058_ドワーフ ①
ちょっと、推敲が足りないので誤字があったらごめんなさい。
これから先は出張後となります。
人が争うには武器が必要だ。そのため、多くの権力者は鉄を求めた。
では、その鉄を手に入れるにはどうしたら良いのか。
答えは簡単だ。鉱山から鉄鉱石を掘り出し、精製すればいい。
しかし、人間族は山間部では魔力の循環が上手くいかず、本来の力を発揮できない。無理に働かせてもすぐに力尽きてしまう。
では、どうしたら良いのか?
答えは簡単だ。山岳地帯に適正のある者がやれば良い。
そうして認識でドワーフたちは人間族に捕らえられ、奴隷のように扱われてきた。
そう、ほんの20年ほど前まで。
1人のドワーフが現れるまで。
10人ものドワーフに囲まれ武器を突きつけられた状態だが、自然と恐怖を感じなかった。
何故か分からないが、裏づけは何もないが、彼らが暴力的な行動には出ないことだけは確信できた。
それが【直感】のギフトのおかげなのか、どうかは分からない。ただ、彼らの瞳の中に深い悲しみを感じたのだ。
だから、信じられる。
バルチが手を出さないのも同じ理由だろう。この子は、誰よりも優しくて思いやりがあって、そして、悲しみを知っているから。
ドワーフたちは昔のバルチと同じこの世界の因果に囚われた犠牲者なのだ。
「おい、ちょっとは落ち着けって。俺たちの話を聞いてくれてもいいんじゃないのか?」
「……」
ドワーフたちは黙って八十雄の動きに注意を払っているだけで、誰一人として口を開かない。
はぁ、とため息をついた八十雄は覚悟を決め、いきなり地面に胡坐をかいた。八十雄の突然の行動に、ドワーフたちに動揺が広がる。
(ようやく分かった。こいつらは俺たちを、いや、人間の俺を恐れてんだ。たった1人のこの俺を)
バルチは八十雄の首を抱えるようにして、周囲を囲むドワーフたちに困惑した視線を向けている。
「まあ良いや。これから俺は独り言を言うから聞きたかったら聞いてくれ」
ザックを降ろし集落の方向に視線を向ければ、粗末な建物の影から子供や女性のドワーフたちの怯えた視線を感じた。
「俺は見たとおり人間族だ。近くのラントスからやって来た、しがない冒険者だ。正直な話、ここに来るまでドワーフ族がこの地でどんな思いをしながら生きていたのか、まったく知らなかった」
ドワーフたちは忍耐強く、辛抱強い。頑強な体でいかなる外敵にも立ち向かう勇敢な戦士と聞いている。
「あんたたちからすれば、俺も憎い人間族なんだろうな。悪かった。あんたらの神経を逆撫でるようなことをして。俺の事はあんたらに任すよ。煮るなり焼くなり好きにすれば良い。だが、バルチだけは、俺の娘だけは見逃してくれないか」
「この子がお前の娘?」
心配そうなバルチを優しく抱きしめ、八十雄は優しく笑った。
「何だ、種族が違うからおかしいって言うのか? 見た目とか、血のつながりとか、そんなつまんない事を気にするのか?
俺はこの子の親で、この子は俺の娘だ。誰がなんと言っても、バルチが違うといっても、俺だ決めたんだからそうなんだっ!」
「じーじ……」
ギュッと首筋に顔を押し付けながらバルチは力いっぱい抱きついた。
「そういうことだから、俺の事は好きにしろ。ただし、バルチに手を出したら絶対許さない」
「……お前たちは、ここに何しに来たんだ」
「んあ?」
「だから、何しに来たと聞いている」
囲んでいたドワーフたちの中から1人のドワーフが進み出てきた。他の仲間たちは持っていた武器を地面に下ろし、このドワーフに対応を任せるようだ。
「2年前、宜子皇国で出会ったドワーフにバルチの武器を手直ししてもらったんだが、2年たったらホール山にいる身内のドワーフに見てもらえって言われたんだ。それで、バルチと一緒にここまで来た。それだけだ」
「……そのドワーフの名前は」
「それを聞くのを忘れてて困ってんだ」
「武器に手を加えたドワーフの名も分からんのか」
「それなら分かる。確かゴグレグって名前だ。妙に酒に弱くて、毎晩酔いつぶれて宿屋まで運んだよ」
「そうだよ、バルチ、ドワーフのおじちゃんにハンマーを直してもらったんだから。じーじは、2年目の約束を守りに来ただけなんだよ。
ドワーフさんたちは、何でじーじをいじめるの? じーじ悪くないのに、何で謝っているの? じーじがかわいそうだよっ」
バルチの言葉を聞いていたドワーフたちは、互いに顔を見合わせうな垂れた。
「お前が会いに来たのはブラフマさんだ。この集落を越えて、山頂に向けて1時間も歩けば山小屋が見えてくるはずだ。そこにいる」
これが合図だったかのように、囲んでいたドワーフたちは八十雄たちに背を向けて、皆集落へと下がっていった。
「よし、行くか。バルチ」
「……うん。じーじ、大丈夫?」
八十雄は立ち上がりながらザックを再び背負うと、首に抱きついているバルチを抱えあげた。
「おう、じーじは大丈夫だ。ドワーフさんも分かってくれたしな。さあ、行くぞ」
集落の中を八十雄は歩く。集まる視線に気がつかないふりをしながら、まっすぐ山頂を目指して。
教えてもらった道を進んでいくと、山肌に張り付くようにして、一軒の丸太小屋が立っていた。
かなり大き目の建物で、煙突からかなりの勢いで煙が上がっている。
八十雄は建物にまっすぐに向かうと、そのまま扉をノックをした。
間もなく、中から1人のドワーフが顔を出した。そのドワーフは、先の集落で出会った誰よりも一回り以上体が大きかった。何より、その厚みが凄い。
その瞬間、今まで八十雄に抱きついていたバルチが真剣な顔をしながら八十雄の体から飛び降りた。尻尾が天を指すほど立ち上がり、毛が逆立っている。
そう、バルチは最大限に緊張しているのだ。
「人間が何の用だ」
ドワーフのバルチに一切目も向けず、のんびりとした口調で八十雄に話しかけてきた。
バルチはこのドワーフの強さに警戒していたのではない。ただ、今までなかった特殊な状況に戸惑っていた。
なぜなら、このドワーフからは魔力が感じられなかったから。本来、魔力を持っていない生物はこの世界では生きられないと言われている。八十雄ですらこの世界に来る前に、主神の鈴木から何かしらの改造を受けているはずだ。魔力がなくても生きていけるように。
これが後に八十雄と盟友となる【鉄の腕】ブラフマとの最初の出会いであった。
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