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6話 飲みすぎの代償


 「自分で勝手に帰れ」なんて言っていたけど、結局真嶋さんはゲロくさい私に服とタオルを貸してくれたし、恥ずかしかったろうにコンビニで替えの下着まで買ってきてくれた。しかも、ちょっとゲロがついちゃった私の服を洗濯までしてくれるという気の利かせようだった。

 もちろん、二日酔いでグロッキーな私はそんなことを考える余裕もなく、家に帰らなくてはという使命感で必死だった。タクシーでふと思い当った時には後の祭り。

 真嶋さん、私のパンツ洗ったんだ・・・。いや、気を利かせすぎですから。パンツはほっといてほしかった、切実に。こんなことが起こるなんて考えてもいなかったから、かわいらしいレースの下着なんかじゃなく、某デパート3枚1000円の綿パンツ。もちろんブラとおそろいのはずもなし。だから彼氏できないんだわ、私。

 


 猛烈に消えてなくなりたいです。



 二日酔いが収まってからは、自宅のベットで悶絶した。超じたばたして、いい年の女が泣きに泣いた。こんな恥ずかしいことってあるだろうか、いや、ない。

 あまりに私が挙動不審なので、両親には私が一夜の過ちでも犯したのではと心配された。ある意味一夜の過ちだわなんて一瞬でも考えてしまった私を絞め殺してやりたかった。

 


 こんなにも恥ずかしいのに、週末というのは平等に明けてしまうらしい。

 職場でどんな冷たい目線にさらされるのだろうとびくびくしていた私を待っていたのは、意外にも生暖かい目だった。それはそれで恥ずかしいけど、みんな私の暴走を「同期の三島を庇った」とか、「場を盛り上げた」とか概ね好意的に捉えてくれたかららしい。


「ねえ、私昨日のこと全然覚えてないんだけど・・・」


 ここは勇気を振り絞って空白の2時間の内容を聞かねばなるまい。真嶋さんは3枚一組1000円綿パンツのことを面白半分で言いふらす人ではないけど、みんながどういう認識でいるのかが非常に気になる。とりあえず同期の三島をこそこそと呼び出して聞くと、


「たしか、真嶋さんが会の途中でダウンしたあんたを、先に連れて帰ってくれたんだよ。うちらも超盛り上がっちゃってたから、あんたのこと構えなくてさ。」


「え、マジで?」


「私たち朝まで飲んでたんだけど、しばらくしてあんたを実家においてきたって言って、真嶋さん顔出しに来たもの。すぐ帰っちゃったけどさ。ついでに会費あんたの分も払ってってくれたんだからちゃんとお礼して返しなさいよ。」


 さらに驚いたことには、真嶋さんは私を無事実家に送り届けたとみんなに報告していたようで、あの3枚一組綿パンツ洗濯事件はなかったことにしてくれたのだ。考えてみれば、未婚の女子が男に持ち帰られたら噂になる。真嶋さんなりに配慮までしてくれたらしい。どれだけできる男なんだ。もう足を向けて寝れないではないか。

 

「ねえ、私。ゲロはいてた?」


「店にいる間は吐いてなかったけど、なにあんた。吐いたの?タクシーで?」


「いや、酔っぱらってたから覚えてなくてさ。吐いてないならいいんだ。」


 その日の午後、私は職場のみんなにお詫びとして菓子折りを持って行ったけど、取引先に直行直帰の真嶋さんには会えずじまいだった。

 日を空ければ空けるほど会いづらくなるので、明日朝一番にお金とお詫びの品を渡すことにしよう。

 

 一度の飲み会でこの出費、高くついたなあ。もう。


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