↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小心貴族と竜の姫  作者: 衣谷強


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/73

第七話 近付いて、離れて その四

「……ルビナ、キーヤ」

「はい!」

「何かご用ですか?」

「……私が女性と触れる事に慣れられる様、側に居てくれる事、それは有り難い」

「はい!」

「ありがとうございます」

「……だが……」


 長椅子で本を読む私。

 そして膝の触れるか触れないかの距離で、私を挟み込むルビナとキーヤ。


「ここまで近く座る必要はあるのか」


 無いよね?

 両側から花の様な果実の様な甘い匂いが漂って、くらくらしそうなんですが。


「ですが、以前読んだ本によりますと、側に居る時間が長い程思慕の情が高まるそうなので、ディアンさんの女性への気持ちを変えるにはこれが一番です」

「私もかつて囚われていた辛い思い出が、ディアン様と一緒にいる事で辛くなくなったので、同じ様に出来たら嬉しいです」


 断り辛ぁい! 特にルビナ!

 しかしこのままだと、借りた本の内容を確認する作業に差し支える!


「そうだ。ルビナ、揚げ鳥は知っているか」

「揚げ鳥、ですか?」

「ふと食べたくなってな。昼食に頼めるか」

「分かりました! スフェンさんに聞いて作ってみます!」

「キーヤは揚げ鳥は知っているな」

「は、はい。ですが作った事は……」

「それでもどんな物か、どんな味か、知っている事を伝えるだけでもルビナの助けになる。頼めるか」

「分かりました!」


 よし、これで二人を厨房に行かせれば、この甘美な地獄から解放される。


「美味しいのを作って参りますね!」

「が、頑張ります!」


 二人が張り切って厨房へと向かうのを見送って、ほっと息を吐く。

 よし、本の続きを確認するとしよう。




 ……本の確認は順調に進んでいるのに、何だか落ち着かない。

 居ないのが分かってる筈なのに、何度も本から目を上げてしまう。

 ……まさか二人が側に居ない事を、寂しいと感じているのか私は……。


「……馬鹿な……」


 そんな筈は無い。

 私は元々人と深く関わらない様にしてきた。

 それを当たり前にして生きてきたじゃないか。

 孤独を愛する、なんて格好良い物じゃ無い。

 私自身の価値が薄く、相手にされないだけだ。


「……様子を見に行くか」


 何かに言い訳する様に呟くと、本を置いて立ち上がる。

 そうだ。ルビナがいくら賢いとしても、人の世界に慣れていない。

 不適切な知識に触れないか見守らないといけないし。

 キーヤも侯爵家で令嬢として育った身だ。

 高飛車と気位は別物だと知り、反省したとは言え、意図せず何か余計な事を仕出かさないとも限らない。

 そう、私はその為に様子を見に行くのだ。

 決して寂しさを紛らわせる為では……。


「まぁ! 口づけとはその様な意味を持つのですね!」

「そうなのです! 愛する殿方から与えられる口づけは、乙女の憧れなのです!」

「以前演劇で、最後に口づけをしていたのはそう言う意味だったのですね!」

「いずれ、私も……!」


 ほぉらやっぱりそうだったあああぁぁぁ!

 私は間違っていなかった!


「パイロープ様。ナイトル様。淑女の話としてはいささかはしたないですな」

「あ、そうなのですね」

「も、申し訳ありません! お料理をしながら話していたら、つい……!」


 流石スフェンさん! ルビナの礼節の師匠だけの事はある。


「淑女らしく慎みをお持ちください。部屋でもオブシ様にすり寄っていましたが、あれは頂けません」


 おお! おお! 言ってやってくださいスフェンさん!


「同じ部屋の中に居て、時に近寄り、時に離れ、自分からは求めず、しかし常に求めに応じる姿勢を保つのです」

「はい!」

「分かりました!」


 ……何だか不安を感じる。


「ディアン様も見ておられますよ」

「あ、ディアン様!」

「えっ、あ、その、失礼しました!」


 ……スフェンさんめ。私が来たからたしなめる側に回ったな?

 様子を見に来て正解だった。

 来なかったらどうなっていた事か……。

 身震いしそうな恐怖を押し殺して、私は軽く手を振ると、居間へと戻った。

君のような変に勘のいい貴族は嫌いだよ。


読了ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。