家の本棚。
電子書籍は便利だ。どれだけいやらしいBL本を買っても、夫にも子供にも見つかることはない。
しかも場所も取らないのでいくらでも本を購入できる。気がつけば百冊のBL本。もし紙で買っていたらと思うと背筋が震えた。
だが、どうしてもやっぱり紙で揃えたい本はある。絵が綺麗。見開きに見ごたえがある。デジタルはいつサービスが終了するかわからないので、特別大好きな先生の本だけは紙でも揃えておきたい。紙の時代に出版された本は電子化されても見栄えが違う。昔の本ほど古本屋を使ってでも紙で集めたりした。
雑学や評論などそもそも電子化されていない本もある。なんだかんだで結局紙の積読は増える一方だった。
いつの間にかあの男の影は父の身辺から消えていた。
母が亡くなってすぐに家を出た私には何があったのかわからない。たまに父の様子を見に行っていた姉はときどきあの男を見かけると言っていた。
母があの電話のことを姉にも相談したのかは知らない。日記にもそんなことは書かれてなかった。だが、あの男が気にならないのかと聞いたとき、姉は言った。
「もうジイさんも先は短いんだから、好きにさせてやりなさい」
短いと姉が言った父の先は、母が亡くなってから三十年以上もあった。
てっきりあの男に騙されて退職金を貢がされてるのかとか、連帯保証人にされてるのだろうと思っていた。
父はかなりの吝嗇家で、娘たちの結婚祝いにも一円も出さないし、甥姪の結婚祝いも三万円で済ます人だった。その吝嗇家ぶりは家計簿代わりにメモしていた預金通帳に事細かく記入されていた。
その中にあの男の娘の結婚祝いが書いてあった。五万円。新築祝い五万円。出産祝い五万円。大盤振る舞いである。
家族から見れば大盤振る舞いであるが、果たしてあの男から見ればどうだったのであろうか。
結局それ以上、父が誰かにお金を渡した形跡は無かった。
月々の食費も、光熱費も、実に質素な出費だった。
子供の頃、母方の祖母に「あんたのお父さんのお腹には家が三軒建っている」と言われたことが嘘のように、質素な生活ぶりだった。
父が残してくれたお金で葬式も出せたし、実家の処分も出来た。
公民館からもいらないと言われていた父自慢の立派な本たちは、本棚の前で捨てられることもなく縛られたまま放置されていた。そしてそのまま捨てられた。
ほんの少し相続出来た遺産で、私はやっぱり本を買う。
子供のとき読みたかった絵本も、児童書も、ちょっと変わった辞書も図鑑も。
そしてやっぱりBL本も。
おわり
本棚事情はそれぞれのご家庭でいろいろあると思います。
いろんな人の本棚事情が知りたいなと思いながら書きました。
お読みいただき、ありがとうございました。
次はOG続編か犬兄弟3。




