第十三話:今度こそ
第十三話:今度こそ
ゆっくりと起き上がった少女は、不思議そうに自分の体を見つめていた。
白銀色に鈍く輝く新しい手足を、ベッドの上でやや震わせながら動かしている。
痛みがどこにもないことを確かめるように何度か指先を握りしめ、それから、僕の方を向いてゆっくりと上体を起こした。
少女は僕を見て、表情を変えずに静かな声で尋ねてきた。
「あなたがご主人さまですか? お名前を教えてもらってもいいでしょうか?」
「僕はエクス。君の名前を教えてもらってもいいかな?」
僕がそう聞き返すと、少女は感情の読めない瞳のまま、小さく頭を下げた。
「はい、私はリーネと申しますわ」
リーネ、と彼女が答えた瞬間。
僕の頬を、一筋の涙が伝い落ちた。
前の人生で、どれだけ手を尽くしても、どんなに科学の力を尽くしても救えなかった、大好きだった姉さんの命。
そのときの深い悔しさと無力感が、目の前で確かに息をして、自分の名前を口にしている彼女の姿を見たことで、一気に溢れ出してしまったのだ。
僕は涙を拭いもせず、満面の笑顔を浮かべた。
「うん、よろしくね。リーネ」
リーネはよろよろとした足取りでベッドの上に座り直すと、僕の方をじっと見つめた。
やはり無表情のまま、首を小さく傾げる。
「エクス様が助けてくれたのですね。なぜ、あなたが泣くのですか?」
不思議そうに問いかけるリーネの目を、僕はまっすぐに見つめ返した。
「今度こそ、助けられたからだよ。……生きていてくれて、助かってくれてありがとう」
僕の言葉に、リーネはただ静かに目を瞬かせていた。
白銀の手足に宿った新しい鼓動は、これから始まる僕たちの物語を祝福するように、トントンと力強く部屋の中に響き渡っていた。
――第一幕『失格貴族の魔導技術』・完
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
エクスの物語はまだ始まったばかりですが、少しずつ仲間が集まり、王国再建への第一歩が見え始めました。
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これからもエクスたちらしい、少し不思議で優しい物語をお届けできればと思います。




