第二話 張り詰めたものは綻んで その一
前話のあらすじ。
竜皇国との関係改善の功績で、貴族となった小心者の騎士ディアン。友人にして貴族のラズリーに旅の経緯を話し、竜皇の娘ルビナの依存を断つべく友人となれる人の紹介を頼むが、ラズリーからは微妙な顔をされるのであった。
それでは第二話「張り詰めたものは綻んで」お楽しみください。
「……ァン様、ディアン様」
「……ん、あぁ」
ルビナの声で我に返る。
ここは……? そうか、ラズリーの別邸の食堂……。
「大丈夫ですか、ディアン様?」
「……あぁ。少しうとうとしていただけだ」
いかん。意識が飛んでた。
昨夜一晩中起きていたのと、とりあえず特使の任務を終えた気の緩みで酒が変に回っているらしい。
特使以上の問題を抱えてしまっているんだから、気を抜いている場合じゃないのに。
……駄目だ。眠い。
「お疲れでしたら、もう寝た方が良いのではないですか?」
「……。そうだな」
折角の酒と料理をもう少しルビナに味わせたい気持ちもあるが、酒に酔って失敗したこれまでを思い返すと、ここは無理をするべきじゃないだろう。
ラズリーの出方が多少気にはなるが……。
「……ラズリー。済まないが先に休ませてもらっても良いか」
「あぁ分かったよ。じゃあお開きといこうか。ルビナ嬢、食べれる物は食べちゃって構わないから」
「分かりました。ありがとうございます」
あれ? てっきりラズリーは、まだ夜は長いんだよ、とか、君は寝て良いからルビナ嬢はもっと僕と飲もうねー、とか言ってごねると思ったのに、随分あっさり承諾したな。
女性が入った飲み会では、終わり際必ずごねていたのに。
何と言ってもルビナと共に引き上げるか考えていたのに、少し拍子抜けだ。
……何か裏があるのか?
「ラズリー、私はてっきり、もっとルビナと飲みたい、と言い出すかと思っていたのだが」
「僕はそこまで命知らずじゃないよ」
命知らずって、ルビナは飲み比べでもしなければ危ない事なんて……、あ。
「君達は旅の中でお互いを信頼出来たようだけど、それが無い僕らにしてみたら、どんなに説明されても竜って言うのは恐ろしい存在なんだよ」
確かに。師匠やルビナと出会う前の私を振り返れば、その心境は理解できる。痛い位。
「小心者で臆病な君がここまで信頼していると言う事実が無かったら、僕は今ここに居られないね。謁見の間でだって陛下を置き去りにして逃げてたよ」
「そうだったのか」
謁見の間で陛下の前に立ったラズリーに違和感を覚えていたが、そう言う事だったのか。
しかしそうすると困った。
さっきラズリーに頼んだルビナの友人探しも難航しそうだなぁ。
「ごちそうさまでした」
「……ごちそうさま」
食べ終わったルビナの礼に私も続く。
「じゃあ部屋に案内するよ。付いて来て」
ラズリーが席を立ったのに合わせて、私とルビナも席を立ち、後に続いた。
深酒して飛び込む布団は天国、翌朝地獄。
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