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人魚の呪針

壁を残り2枚、1枚と破っていく桜たち。


そこで、因縁の相手との再戦で・・・?


桜に待ち構えた、運命は?

ブワッと何かの気配がする。

身体中に鳥肌が広がっていく。

・・・これが、人魚の霊力。

「もうすぐだね、姉さん。」

「もうすぐ・・・だな。」

少し進む。

コンクリートの床から、本物の水中っぽくなってきた。

こつ、こつという足音も聞こえなくなった。

代わりに、水音が聞こえてくる。

「2枚目は・・・僕が破るね。」

スイリくんはモーニングスターの鎖を握り、おおきく振りかぶって勢いをつけると壁にぶつけた。


ガラガラ


大きな音を立て、壁は崩れ落ちていく。

残骸を見る限り、かなり分厚い壁だったみたい。

すると急に、心臓が大きく脈を打ち始めた。


ドクドクドクドク


息が荒くなる。

どうにか落ち着けようと、深呼吸をしようとしたけど・・・無理だった。

心臓と口が、自分のものじゃないみたい。

不意に、銃を握る手に力が籠る。

その時だった。

「大丈夫だよ。」

ふといなりくんがそう話しかけてきた。

銃を持っていない方の手を握ってくれる。

だんだんと息が落ち着いてくる。

「俺だけじゃない、アイリやスイリもいる。」

「・・・大丈夫かな?」

「大丈夫だって!俺と桜は、最強だから!」

ふふん、どうだ!と胸をはるいなりくんをみて、笑いが漏れる。

「だよね、最強だよね!」

すると。

「ここから先は・・・完全なる水中。」

「・・・?『完全なる』って・・・!」

聞き捨てならないことをスイリくんが言った。

「あれ、言ってなかったけ。地界の泉と近くなるから、水中になるんだよ。」

「・・・息できないよ?」

「大丈夫、霊力のある人なら息は十分にできる。」

スイリくんは私の方を見ずに淡々と答えた。

・・・ならいい、のかな?

「水中か・・・沈まないかな?」

「うまくやれば沈まない。後、桜・・・」

ずっと最後の壁と向かい合っていたアイリちゃんが急にこちらを振り返る。

「最後の壁は・・・桜、破ってくれないか?」

「わ、私が?いいの、破って。」

「いいんだ。さあ、銃を持って。」

アイリちゃんが私に言う。

自然と銃を持つ腕が上がっていく。

「さあ!撃って!桜!」

いなりくんが剣を持ち上げる。

「いくよ!」


バン


ガラガラガラガラ


その瞬間、一気にこちらへ水流が流れ込んでくる。

霊力と水の勢いに、圧倒される。

「ふふふ・・・くると思っていましたよ、奴隷さん。それと・・・守護霊とその使い。」

いなりくんが怪我をした時の声。

間違いない・・・人魚だ!

暗闇のような水中だったけど、水流が落ち着くとうっすらと人魚の姿形が見えるようになってきた。

黒い尾鰭、深い紺色の肌。深い真紅の瞳。漆黒で、闇そのまんまの髪の毛。

すると。



サッちゃんはね 線路で足を なくしたよ


だから お前の 足を もらいに行くんだよ


今夜だよ サッちゃん



不気味な童謡、『サッちゃん』が聞こえてくる。

・・・間違いない!オウタだ!

「あなた方の足をもぎ取って差し上げるわ!」

高らかに人魚が言う。

「・・・どっちの話かな?」

気づくと、アイリちゃんはすでに人魚のすぐそばまで移動していた。

轟鎖を蛇のようにうねらせ、うまいこと人魚の首に巻きつける。

でも。

「邪魔よ、」

人魚は一切動じない。

「これでもかな?」

アイリちゃんは、人魚の腕を避けてよりきつく鎖を巻き付ける。

感電したのか、尾鰭が痙攣しているのが見える。

「っ・・・小賢しい真似を!」

すると、人魚は両手を胸の前で組む。

両手を一瞬でアイリちゃんの方へ向ける。

暗闇から、無数の槍がアイリちゃんに向かって飛んでくる。

アイリちゃんは大きく目を見開くと、轟鎖を取ろうとする。

しかし、人魚がガッチリと掴んではなさない。

「どうしてだ、お前のような雑魚霊だったら気絶するはずじゃ・・・!」

「オウタの力ね。ふふ、なんと皮肉。最も憎むオウタから殺される・・・素敵ね。」

人魚は歪んだ笑いを浮かべる。

そこで咄嗟にいなりくんが飛び出して、数本の槍を刀で受け止める。

「はい、相手はアイリだけじゃないよ・・・ちゃんと考えよっか。その小さな頭で。」

私も応戦しようと銃を人魚に向ける。

けど、水中のせいで足場が安定せず、狙いが定まらない。

沈むような感じはないし、動けるけど・・・地上よりははるかに不安定。

「ぼやぼやしてないで、ほら来るよ?」

この環境にもう慣れたように、スイリくんが隣へすいーっとくる。

「来るって・・・?何が?」

「わかってるでしょ。前見て。」

言われた通りに前を見る。


ばばばばっ!


いなりくんとアイリちゃんが身をひねり、素早く人魚から逃げる。

アイリちゃんの手には轟鎖。しっかりと取り戻せたみたいだ。

それより・・・今、何かが飛び出てくるような音がしたけど。

その時。

目の前に、小さな玉が飛んできた。

「びーだ・・・ま?」

「阿呆!避けろ」

私がビー玉を目の前に戸惑っていると、スイリくんが私を突き飛ばした。

スイリくんも素早く避ける。


ばちっ


弾けるような小さな音を立てると、その黒いビー玉は割れた。

そして、中からたくさんの白い針が飛んでくる。

「ななななっなにこれ!」

「だから避けろって言ったんだのんびりするな。」

スイリくんはモーニングスターで白い針を全て弾き飛ばす。

白い針は流れていく。

よくよく見ると・・・人魚の首に、このビー玉のネックレスがかかっている。

手にもたくさん握っている。

「あぶねっ当たるとこだった!」

人魚の周りにいる私たち4人。

ちょうど斜め左前にいるいなりくんが、叫んでいる。

「迷惑だな・・・これだったら、近づけないぞ。」

アイリちゃんはヌンチャクを広げる。

わずかに人魚にはとどかない。

「待って、僕がやってみる。」

すぐ隣から、スイリくんが水をかいて人魚の元へ行く。

「懲りないわね。」

人魚はスイリくんを睨むと、再び両手を組む。

「スイリ!槍が・・・」

「わかってる、いなり。2度同じ攻撃は受けない。」

スイリくんは、四方八方から飛んでくる槍を見る。

そして、腕を伸ばしてハンマー投げのように、自分中心にモーニングスターを振り回す。


バリバリ


槍の持ち手が避けて砕けていく音がかすかに聞こえる。

そして、そのまま人魚にモーニングスターを当てようとする。

ただ、そこで。

「邪魔ね。」

人魚は右手をスイリくんの方へ向ける。

一瞬光ったと思うと、すぐに盾が形成される。

そして、人魚はなんとその盾を放り投げた。

「投げた・・・?」

スイリくんはそう言って首を傾げる。

モーニングスターを振りかぶり、砕こうとする。

その時だった。


ギュウイイン


すごい音を立てて、盾が高速回転し始めた。

軌道を変化させると、モーニングスターを避けてスイリくんの腕へと向かっていく。

「スイリ!避けろ!」

アイリちゃんが叫ぶ。

その顔はやや青ざめていた。

こっちへ来ようとするけど・・・到底間に合わない!

スイリくんは避けようとするけど、その度に盾がスピードを上げてついてくる・・・・!

「私が・・・」

私は、とにかく急いで泳ぐ。

泳げないし、水泳は得意じゃないけどとにかく、とにかく早く。

すると、不思議なことにスイスイと進んでいく。

神様・・・ありがとう!

どうにかこうにか、盾の射程圏内まではいる。

盾の破壊をしようと、銃を構える。

すると、盾がさらに軌道を変えてこちらへ飛んでくる。

「やっば・・・!」

スイリくんでも撒けなかったのを見ると・・・まずい。

「阿呆!ほんとこっちくるな、お前まで・・・!」

すると。

首の後ろが急に熱くなって、体の感覚がより研ぎ澄まされていく。

避けよう、と思ったら素早く避けられる。

「なんで・・・?」

自分の口からポロリ、と言葉が漏れた。

「スイリは一旦下がれ!」

アイリちゃんの指示が聞こえてくる。

大きな盾を目の前にする。

怯む気持ちは・・・いつの間にかなくなっていた。

「すばしっこい・・・」

人魚の苛立った声が聞こえてくる。

かすかな舌打ちの音と共に、槍が飛んでくる音が聞こえる。

早く、盾を破壊しないと・・・槍に体を貫かれて・・・・!

その時だった。


パキン、ピシピシ


凍りつくような音が聞こえてきた。

それと同時に、辺りが一気に冷える。

「桜に触るな、邪魔だ。」

いなりくんの怒った声が聞こえてくる。

盾に集中していて見えないけど・・・多分。

陶器の魚を倒したときに使っていた・・・・あの技だ!

一度深く呼吸をする。

・・・うん、なんだか感覚がさらに研ぎ澄まされてきた。

「ここだ!」

直感的に感じたところへ一発打つ。

当たらないよね・・・多分。

と思っていた。のに。


ギュウイイン


盾が急に、撃った方向へ軌道を変更。

バラバラに砕け散る。

「へ・・・・?」

自分でも思う、間抜けな声がでてきた。

それほど驚いた。

どうして、盾は軌道を変えたの・・・?当たりに行った?

けど。

今は人魚から逃げる、最優先。

その時だった。


グサっ


「!?!?」

首筋に何かが刺さる。

ズキズキと痛い・・・今まで、感じてきた痛み、どれよりも。

息ができない。

どうにか首筋を触ろうとするけど、手が震えて震えて腕を上げることもままならない。

「桜っ!」

いなりくんの叫ぶ声が聞こえる。

「いっ・・・」

声を出そうとして、ひどく喉が痛くなった。

血の味がする。

目の前がチカチカして、よくわからない。

その時だった。


がぽっ


空いていた口から、空気の塊がまとまって出ていった。

鼻の穴に大量に水が入る。

思わずむせてしまう。


ゴロゴロ


胸の辺りから変な音が聞こえる。

喉と鼻が痛い。

水の感触が倍になり、今まで落ち着いていた髪の毛が一気に水中を漂う。

そして、ずるずると沈んでいく。

沈んでいるかどうかはわからない。ただの感だ。


ズキズキっ


首筋のあたりの痛みがひどくなってくる。

頭が痛い。

いや・・・もう全部痛い。

どこが痛いかとかわからない。

いなりくん、助け・・・

___________________________________________________

「桜っ!!!!」

いなりは桜の名前を叫ぶ。

こんなことが起こるとは、誰も想像できなかった。

桜の首筋に、白い針の・・・何十倍も大きな針が突き立てられたのだ。

「「桜!!」」

2人の声が重なる。

普段冷静なスイリも、珍しく取り乱している。

「いなり!お前は桜を!」

「わかった・・・桜っ!桜!」

いなりは必死に、桜の名前を呼ぶ。

「まずい、首は・・・!」

桜の体が、闇の中へ飲まれていく。

いなりも続けて下へ下へと泳いでいった。

みりぐらむです!

お詫びってことで投稿しちゃいました⭐︎


学園祭編、『うるるの本当』からずっと引っ張られてきた謎、桜の首にある『霊印』結局、これはなんでしょうね・・・?

桜の運命は・・・!?

第53話に期待してくれたら本当に嬉しいです!!


『面白いな〜』『次も読みたい!』と思っていただけたら、ブクマ・評価待ってます!

感想・レビューもお願いします!

あらすじにも書いているんですが・・・ログインなしでできるようにしました!

気軽にしてくれればな、と思います!

次話でまた会いましょう!では!


7月30日、111PV感謝すぎます・・・すごいな。


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