026_世界情勢 -1-
ちょっとだけ、前の話になります。
予約時間設定を1日間違えていましたっ!!!
ごめんね ><; ちょっと短めなのも、ごめんね~ ><;
■ 交易都市ラントス ■
八十雄が獣人の幼子と旅に出てから5年の月日が経っていた。
常に争いの絶えないラントス地方で、この5年間は平穏な時を過ごしていた。現在の支配者はラグナス公国であるが、今までならば直ぐにでも兵を送り込んで取り戻そうとしていたランゴバルド王国が、不思議なほど沈黙を守っていたからだ。
ラグナス公国の支配も非常に緩やかで、ラントスは半自治に近い形の支配を受けている。
八十雄が旅に出た時、ギルド会館長を務めていたドリスも今は役職を退き、顧問として助言を与える立場になっていた。本当の所はすべての役職かに引退し、妻や孫たちに囲まれてのんびりと余生を過ごしたかったのだが、そうも行かない理由があった。
ラントスは女神アルヴェの使徒である出崎八十雄降臨の地として、有名になりすぎた。世界中から信者が集まり、ある者は神殿に、ある者は八十雄の自宅に、ある者は大工ギルドや中央公園へと足を運んだ。
多くの人がラントスを訪れるようになり、都市の経済は潤った。飲食店や宿泊施設、みやげ物屋も一気に増えて、かつてない好景気に沸いた。
しかし、良いことばかりではなかった。
ラントスの富を狙い、ならず者たちまで世界中から集まってきたのだ。ちんけなチンピラから、冒険者崩れの粗暴者、暴力を生業にしている者まで、何でもござれだ。
更には、各国の貴族や地方領主まで八十雄縁の地を参りに集まる始末。
ドリスはそれらの対応に汗を流していた。
幸い、資金に余裕があったので、過去の功績から信用できる冒険者と町の商人や、各ギルドの職員に声をかけ、町中に警戒網を張り巡らせた。そして、不審な動きがあった時は、ただちに町の警備隊を出動させた。
特にドリスの頭を悩ませたのは、八十雄が旅に出る前に自宅の庭先に植えていた【神の果実】(八十雄はミカンと呼んでいた)を盗もうとする者が後を絶たないことだ。
秋から冬にかけて黄金色の果実が実りだすと、甘い匂いが辺りを満たす。それに釣られるように、盗人達も爆発的に増加するのだ。
【神の果実】の世話は、通称八十雄長屋の住人が交代で行っている。これは八十雄が旅に出る時、直々に世話を依頼したのが始まりと言われている。彼らは【神の果実】以外の庭木の世話や雑草取りに、八十雄の家の掃除も行っていた。
収穫した果実については、一部は神殿を通じて女神への捧げ物とし、残りは長屋や都市内の孤児院に配られていた。不思議なことに果実の中に種は含まれておらず、どうしたら木を増やせるかは誰にも分からなかった。
貴族や豪商は【神の果実】を欲し、人や金を湯水のように使った。神の果実を口にできる者は貧しい者たちばかりであったが、誰1人、果実を金で売ろうとする者はいなかった。ラントス時代、八十雄は日本の時と同様に孤児院に寄付を送り続けていた。住居に困っていた者のために長屋を作り、家賃もただ同然。この時代、孤児や貧しい者たちはしっかりとした職に付くことが難しかったが、八十雄が主導する大工ギルドは孤児でも誰でも積極的に受け入れて、そこに差別はなかった。
彼らは受けた恩を決して忘れず、八十雄の思いを裏切らなかったのである。
女神の休日に孤児院や八十雄長屋では、数少ない女神の果実をみんなで分け合い食べるのが恒例の風景となっていた。
ドリスは、冒険者や警備隊の手配や要人への対応、街で発生したトラブルの処理など、忙しい毎日を過ごしていた。
■ ランゴバルト王国 首都ザナックス ■
ラ・ワールドでもっとも栄えている国といえば、10人が10人、100人が100人、ラグナス王国の名を上げるだろう。軍事力、国力、人口、そのすべてが他国を抜きん出ていた。
世間では、【ランゴバルト国王がくしゃみをすれば、他国が転ぶ】とまで言われるほど。
一昔前にラグナス地方が反乱を起こしたが、ランゴバルト本国に住む者からすれば、些細な出来事と思われていた。
実際、王国と公国では4倍以上の国力差があり、本気で軍隊を派遣すれば公国軍を殲滅することも不可能ではない。実際、王国内でも公国に向けて大規模な遠征部隊を派遣する計画があった。
しかし、それが実現することはなかった。
女神の使徒、出崎八十雄がラントスに現れたからである。
ランゴバルト王家が王国を治める正当性を担保していたのは、彼の一族が【使徒の末裔】であることだった。
初代のランゴバルト王は、女神アルヴェの使徒であったと伝わっており、その子孫であるランゴバルト王家の直系には【神託】のギフトが発現しやすく、現在の国王、アレクシオ=ランゴバルトも【神託】を所持していたのである。
王国の民はそのほとんどが女神の熱心な信者で、自分たちが女神の使徒の末裔が治める国に住んでいることを誇りに思っている。時には他国を見下すほどに、その感情が強い。
だが、そこに本物の女神の使徒が現れた。
国民の忠誠は王家ではなく八十雄個人に向かうのではないか、いやいや、現王家を追放し、新たな王として向かい入れようとするのではないか。
実際に王国を動かす幹部達は、八十雄を恐れた。
最初、王国は八十雄を取り込もうとした。金や地位、名誉に美女とあらゆる財貨を用意したが、八十雄は一切興味を示さなかった。下町の貧民たちに交じって暮らし、王国の使者が目を背ける生活を送っていたという。
王国に呼べぬとあれば殺してしまおうかとも考えたが、そうもいかなかった。
この世界には実際に神が存在し、ギフトが必要ではあるが、直接、言葉を賜ることが可能なのだ。仮に八十雄が殺されて、ランゴバルトが暗殺に関与したことが世間に知られたらどうなるか……。
八十雄が現れたことによりラントスは女神の聖地とされ、占領するために軍隊を派遣することすらできなくなってしまった。職業兵士ですら、聖地に武器を向けることに強い拒否感を示すようになったのである。そのため自由に動かせる兵士の大部分が東方国境にある、対公国用の砦へと送り込まれることになった。
そして、一番の問題が……。
「なあ、使徒様は今何処にいるのだろうな。
女神様がおっしゃるには今でも旅を続けているそうだが、王国にも来て貰えぬだろうか。是非、一度、直接お目通りかかりたいものだ」
「それより陛下、公国に対する侵攻作戦の概要ですが……」
「良い、使徒様が現れためでたい時期に、無粋な血で大地を汚すこともないだろう。公国に対する侵攻作戦は無期延期とせよ」
「……かしこまりました」
「使徒様がお越しになるのを待っているのではなく、自ら足を運んだ方が良いのだろうか。
近衛隊長、貴様はどう思う?」
「私には何とも……」
玉座に座りながら腕を組み上の空で夢想を広げている、自称【世界一の女神様の信者】である我らが王が何を言い出すのか、まったく予想が付かないことである。
残りの二国分は明日となります。
明後日からは時間は戻りますよ。
2015 1/24 早速、下記の通り修正を実施。
送っていた言う。 → 送っていたという。




