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第14話

◇6月17日(火)


 朝のホームルームで村上先生から二つの報告をされた。


 一つ目は、船木が脳出血で亡くなったというものだ。これまでに計5名が亡くなっている。暗い雰囲気が漂う教室だが、驚きを見せる生徒はあまりいなかった。みんな、毎日一人ずつ誰かが死んでいくという異常事態に慣れてきており、感覚が麻痺しているように見える。加えて今回死亡したのは、クラスの中で存在感の薄い生徒だったということも要因だろう。


 何となくだが、船木の死はクラスメイトたちの記憶からすぐに風化する気がする。そう思うと無性にイライラしてきた。


 普段は口数の少ない人間なため、教室では空気のような存在だったが、興味のあることに対しては人一倍に熱弁を振う。それが本来の船木だ。そのことを知っているクラスメイトは、俺意外にはいないだろう。


 二つ目は、久我山(くがやま)についてだった。久我山は昨日、現場に駆けつけた警察官によって身柄を拘束された。現在は留置所にて取り調べを受けているとのこと。現状報告できることはそれだけで、詳しいことは村上先生も知らされていないらしい。


 未成年による犯罪は基本、少年法が適用される。しかし殺人は例外であり、成人と同様、刑事裁判になることが多いということを以前、何かのニュース番組で聞いたことがある。


 殺人というのは犯罪の中でも、極めて重い罪だということなのだろう。


 久我山は殺人を犯した。それも同級生であり、自身の彼氏である柏木を。未成年だからといって、人を殺しておいて何のお咎めがないというのは倫理的におかしい。


 でも、あのルーレットがなかったら、久我山は殺人なんて起こさなかったはずだ。あのルーレットが引き起こす惨劇によって、久我山の精神は崩壊したのだから。


 そういう意味では久我山もまた、被害者なのかもしれない──。






 放課後、帰宅部の俺は帰宅をせずに教室で、図書室から借りた本を読んで時間を潰していた。


 18時──運動部の活動終了時間になったため、教室を出る。


 正門で待つこと約10分。体格の良いクラスメイトの姿が見えたため声をかける。


「部活、お疲れ」


「あれ、財前じゃないか。何してるんだ、こんなところで?」


「飯島、実はお前に頼みがあってさ」


「頼み? お前が俺にそんなことを言うなんて珍しいな」


 出席番号1番、飯島亮介。今日のルーレットで当たった番号は1番だった。


 飯島は頭にはてなマークを浮かべている。俺と飯島は特別仲が良いというわけではない。それなのに帰宅部の俺がわざわざ部活が終わるまで学校に残り、待ち構えていたのだから当然の反応だ。


「無性にラーメンが食べたくなってさ、どこかおすすめの店を教えてほしい」


「そんなことのために、部活が終わるまで待っていたのか?」


 俺はこくりと頷いた。


 飯島のラーメン好きはクラスで有名だった。俺はさほどラーメンが好きじゃないが、相手が興味のある話題を持ち出せば会話は自然と続くだろうという考えだ。


「醤油が好きなら『天下無二』、塩なら『白鷹』、味噌なら『味良』、豚骨なら『黄金の豚』っていう店が基本的におすすめだな。まあ、細麺が好きか太麺が好きか、こってり派かあっさり派によっても変わってくるけど」


 スラスラと店名が出てくるとは、流石だ。


「ちなみに、飯島の一番の行きつけの店はどこなんだ?」


「『麺神』っていう店だな。醤油ラーメンが看板メニューなんだが、俺のオススメはその店の辛味噌ラーメンだ。極太の太麺とピリッとしたスープが絶妙に調和していて、病みつきになる」


「──もしよかったら、今からその店に一緒に行かないか? 奢るからさ」


「いいのか?」


 飯島の目が、キラキラと輝いた。


「もちろん。情報提供料ってことで」


「ライス大盛りと餃子も付けるが、いいか?」


「構わないよ」


「よし、そうと決まれば早く行こうぜ!」


 意気揚々と飯島は駆け出していった。俺はその背中を追いかける前に、スクールバッグから財布を取り出して中身を確認した。


「──まあ、何とか足りるか」


 小さなため息をついて俺は飯島の後を追った。


 もしラーメン代でクラスメイトの命を救えるのなら、それは安すぎる買い物だろう。

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