カーティスの場合 別視点
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今回から、何話かカーティス視点に移します
視点が変わっただけで、内容はかぶります
アスカが姫を城へ連れて帰ってきたその日、慌しく俺は王城へと呼びつけられた
「お前に、異界の娘の監視・護衛を任せる」
異界の娘だと?
噂で聞いたことのある、この世界を変えることの出来るかもしれないというあれか
くだらない噂だと正直思っていた
この世界には確かに精霊が存在しているんだろうが、俺が生まれた頃にはめったに人前に出てくることは無かったし、城に勤めるようになるまでは俺は会ったことがなかった
今更、精霊に何を望むというのだ
この世界は人間だけでも生きていられる
多少は不便なこともあるだろうが、人間には知恵があるのだ
上の人間の考えていることは、わかっている
国のため、世界のためなどと口ではわめいてるが、自分のため、世界での権力を握るための抑止力にでもしようと考えているのだろう
「承知いたしました」
俺にはどうでもいいことだった
上からの命令は絶対だ
俺はただの騎士に過ぎないのだから
この一言を加えられるまでは
「その娘を誘惑し、精霊の力を得るようであればこちらに引き込め。ただし、見込み違いであったならば、遠慮はいらん、始末しろ」
誘惑だと・・・?
わき目も振らずに剣一本でここまでのし上がってきた
時々、友人達に誘われて、花町に出かけることはあっても
女性との付き合いの経験などなかった
そんな俺に出来る任務なのだろうか
「心配はいらん。保険だ。その道に長けているものをあてがっているが、もしかして、という場合もある。念のためにお前にも任務を与える」
憂鬱だった
初めて彼女に会ったときも、うまく笑えていただろうか
友人達からは無表情だとよく言われている
任務のため、俺は精一杯彼女に笑いかけた(はずだと思う)
彼女は終始おどおどとしていて
不安そうにしていたが、目はしっかりと人の目をみていた
侍女たちが噂するように、黒髪に、黒目のひどく危い容姿の少女だった
だが、不思議と忌み嫌われるような嫌悪感はもたなかった
黒髪は手入れの行き届いた、美しいものだったし
大きく黒曜石のような瞳は見るものすべてを吸い込みそうなほど澄んでいた
職業柄、目を見れば人となりは想像出来た
彼女はおどおどしている見た目ほど、弱くは無い
この国の連中が御しやすそうだと言っていたが、見る目のないやつらだと思った
意志の強い、美しい瞳だ
任務とはいえ、こんな何も知らない少女を俺は・・・
もんもんと悩む心を振り払おうと剣を振った
朝の鍛練を切り上げようかとしているところに、彼女がひょっこり現れた
大の男をよろよろと抱えながら歩いてきたのだ
「どうかしたのか?」
彼女に近づき声をかけると、ホッとした様子で顔を上げた
「あ、あの、この人・・・」
言われて見てみれば、ダナンだった
この男は平民出身ということもあり、たいした腕も無い貴族連中によく絡まれるのだ
一度伸してやればいいものを、彼はその性格ゆえ甘んじて暴力を受けいれているのだ
おそらく、彼が延びれいるところを発見して連れてきたのだろう
俺はダナンを医務室に運ぶように部下に言いつけると彼女に礼を言ったが
彼女は少し考えて、「あの、ありがとうございます」とだけ言った
「鍛練を見に来たのか?」
「あ、はい。しばらく体を動かしていなかったので、少し動かしたかったもので・・・」
俺は離れていたため気がつかなかったが、少し前から彼女は鍛練所を見ていたようだ
元の世界では鍛練でもしていたのだろうか
彼女の芯の強さを見られるかもしれない
あの意志の強い目をもう一度よく見たかった
自分でもよくわからない思いが心を占める
「邪魔にならなければ、空いているところを使っても構わない」
「ありがとうございます!」
彼女が笑顔で俺の顔をみた
瞬間、俺はその瞳に囚われた気がした
なんて純粋な綺麗な瞳だろうか
キラキラと二つの黒曜石に見つめられ、俺は自分の心に戸惑っていた




