答えられない質問
話の前後関係で短くなってしまったΣ(ノд<)
と、ちょっと失敗した気分。
舞華との問答をどうにか乗りきった。
その舞華と一緒に戻ってきたオレは、教室の扉を開けて中に入る。
そしてたちまちオレは――――クラスメイトによって完全に方位されてしまう。
「八時三十七分、容疑者確保」
「逃げ場はないぞ。観念しろ」
「者共、出あえ出あえー」
なんて声まであがっている。
うん、ちょっと待とうか。展開がおかしい。
オレはクラスメイトに取り囲まれるような、悪いことをした覚えがない。完全な白だ。
おい、今さっき幼馴染みを騙してただろとか思ったやつ。
拳から始まる男の話がしたいから表に出てこい――――なんて、くだらない現実逃避はよしとして、先刻のシリアスから脳内を今へと切り替えた。
こんな時は一旦状況を整理してみよう。
まずオレは今日からここに通うことになった転入生だ。
それから登校してきて、さっきまで自己紹介をしていた。
その後に舞華に連れられて教室を退場。
戻ってきて今に至る。
駄目だ、さっぱり理由が分からない。どこにも問題が見当たらない。
強いてあげるなら、問題点はオレでなく舞華にある。
ホームルームを遮った、空気を凍らせた、転入生を連れ出した。見事なスリーアウトだ。
よってオレは白のはず。
おいてけぼりなオレは、飛び交う言葉をどうにか聞き取り、現状の把握に努めた。
それでようやく包囲された理由が判明する。
えーと、あれだ。転入生への質問タイムってやつ。
さっき出来なかった分を今すぐやろうってことらしい。
ちなみに舞華はさりげなくその輪から逃れ、自分の席に着席していた。それから鞄から本を取り出し、読み始めている。
どことなくその姿はとても寂しそうに見えたのはオレの気のせいだろうか。
そんな舞華の姿を目で追っていたのだが、周りは質問の嵐で吹き荒れていた。
オレは意識を舞華から飛び交う質問に切り替え、聞き取れた質問を一つ一つ答えていった。
「ここに来るまではどんな所に居たの?」
まず一つ目の質問は、含みもない素朴な質問……なのだが、至って他愛もない質問にすら困るような奴がここにいた。
誰かって? もちろん、何を隠そうオレである。
何しろ、今は舞華の護衛の任務に就いている。故に少しでも妙なことで騒ぎになるのは勘弁被る。
そう思い、当たり障りのない答えを返した。
「ここからは少し遠い所から来たんだ。むこうとは結構違ってたから、驚かされたよ」
「じゃあ、次。東雲君の趣味は?」
「昼寝だな」
至って真面目にそう答えると、
「それって趣味に入るのか?」
という声が上がるが、オレは趣味だと言い張った。
寝ることはとても大切なことだ。寝る子は育つと昔から言われているし、何より疲れきった身体や精神を癒すには絶大な効果を誇っている。
だからオレは昼寝が大好きだ。人類における至高の文化と言っても過言ではないとさえ思っている。
昼寝の魅力を含め、そのことを強く主張した。
その時に残念な目で見られたのはさすがに傷ついた。
回答し終わるも、次の質問が投げ掛けられる。
「好きな食べ物はなに?」
「基本的に何でも好きだけど、強いて言うならシチューと甘いものだな」
更に次の質問。息を吐く暇もない。
「東雲はどんな魔法を使うんだ?」
再度言葉に詰まるオレ。やっぱり魔法を教えるための教育機関だし、当然こういう質問もあって当然だろう。
しかし、これについては正直に言うと、あんまり答えたくなかった。理由としては、使う魔法が異端だからだ。
自分の意思で自由に発動できる魔法ではあるが、オレは一向に自分の魔法は使えない。
まるで矛盾した言葉遊びのようだが、これは事実を述べた表現である。とにかく扱う魔法は異常で異端な魔法だと分かってもらえればいい。
だからこそ、質問には答えられなかった。
こんな事になるのなら、予めフェイクを用意しておくべきだった。仮に今更設定を作っても、思わないところでボロが出るだろうし。一体どうしたものか……。
どう答えたもんだと心の中でうんうんと悩んでいると、近くに居た誰かが言った。
「別に今、聞かなくてもいいんじゃないか? どうせ今日は午後に実技の授業があるんだし。午後になれば分かることだろ」
「そういえばあったねー」
予想外にも追求から逃れられたようだ。思わぬ助け船に救われた。
誰だか分からないがありがとう。おかげで質問に答えないで済んだ。知らない誰かに心の中で手放しに感謝する
だが、感謝と同時に疑問が浮上する。
「一つ聞いてもいいか?」
「うん、なんでも聞いてくれていいよ」
すぐに近くに居た女の子が応じてくれた。その言葉にありがたく甘えることにする。
「実技の授業ってどんな授業なんだ?」
「えーとね、この学校では週に三日間だけ、魔法を使った授業があるの。本当は特別魔法技能実技訓練って言うんだけど、それじゃ長いから、略して実技って呼んでるわけ」
人差し指をピンと立てて説明。親切な女の子による、分かりやすい説明のおかげで理解できた。
ここは魔法をちゃんと使えるように指導するための教育機関だもんな。授業に魔法を使ったカリキュラムが含まれていてもおかしくないか。
「ありがとう。おかげでどんな授業なのか理解できたよ」
説明してくれたことへの感謝の気持ちを笑みを添えて言うと、
「う、うん。べ、別にこれくらい」
と、早口で言うなり顔を逸らされてしまう。
その顔は朱に染まっている。もしかして気付かない内に怒らせるような事したのだろうか?
そうだとしたら、変に拗れてしまわない内に謝っておきたい。
そう思って口を開こうとした所で、次の質問がそのアクションの邪魔をした。
「そういえば結局、東雲と天堂さんとはどういう関係なんだ?」
……また答えにくい質問がきた。
舞華との関係は勿論のこと、さっき話した内容を他人に話すのは気が進まない。
「それは……」
言い淀んでいたところで、キーンコーンカーンコーンと、甲高い音が響き渡る。
どうやら、これは一限目の授業の開始を知らせるチャイムらしい。
周りは残念そうにしていたり、面倒くさそうにしているが、オレにはそのチャイムが救いの福音にすら聞こえた。
「ほら、授業始めるから席につけー」
ガラリという音とともに教師が扉から入ってくる。教師の声を合図にし、オレへの質問タイムはお開きになった。
「じゃあ、また後でね」
誰かがそう言ったのを皮切りに、オレを囲んでいた複数のクラスメイト達は各々の席へ帰っていく。
みんなが戻ったところで自分も、先ほど教えられた席につく。
ほとんど誰にも見られない一番後ろの席であったことは幸運だ。机に身を預け、少しだけ身体を伏せる。そこでようやく安堵の息をつけた。
困る質問もあったが、最後まで言う羽目にならなくてよかった。オレの正体やら、使える魔法やら、舞華との関係やらと答えられない事だらけだ。
まったく、本当に気疲れさせられる。
なるべく早くこの任務を終わらせ、さっさとむこうに帰りたいものだ。
そう思いながら、他人事のように一限開始の声を聞いていた。
本話で主人公の魔法に触れる質問がありました。
魔法が使えないから、家を追い出された主人公。
自分の意思で自由に発動できる魔法だけど、一向に自分の魔法は使えない。
意味不明な言葉の綾です。
詳細は一章のエピローグ辺りまで出てきませんが、主人公の魔法自体はもうすぐ使われます。




