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新世界での学校経営  作者: MuiMui
第二章 放浪編
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027_世界情勢 -2-

 今日もちょっと短め……。


 これからも、八十雄とバルチをよろしくお願いします。

■ ラグナス公国 首都ラグナス ■


 紅蓮帝ことラギオス・アリシールドは、無数の報告書に目を通していた。


 ラグナス公国が誕生してから12年。未だ問題は山積みだった。


 元々ラグナス公国を中心とした辺り一帯は、ランゴバルト王国の勢力下だったのだ。その地方長官として王国より赴任してきたのがラギオスである。


 赴任当時、ラギオスは余りの状況に目を剥いた。男手は兵士に取られ、畑は地割れし、すべての民が餓えに苦しんでいた。年寄りは口減らしのため自ら山へと入って行き、子供はわずかな食料と交換で売られていく。


 税の取立ては苛酷かこくを極め、1年でいくつもの村が消えていった。


 赴任して間もない頃、ラギオスは赴任地の惨状さんじょうを王国に訴え、税の取立ての猶予ゆうよを願い出たが、それは叶わなかった。王国が下達かたつした命令は、効率よく税を徴収することのみであった。


 耐えかねたラギオスが義によって兵を起こした時、彼に付き従う兵士は100名にも満たなかった。ほとんどの兵士は命が惜しいと王国に逃げ帰ったが、ラギオスは黙ってそれを見送った。


 その後ラギオスは城の穀物倉庫を開き、すべての民に分け隔てなく施しを与え、討伐に来る王国軍に備えていたが、ぞくぞくと集まってきたのは周囲の村や街からやって来た義勇兵だった。


 彼らを率いたラギオスは、自軍の10倍以上もの王国軍と戦い見事これを打ち倒す。その後、ラグナス地方を中心としてラグナス公国の独立を宣言し、今に至る。


 本来であれば富国政策を優先して行い、国を豊かにしたいところだが、そうは問屋がおろさない。公国の成立に関係して、王国との間には大きな溝が生まれており、非常に険悪な関係だったからである。元々、国力の差も軍の力も大きく水をあけられており、軍事に力を注力しなければ生き残ることができなかったのだ。


 ラントスの占領についても、かの都市が生む富を狙ったものではなく、防御の薄いラントス地方から攻め込まれないように防御的観念から出兵したのだ。


 現在は使徒である八十雄に遠慮してか、王国もラントスには手を出してこなかったが、それに反比例して、王国と接する西側国境線は緊張が高まり続けていた。堅牢な要塞群と公国兵士2万人が警戒に当たっているが、一度ひとたび戦争が起これば多くの血が流れることに変わりはない。


「来週、西部国境まで視察に行く」

「はっ」


 紅蓮帝の言葉に近衛兵が答える。


 現在、公国が取れる手段は国主であるラギオスが前線兵士を慰撫し、士気を高めるくらいしか手が残されていない。


 しばらくの間、ラグナス公国にとって厳しい戦いが続きそうであった。




■ 宜子皇国ことここうこく 首都竜泉 ■


 大陸南西部に領地を持つ宜子皇国ことここうこくは、大陸でもっとも古い歴史を持つ国と言われている。


 領地は険しい山脈に囲まれた風光明媚ふうこうめいびな土地柄で、他国との交易も少なく、独特の文化が根付いていた。


 他種族に対する偏見も少なく、宜子皇国ことここうこくを治める雫香祁たかき一族には、妖精族の血が混じっていると言われている。


 国風こくふうとして優れた魔法使いを多く輩出し、領地は切り立った山々に囲まれ大軍で攻め込みにくい地形も相まって、鉄壁の防御を誇っている。


 女神に対する信仰はそれほど熱心ではない。女神の休日は国家レベルでお祝いが行われるが、国民の多くはお祭りの1つ程度として認識していた。


 平地が少なく自然環境の厳しい皇国の民は、神に祈るだけを良しとせず、自らの足で立つ強さを持っていた。


 そんな皇国の首都である竜泉りゅうせんの田舎道を、6歳位の少女が短角種の黒毛の牛を引いて歩いている。皇国では牛の世話は子供の仕事の定番だ。子供たちは牛の世話を通じ、命を大事にすることや、忍耐力を学んでいくのだ。


 牛は農作業を手伝ってくれる大切な家族として扱われている。絞った牛乳も貴重な栄養源としてよく飲まれていた。


くろどうしたのじゃ、休憩にはちと早いぞ」


 今までポクポクと一定の速度で歩いていた牛が足を止め、背後を振り返っていた。少女も同じ方向に眼を向けると、はるか上空に飛竜種の影が見えた。豆粒ほどの大きさで脅威は感じないが、この牛は何か感じるものがあったのか。


 少女の催促に再び歩き出した牛を引きながら、目的地である川原へと歩を進める。川幅は30メートルを越え、かなりの急流だ。周囲にはちらほらと釣り人の姿も見える。


 牛は川原に生えている草をのんびりとみ始める。手綱を近くの木に結んだ少女は、1人の釣り人に近づき声をかけた。


「どうじゃ、魚は釣れておるか?」

「これは、かや姫様。ボチボチと言った所でしょうか」


 そう言いながら釣り人は腰につけた魚篭びくの中を茅姫と呼ばれた少女に見せる。中には30センチメートル前後の魚が数匹、元気良く跳ねていた。


「姫様は、お牛のお世話でございますか?」

「そうじゃ。黒はわらわの家族も同様。しっかりと面倒を見ておるぞ」


 胸を張り誇らしげな少女の様子に、釣り人も笑みをこぼした。


「して、姫様。女神様の使徒様が旅に出たは良いものの、行方知れずになっていることはご存知ですか?」

「うむ。神託の巫女から耳がたこになるほど聞いておる。じゃが、使徒のことなぞ、わらわにいくら言われても分からんわ」


 この少女は、雫香祁一族たかきいちぞくの末姫、雫香祁茅たかきかや。皇国中から愛される、国の宝だ。




 その頃の八十雄とバルチは……。


「今日のご飯も美味しいねえ。じーじが新しく考えたの?」

「これか~、これはじーじが昔いた国の料理で【お好み焼き】って言うんだぞ。たくさん作ったから、お腹一杯お食べ」


「は~い」

「バルチはいつでも素直で可愛いなぁ」


「ん~?」

「じーじの独り言だよ。さあ、食べよ食べよ」


 ……いつでも仲が良い、平常運転の2人であった。




 読んで頂き、ありがとうございました。


2015 1/25 下記の通り修正を実施。

  非情に険悪な → 非常に険悪な


2015 1/27 下記の通り修正を実施。

  女神様の使途様が → 女神様の使徒様が

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