うるるさんの『本当』
学園祭の手伝いをするために大学に来たんだけど、
なんだこの建物!?どこの王族の豪邸ですか!?
・・・でっかいなここ。
キョロキョロ、キョロキョロとついつい辺りを見回してしまう。
広い見た目に反して、中は普通の教室だけど・・・・。
広い。とにかく広い。かくれんぼしたら一生見つからなさそうだ。
「何回キョロキョロすんだよ。さすがに慣れてくれ。桜。」
うるるさんはいつもの声よりも少し高い、初めて出会った時の声をしていた。
「気持ち悪い。その声直してくれないか?吐きそうになる。」
「これがあたしのキャラなの!」
うるるさんは先輩のことを睨む。
「俺も気持ち悪い。おにぎり吐いちゃうよ?」
「どっちの声にも慣れろよ!!この後教室だから!!メンバーにバレたらやばいから!!」
いつもより話し方が強い。
ちょっとだけ、私の学校みたいに人は少ないけど校舎が大きいパターンかな。
と思った。
でも、そんなわけなかった。
廊下からわかる部屋は教室、教室、教室ばっか。
しかも、ロッカーにはバッグが詰まっている。
ちゃんと使われている証拠だ。
「窓の外を見ないでください。」
ふと、一つの教室から先生の怒った声が聞こえる。
「学園祭準備で別の学校の関係者が来ることがあります。と、言いましたよね?」
・・・私たちのことだ。
なんだろう、何もしてないのに・・・
罪・悪・感!!
「・・・注目されるのは好きじゃない。早く歩いてくれ。うるる。」
先生から注意されていた教室を見ると・・・
生徒のほとんど・・・特に女子。
窓の外を見ている。
原因はぜっっっっったいに蓮華先輩だ。
「蓮華の場合別だろうけどね〜。」
「あたしも狐に賛成。」
うるるさんが珍しくいなりくんの意見に乗っている。
・・・ついでに私も賛成。
と心の中で言っておく。
そして、自分で
心の中で言っても意味ないだろ!!
とつっこんでしまう。
蓮華先輩の場合、ウルフさんも同じこと言うだろうな。
「ついた。」
「・・・うるる、教室じゃないよ〜?ここ。」
ついたのは用具室。
棚にクラスの名前が書かれたでっかい段ボールがたくさん積まれている。
「用具室。運んでもらうから。」
うるるさんはどんどん仕事を振り分けていく。
「ねぇー俺のは?」
「お前が持ったら荷物が浮いているように見えるから持たせるのは無理!!」
ちぇ、といなりくんは言って私の横へ歩いてくる。
「・・・何?」
「俺手伝う。」
「狐、やめとけ。」
先輩の言葉を無視していなりくんは私が持っている段ボールの端っこをそっと持った。
ちょっとだけど軽くなる。
「ね!こうやったらいいでしょ?」
「まぁね・・・。」
うるるさんはやれやれ、とため息をつく。
さっきから思っていたけど・・・。
うるるさん、このマジで重い箱2つ持ってる・・・。すごい。
あんな華奢な見た目で、超力持ち。
「この箱の中身ってなんですか?」
「いろいろと。重しとか。」
うるるさんから箱を受け取る時、
よっしゃ!!ちっちゃい箱!
と思ったんだけど・・・。
まさか中身は重しだったのね。通りで重いわけだ。
「ここ。」
いなりくんのおかげで、だいぶ軽く持つことができた。
それにしても・・・。
先輩とうるるさんは何一つ顔色を変えないまま運んでいる。
教室の前で箱を下ろした時に、
(本当は軽い物しか入っていないんじゃないの・・・?)
と思って持ってみたらすごく重かった。
重し箱よりも重い。
ほんと何が入ってんだーーーー!!!
と叫びたかった。
ドアの前でしばらく待機。
「ふぅ、重かった・・・。」
「西青葉まで来て力仕事か・・・。」
蓮華先輩は肩をすくめた。
疲れたー、疲れたー、とうるるさんは言うけど・・・
疲れたどころじゃないでしょ普通!!
けれどうるるさんは元から普通じゃないからな・・・。
うるるさん以外に全国のどこにも『大学生殺し屋』
なんていないでしょ!!海外は知らんけど!!
「いなりくん、」
「何?」
「手伝ってくれて・・・ありがと。」
いなりくんはなぜか驚いた顔をした。
でもすぐにいつも通りのイタズラ好きそうな笑顔に戻った。
「うん。」
「なんで驚いたの??」
「いや〜桜がお礼言ってくれることそんなにない気がするんだよね〜」
「ちゃんと言ってるよ!!」
「言ってないかもね〜〜。」
・・・悔しいけど、『確かに』と思っちゃう。
お礼言っているつもりだけど・・・・その記憶がない。
「そんなもんだろ。佐倉さん。」
先輩が言ってくれるが・・・・。
やっぱり、お礼がないって言うのは気持ちが悪い。
桜は気づかなかった。
いなりが嘘をついたことに。
桜がお辞儀をした時、見えたのだ。
普段長い髪の毛で隠れている首元についた・・・
『霊』の印。
この印はいなりは1人しか見たことがなかった。
いなりの喉元をツウッと冷や汗が滴り、心臓がバクバクと音を立てる。
・・・まさか、桜にも。
いや、見間違い、見間違いだ。
いなりはそう、考えていたが・・・
「なんで驚いたの??」
と聞かれ、咄嗟に
「いや〜桜がお礼言ってくれることそんなにない気がするんだよね〜」
と言ってしまった。その後、悶々と考え込む桜を見て、
いなりの心はそっと傷がついた。
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授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
・・・そろそろ出番だな。
うるるさんは軽く自己紹介をしてもらう、と言っていたけど・・・・
大学生相手に自己紹介・・・こっわ。
「緊張すんなよ。大丈夫だからさ。」
緊張で固まっている私にうるるさんはそう言ってくれるけど・・・・
怖いのに変わりはないんだよ!!
ガラガラっと扉を開ける音がする。
「 壬生!連れてきた?」
ドアからひょこっと顔を出したのは大学生の男の子。
背が低めで、なんだか親近感。
「壬生って・・・?」
「あたしの名前。」
壬生・・・、聞いたことのない苗字。
「入って入って〜!」
その男の子は私たちを手招きすると、また教室へ引っ込んでいった。
教室にはそれぞれ前の方にドアが一つ、後ろにドアが一つある。
男の子が顔を出したのは後ろのドアだ。
でも前の方からは・・・・
女の子たちがひょこひょこ顔を出している。
・・みんな可愛い!美人!
この大学に入る人はみんな勉強とか運動がすごい人だよね!?
最強やないか・・・。
でも、いつ女の子たちは先輩を見た?
それが不思議。
窓にはカーテンがかかっている。
もしかしたら、さっきの男の子が顔を出した一瞬で・・・!
恐るべしイケメンオーラ・・・。
そう思ったら、蓮華先輩がいつもの3倍輝いているように見えた。
先輩は私からの視線に気づいたのか、私の方を見る。
「・・・佐倉さん?ゴミでもついてる?」
「ついてませんっ」
先輩は、『そうか』と言うとドアを開けて中へ入っていった。
前のドアから突き出していた頭も教室へ引っ込んでいった。
「壬生って・・・?」
「あたしの本名。学校は流石に偽名じゃいけないからね。」
うるるさんはそう言う。
「ふーん。じゃあ今度から『壬生』って呼ぶね。」
いなりくんが冗談混じりにいった。
きっと断られる・・・。そう思っていたけれど、うるるさんの反応は予想に反してO Kだった。
「別にいい。」
「いいの!?」
「敵の前ではやめろよ。あたしだって大群でかかられたら危ない。」
きっと、苗字が珍しいからバレたらひとたまりもないんだろうな。
「壬生〜早く来て〜。」
さっきの男の子がまた同じように顔を覗かせている。
「わかったわかった。」
さ、行こ。
と言うようにうるるさんがドアの前で振り向く。
私といなりくんは教室へ入った。
中ではもう先輩が自己紹介を終えていたみたいだ。
黒板にチョークで『天羽蓮華』と大きく書かれている。
先輩はいつもと変わらない顔・・・だけど、
ちょっぴり嫌そうだ。
さっき、『目立つのは好きじゃない』って言っていたからな・・・。
「あ、もう1人キタキタ!」
その男の子は私たちの方を向く。
「じゃ、ここに立って名前とどう言う関係かをお願い!」
関係性については2人で話して、
『いとこ』
ということにしている。
頭が大きな縄で締め付けられているように痛い。
威圧的ではないけど・・・しっかりとした視線が私の体を突き刺してくる。
「佐倉桜です。私は、壬生さんのいとこです。」
どう、かな。しっかりと言えたよね・・・?
パチパチ、とまばらだが拍手をしてくれる大学生さん。
・・・第一難関突破!
後ろで『佐倉桜』と男の子が書いてくれる。
「学園祭のことは?」
「もう話しているよ〜。」
うるるさんはいつもはしないような純粋無垢スマイルを浮かべた。
口調も違う。
申し訳ないけど・・・気持ち悪い・・・・。
本当にごめんだけど・・・・戻して欲しい。
そんな気持ちだった。
「うるる、すごいキャラ違うな。」
先輩に耳打ちされた。
「『殺し屋』と『大学生』・・・どっちが本当なんでしょうね。」
「多分、どっちもだ。」
「それって・・・?」
「俺みたいなものだ。『中学生』と『幽霊警察』。」
いや、先輩の場合そんなにキャラ変わっていないから例えになんない・・・。
「天羽さんはあっちのグループ、佐倉さんはあっちのグループに入ってね。」
ふと見てみると右と左、学園祭の出し物の『お化け屋敷』と『出店』で分かれているようだ。
ふとうるるさんの方を見ると、いなりくんと何かを話している。
多分、いなりくんが行く方のグループだろう。
そして、私はお化け屋敷のグループへ入った。
「いらっしゃい、佐倉さん!」
そう言ってにこやかに話しかけてくれる子がいる。
うるるさんの言っていた、学園祭が成功しないと大学を辞めちゃう子だ。
確か・・・高橋美咲さん、だっけ。
うるるさんに、
『美咲にはそのー、あたしが『大学辞めること』言ったの言わないでな。というか、それも言わないでな。できる限り、知らないってことで。』
と言われている。
「美咲さん、こんにちは!今日からしばらくお世話になります!」
「桜って呼んでいい?さん付けとか私好きじゃなくって〜。」
本当にいい子。
中学生の私がいうことじゃないけど・・・なんか馴染みやすい。
誰とでも仲がいいんだろうな、そう思った。
うるるさんみたいに運動が得意そうには見えないから・・・勉強で入学したのかな。
「美咲!ヘマしないでよ!」
いなりくんと話終わったうるるさんがこっちへくる。
「わかってるよ!朱音!」
朱音・・・。今日は知ることが本当に多い1日だ。
壬生朱音。うるるさんの本当の名前。
「よし!話し合い始めよっか〜」
私からすると違和感でしかない口調のうるるさんが進行をするみたい。
・・・耐え切れるかな。
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・・・なんでこんなに見られてんだ。
謎に俺はうるるに出店当番・・・しかも、裏方ではなく接客。
無理無理無理。心の中ではそう思ってる。
基本的に目立たない。
霊力のある人間にバレたら普通に無理。
幽霊警察だってことは佐倉さん、狐、うるる、ウルフ以外には言いたくない。
言う人にはそりゃ言うが・・・。
目立たない、表舞台に立たない。
それで生きてきたんだが・・・。
「天羽さん??珍しい苗字〜!」
「蓮華くんって呼んでいい?」
「モデルさんなの?すごくかっこいいね!」
「後で写真撮ってください!」
・・・話しかけるな。進行の人が困ってるだろ。
自分はどうやらかっこいい・・・『らしい』。
顔・・・?中身だろ。
顔だけ見て寄ってくる人は・・・すぐ捨てる。
そう言うやつは笑顔で対応すれば、なんとかなる。
「すみません、学園祭の話を聞きたいんですけど・・」
そう言っただけでみんな黙る。
・・・なんなんだよ。
そう思うし、そう言ってやりたかった。
でも、『そういう奴』じゃない人は・・・
顔で寄ってこない。
顔で決めつけるのはなんにせよ、よくない。
運動は苦手だ。
だが、小学校の頃『サッカーができる』
と顔で決めつけられ、男友達に死ぬほどサッカーをやらされた。
皮肉なことに、運動はできるようになってしまった。
「はい!俺たちの方は出店をやります!やりたい店がある人!」
柔らかな笑顔を見せて進行をする彼。
俺は彼がイケメンだと思う。
「本屋さん!」
「当たり前にダメだろそれ。」
あはは、と笑う声が一気に出る。
「のれんとか私は作りたいかな〜。美術得意だし。」
「かなは美術すごいもんな〜。将来画家だっけ?」
「お話はおしまい!話題戻すよ!」
話を元に戻す声が出る。俺が言おうか迷ったけど・・・ありがたい。
「見てもらいたいよね!たくさんの人に!そしたらきっと食べてももらえるし・・・。」
「て作りだよな〜やっぱり。」
時々線路から外れ、戻されを繰り返して『クレープ』を作ることに決まった。
・・・でもなんで俺は接客から変えられないんだ?
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「桜!そこ持ってて!」
「わかりました!」
「蓮華くん、クレープのレシピ探してくんない?」
「いいですよ。」
「お化け役誰??朱音。」
「桜がやってくれるんだって〜!」
「おっ天羽さんうまいじゃーん!」
「料理は得意ではないんですが・・・。」
「だんだんできてきたね!全貌!」
「私が迷子になっちゃいそうです・・・」
「ちゃんと案内人できんの〜?」
「飾り付け完璧!このまま本番行けちゃいそうだね!」
「味最高!!」
そんなこんなで、うるるさんと私と先輩の学園祭準備は終わった。
一週間に2回しか集まってないのに・・・
すっごく早かった!!
・・・でも、またメモ用紙がなくなってしまった・・・。
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それから一週間後・・・
「西青葉大学、第97回西青葉学園祭を開始いたします!」
校長先生の掛け声で私たちの学園祭は幕を開けた!
だーーーいぶ平和な回が続きましたね!!
次の回にはバトル入れる予定です・・・!
ここまで読んでくれてありがとうございます!
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毎日投稿9日目!




