中の人を巻き込んで、教育方針がどうのって大騒ぎになったのを今でも覚えてる。
それからお母さんも根負けしたのか、好きなゲームをすることを許してくれた。
……まあ、『ゲームワールド・オンライン』の存在は、相変わらず教えてくれなかったけれど。
あのゲームに出会わなければ、私は今も空っぽな箱の中で過ごしていたと思う。
私にとって、人生で一番大切な出会いなの。
★
「俺は、初めてゲームで勝って『凄い』って言われたのが嬉しくて……もっと強くなりたいと思った!」
「私は、初めてゲームの世界に触れて『面白い』って感じた瞬間が楽しくて……もっと色んな世界を見てみたいと思った!」
「だから俺は今も――」
「だから私は今も――」
―――ゲームが大好きなんだッッ!!
本作を読んで頂き、誠にありがとうございます!
先ずは『第2話⑤~切り札はエース~』までお読みいただけると、本作品の雰囲気が概ね分かりますので、お付き合いの程をお願いします。
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