09 悪友
季節の移り変わりは早い。
ついこの間までは爽やかな気候だったのに、今はまるで蒸し風呂一歩手間。いい点なんて鮮やかな紫陽花を見れることしかないのではないだろうか、なんて思うこの季節を、人は俗に梅雨と呼ぶ。
それでも本部内は快適そのもの。夏も冬も一貫して適温に保たれる室温。本部内に窓は存在こそするものの、ほとんど開けられることは無い。
完全に外部から遮断された環境。だからこそいつでも適温を保っていられるのだ。
しかし残念ながら、一歩外に出てしまえばそんなことは全く関係ない。
何も考えていなくてもため息が口を衝いて出る。
「暑い……」
シェルター内に降り注ぐ光は、間違いなく真夏の太陽のもの。
円錐形の白い巨塔である本部の先端は、細い針のようにゆらゆら揺らいで見える。
「バベルねぇ……本当にぴったりの名前……」
陽炎のせいではっきりとその形が見えないが、その形は確かにブリューゲルの有名な絵画のバベルの塔に似ているように思う。
バベルの塔について詳しいことは知らないけれど、神に挑戦しようとしたというエピソードは有名だ。神に挑戦こそしないけれど、実践なんて制度はある意味神への挑戦なのかもしれない。有名なエピソード通りに壊されてしまっては困るけど、日本軍の繁栄を表現するには実に適したモチーフだろう。
上を見上げてゆらゆら揺らぐ上層部を眺めながら、この前私はあそこにいたんだな、なんてぼんやり考える。
滞在時間は決して長くなかったけれど、教官と河原とあそこに行くことができたことは私にとっては貴重な体験だ。
本部の下層から中層で過ごす私達にとって、この前訪れた120階はもはや未知の世界に等しい。そこに行けたというのは素直に嬉しかった。
私の―――というか、夜桜学園生徒全員の最終目標は120階に行くこと。ライバルは多い。
もう一度、あの景色を今度は自分の実力で見れるよう頑張らなければ。教官と肩を並べられる、まではいかなくても、それくらいのレベルで仕事ができるようなりたい。頬を強く叩いて改めて気を引き締める。
しかし、気を引き締め直したからといって残念ながら暑さがやわらぐわけではない。汗が滲む首筋をタオルで押さえながら、またため息をついた。
そんなとある日の昼休み。
高等部1年生の実践の授業は毎日4時間目。さっきまでが実践だったからか、この昼休みは毎回時間がゆっくり過ぎていくような気がする。今日の実践も時々ヒヤッとする場面があったが、なんとか生き残れた。
気づけばもう1学期も半分が経過した。この頃になると学年トップのバディを狙う奴もいなくなってくるので、私たちからすると少し肩の力が抜けるのだ。上位のバディを狙うのは入学してすぐの勢いのある時か、学年終了間近のもうどうにでもなれと思う時のどちらかと決まっている。ここ最近はたまに流れ弾が来るくらいで、本気でターゲットにされることはない。
だからと言って油断してしまってはこの前の二の舞だし、河原はまた責任を感じてしまう。
私だって個人順位3位なのだ。河原に心配されてばかりではいられない。
そんなことを広場のベンチでぼんやり考えていると、向こうにひらひら手を振る影。その影は河原でも財前でも富井でもない。長い綺麗な髪をポニーテールにしている長身影。
「あ、やっぱり藍じゃん。どしたの、1人で」
「紗也こそこんなところでどうしたのよ」
―――井上紗也。
学年個人順位7位、バディ順位5位。初等部からの付き合いで気心知れた仲だ。
私の中で河原は相棒、財前と富井は大切な友人という認識。しかし彼女はそういうのとは違う。仲が悪いわけではなく、むしろ良い方だろうとは思うけれど、友人というにはちょっと違う気がする。これはなんと言うのが適当なんだろう。親友は気恥ずかしいので、悪友とでもいっておく。
「んー、ちょっとね?」
私の横に腰を下ろした紗也はふふっと微笑む。
魅力的な太陽みたいな笑顔だけど、残念ならがこの子は富井みたく純粋ではない。
「あんたがそーゆー顔する時って、いいこと考えてないでしょ」
「あ、ばれちゃった?さっすが藍!」
あははっと笑う顔だけ見ていれば美人なのにな、なんて残念に思うのは毎度のこと。まあ今更どうにかなることではないので仕方がない。
「まあ、付き合い長いからね。それで、懲りずに今回は何をやるつもりなの?」
「おっ、藍も協力してくれる感じ?」
「まあ、紗也だけだと破滅する未来しか見えないからね。内容にもよるけど」
「わー、相変わらず私への評価が酷い!それも愛だと信じてるけど!」
「はいはい、どうぞご勝手に」
井上紗也。夜桜学園高等部の生徒にして、私の悪友。そして、趣味はいたずら。
「それで、今度は何をやらかすつもりなの?」
「今回はねー、中身が入れ替わっちゃった、みたいな感じ!」
「何その、漫画とかでよく見るやつ」
「でしょでしょ?これ、藍は絶対引っかからないと思うんだけどさ、まりんちゃんならワンチャンあるかなーって」
「いや、流石に富井でもこれは気付くんじゃ……?」
「まっ、面白いからやるのは確定なんだけどね!で、藍、協力してくれるの?」
「まあ、今回だけ特別にね」
紗也の趣味はいたずら。しかし、このいたずらが基本的にかなりしょうもない。
普段は自分で勝手に仕掛けて自爆しているので手を貸したりはしないけれど、今回は相棒と友人が巻き込まれるようだし、監視も兼ねて手助けしてあげることにする。
「……てか、何で藍はこんなとこにいるの?死ぬほど暑いんだけど」
「いや、何となく出てきたはいいけど暑くて、中に入ろうと思ったら紗也が来たんだけど」
「え、私のせい?まあいいけど、とりあえず中に入らない?」
「えぇ、それは大賛成」
というわけでふらふらとカフェに入る。
端末を確認すれば、5時間目開始まではまだ時間がある。アイスティーの一杯くらいなら飲めるだろう。
ティーセットについてきたショートケーキを頬張りながら話の続きを始める。
「それで、そもそもなんでそんなことするの?まあ、何となく察しはついてるけど」
「んー?なになにー?」
「……どうせ、富井の恋路の邪魔でしょ」
「大正解ー!さっすが!」
紗也は指をパチンと鳴らして私を指差す。ご丁寧に付いてきたウィンクまでバッチリ決まっているから憎たらしい。
「全く……なんでそんなこと、するのやら」
「なんでって、そりゃ、2人に早く両思いになって欲しいからでしょ。まりんちゃんの一方通行、何故か河原には伝わってないけど、周りから見たらもどかしくて仕方ないんだから!」
「あぁ、それには同意。我が相棒ながら、色恋沙汰にあそこまで疎いのはいかがなものかと思うわ」
「ねー。でも別に、他のことにも鈍感なわけじゃないんでしょ?」
「うん。というかむしろ、察しが良すぎて怖いときもあるくらい」
「ふーん。やっぱり不思議な話だなー」
よく分からないや、と言いながらアイスティーを飲む紗也に対して何度か頷いておく。
というか実際、私も河原のこの謎の特性にはモヤモヤしっぱなしなのだ。それこそ最初は演技か、なんて疑ったりもしていたけれど、どうやらあれが素らしい。
富井も富井であれだけ分かりやすいくせに、いざ行動を起こそうとすると奥手が発動するらしくなかなかうまく行く気配が無い。それだけでも災難なのに、恋する相手がその鈍感すぎる河原ときた。よって今のところ、この2人に進展は皆無でこのまま放っておいても進展はきっと見込めないだろう。
そんな2人だが、2人が一緒になってくれたら良いのに、と思う気持ちは嘘ではない。
2人とも私にとって大切な人で、彼らの幸せを祈るのは普通のことだろう。
一見すると、紗也は恋のキューピッドにすらなれそうなくらい。
それなのに、それをいたずらと称して変な方向に持って行こうとするのが彼女なのだ。まあ、そういうところは嫌いでは無いんだけど。
「まず、まりんちゃんと藍が2人きりになります」
「それだといつも通りじゃない?意味あるの?」
「大あり!その後、私が乱入します!ちなみにその時点で、まりんちゃんは藍が河原だと思っているって設定ね!」
「いきなりすぎない?」
「そこは後で計画詰めるから心配無ーし!」
「心配でしかないけど……まあいいや、続けて」
「あ、まあいいんだ」
「はぁ……何を今更」
紗也との会話のペースは常にトントン拍子。
気に入らない教官の愚痴をいうときも、お互いの話をするときも、こういう話をするときも、ついでに口喧嘩するときもこうなのだ。自分は口数が少ない方でもないが、特別多い方ではないとも思っているけれど、彼女の前だとびっくりするほどスムーズに言葉が口から出ていく。
要約すると、紗也の計画はこうだ。
まず富井と私が2人きりで出かける。そして、私と河原の中身が入れ替わったということを話してみる。それを信じた富井は、目の前にいるのは私なのに中身は大好きな河原、という頭が混乱する自体に陥る。そこに事情を知らない紗也が現れて、私たちの前で河原が富井のことを考えてたよー、みたいなことを話し出す。突然自分の話が始まって、しかも本人にはバレたくない内容を暴露されて赤面する河原(という設定の私)、それを見てさらに混乱を極める富井、そしてそれを面白がる紗也―――という結末。
「どう?どう?」
期待のこもった笑みで私を見つめる紗也。横目でそれを確認して、とりあえず大きなため息をつけば、その表情はあからさまに不満げになる。
「どう、っていうか……まず、紗也の場合やり方は適当で大雑把なのよ。入れ替わりなんて、本当に上手くいくとは思えないんだけど」
「んー、まあこれは上手くいけば面白いなー、くらいなんだけどね。要は、河原の感想を伝えられればいいんだよ」
「え、河原、本当に富井のこと好きなの?」
「はぁー?もしそうなら、こんなことしなくていいんじゃん!」
「じゃあ河原の感想って何よ?」
「えっとね、まりんちゃんのリボンのピンク色について可愛いって言ってたから、それを切り取ってまりんちゃんが可愛いって言ってたー、とか」
「うわ、意地が悪いわね、相変わらず」
「お褒めに預かり光栄!まあ、嘘じゃないしいいじゃん!」
「……どうなっても知らないからね」
「残念、藍はもう同じ穴のムジナですー」
ふふふっ、と溢れる笑みは相変わらず。こういう紗也の笑顔ほど関わって後悔するものはないんだけど、今更もう遅いのは分かっている。彼女の言う通り、残念ながら私は既に同じ穴のムジナだ。
(富井、とりあえずごめん)
子犬みたいに純粋な彼女が脳裏に浮かぶ。正直、かなりの罪悪感を感じているけれどここまできたら仕方がない。
それに、富井のことは大切な友人だと思っているけれど、目の前のいたずら少女も私にとっては大切な悪友なのだ。
「……まあ、それもそうか」
「そう来なくっちゃ!それじゃ、実行は明日!藍はまりんちゃんのこと、よろしくね!」
再び指を鳴らしてウインクを決めた紗也はやはり絵になるけれど気に入らない。
端末で昼休憩終了5分前を確認して、席を立ち上がった私は最後の抵抗を吐き捨てる。
「今度、夕飯奢りなさいよ」
―――そして翌日。
富井の部屋を訪れるなんていつぶりだろう。いつもなら富井が私を訪れてくるから、富井の部屋に行くことはあまりないのだ。
富井の部屋のドアの前に立ち、インターホンを鳴らす。ちなみに私はドアを連打するなんて迷惑なことはしない。ドアの向こうから聞こえてくるパタパタという足音の持ち主はやってきたのが私だなんて予想もしていないだろう。
「はーいっ……って、え!?あ、藍……!?」
予想通り。間抜け面の富井がそこにいた。
ただでさえ驚いている彼女に、今から私はさらに意味のわからないことを言い放つ。
「葛西だけど、葛西じゃないと言うか……」
「え、何言ってるの、藍?どう言うこと?て言うか、本当になんでここに?」
まず私が自分の部屋の前にいることが、そして私の言った言葉の意味が本当に分からないらしく、富井は私のことを舐めまわすように眺めてくる。そこまでレアキャラのような扱いをされるとさすがにちょっと恥ずかしい。
「いや、その……とりあえず、お茶でもどうだ?」
「どうだ?え、なんで藍、そんな男の子みたいな喋り方してんの?」
「いいから!とにかく外に!」
そしてこれ、予想はしていたけどその数倍は恥ずかしい。
こんなところ、他の人に見られたら私は死ねる。教官、河原、先立つ無礼をお許しください。
「藍ー、着替えたけどどこ行くの?」
「とりあえず10階のカフェにでも……」
エレベーターの中。本来は気まずくもなんともないのに、変な設定のせいでかなり気まずい空気が流れる。
富井は事情こそ把握していないけど、私の様子がいつもと違うことには気付いたようだ。
「……藍がまりんのこと、頼ってくることってそんなにないからびっくりしてるんだけど、本当にどうしたの?」
大きな瞳が私の顔を映す。真面目な表情に胸が苦しくなるけれど、意を決して馬鹿馬鹿しい作り話―――もとい、悩みを打ち明ける。
「……実は俺、河原なんだよ」
沈黙。
恐る恐る富井の表情を覗くと、彼女はフリーズしていた。
(え、まさか……)
嫌な予感がしてさらに富井の顔を覗き込めば、彼女の顔が火を噴いたように紅潮した。
「え、一也なの!?え、本当に!?」
「あ……あぁ、実は」
「えー、なんでっ!?」
「いや、起きたらこうなってたというか……」
「なるほど……。まりんもびっくりしたけど、一也の方がもっとびっくりしてるよね」
「あぁ……まあ、そうだな」
「でも大丈夫!まりん、一緒に解決方法考えるから!」
恐るべし、富井まりん。
まさか、この状況を信じてしまうとは。
カフェのある10階に着いた頃には、富井はこの状況を混乱しつつも受け入れているようだった。
これは彼女が純粋すぎるのだろうか。それとも私が純粋でないだけか。やばい、こっちが混乱してきた。
「一也、何か食べたいものある?」
「えっと……なんでも良いけど」
「んー、じゃあまりんが行きたかったお店でも良い?あ、でも、一也が食べるには量が少ないかなぁ」
「あー、それは大丈夫じゃないか?ほら、体は葛西なわけだし」
「あ、そっか!ならレッツゴーッ!」
ふふんっと楽しげに鼻歌まで歌い出す富井。
とりあえず計画は今のところ大成功なので、10階のどこかで待機している紗也にこっそり端末で位置情報を送れば、間を置かずに続けて3回、バイブ音が鳴った。これは紗也の了解サインだ。
富井の目的のカフェが見えてきた頃、正面から見慣れた顔がやってくるのが見えた。―――紗也だ。
彼女も私たちのことに気付いたらしく、大げさに手を降りながら駆け寄ってきた。
「あーっ、まりんちゃんに藍じゃん!どうしたの、こんなとこで?」
「あ、紗也ちゃん!」
富井が下から戸惑いがちな視線を送ってくる。これは、入れ替わりを彼女にバラして良いかの確認だろう。
予定通り、深刻そうな顔をして首を横に振る。というかこれ、私の演技力が試される気がするのは気のせいだろうか。今更気付いたところでどうしようもないけれど。
「えーっとね、藍とまりんはあそこのカフェに行くつもりで!あそこ、ニュースで話題になってたし!」
「あー、あのファンシーなところ?あそこ、女子会はもちろん、デートにも最適って書いてあったよね。ならまりんちゃん、相手は藍でいいのかなー?」
「へっ!?な、何、何言ってんの、紗也ちゃん!?」
「何って、そりゃデートの相手でしょ。まりんちゃんの場合、相手は河は―――」
「あー、あー、あー!」
壊れたロボットみたいなことになっている富井がおかしくて仕方がないのだろう。紗也はニヤニヤしながらさらに追い打ちをかける。富井も律儀に全部に全力で反応するので息も絶え絶えだ。
「そういえば河原、まりんちゃんのワンピース姿見て、似合うなって言ってたみたいだよー?」
「えっ、嘘!?本当!?」
「え、何で藍のこと見るの?」
「いや、その、あの……!」
私―――つまり河原を見つめる瞳は潤み、頬は真っ赤に染まっている。
なるほど、これは確かに男子たちも惚れる気持ちが分からないでもない。そう思ってしまいそうになるほど、目の前で恋する乙女をしている富井は可愛らしかった。
ただ、これ以上続けるのは少し可哀想だ。紗也も満足しただろうし、今日はこの辺りで終わるべきだろう。
これがいたずらだとバラしてもいいし、本当に入れ替わっていたことにしてもいい。それこそ何かの拍子に私の人格が戻ってきたことにでもしよう。
紗也に目配せすれば、彼女は少し不満げな顔をしつつもすんなりと頷いてくれた。
さて、ようやく私も自分に戻れる。
というか実は、河原の富井や財前、紗也の前での大人っぽい言動が分からずに苦戦していたのだ。私や教官の前での河原は、何というか子供っぽい。幼い頃からの付き合いだから仕方ないし、かく言う自分も2人の前ではそうなってしまうので咎めるつもりなんて毛頭ないけれど、素を知っている分、大人っぽい感じが違和感でしかなかったのだ。
(……まあ、私も楽しかったからいいか、今回は)
「……あれ、富井?紗也?どうしてここに?というか、ここどこ?」
「え、藍!?」
「え、えぇ、藍だけど」
「本当に本当に!?葛西藍!?」
私の肩を持って激しく揺する富井に、私は努めていつも通りの反応をする。
「しつこいなぁ……本物の葛西藍よ。というか何これ、どういう状況?」
「わーっ、よかったー!藍が戻って来たー!」
「どういうこと、まりんちゃん?」
紗也は心底不思議そうな顔をしているけれど、こっちからすれば白々しいにもほどがある。まあ、それはお互い様か。
「んー……藍、何も覚えてない感じ?」
「うん。なんか、夢を見てた気分。で、気付いたらここにいたの」
「え、藍もしかして夢遊病?」
「失礼な……」
「そっかぁ」
そう言いながら、少し残念そうな色を滲ませる富井に罪悪感が湧く。それは紗也も同じらしく、こっそり紗也と顔を見合わセル。すると、なんの前触れもなく唐突に富井は私たちの腕を掴み、満面の笑みを浮かべた。
「えっ!?」
「どしたの!?」
「ねえねえ、とりあえずそこのカフェに3人で行かない?確かにデートにもピッタリだけど、まりんは友達と来たかったから!」
「……そっか。なら、私は大賛成!藍はー?」
「うん、私も賛成!お腹空いたし入ろう」
「よかった!じゃ、行こ!」
そう言って走り出した富井の後を追う。
彼女の明るいところに救われているのは実は私たち。まあ、今回の計画が成功したのかは分からないけれど、なんて思っていたまさにその時。不意に立ち止まった富井は、私たちに向かって宣言した。
「ちなみに、2回目はデートでくるつもりだから!応援してね!」
―――どうやら、作戦も成功していたらしい。