第二話 張り詰めたものは綻んで その二
「さ、ルビナ嬢。この部屋を自分の部屋だと思って使ってね」
「ありがとうございます」
ラズリーが手ずから案内した部屋は、成程来客用の部屋と言うだけあって、上品かつ落ち着いた雰囲気の部屋だ。
これならルビナも寛げそうだな。
……安心したら眠気がどっと来た。
「ラズリー、私の部屋はどこだ」
「あぁ、君の部屋は」
「あの、ディアン様はこの部屋ではないのですか?」
とんでもない事を口にするルビナ。
一瞬眠気が消えた。
当たり前だろう。
部屋や寝台が足りない訳でもないのに、同室で寝る理由がない。
「ディアンもこの部屋で良いよね? 寝台二つあるし」
「……何だと」
眠気が消し飛ぶ!
ちょっと待てえええぇぇぇ! 何のために相談したと思ってるんだあああぁぁぁ!
「ラズリー、ちょっと」
「何だい?」
とりあえずルビナの様子を見ながら、ラズリーを壁際に押し込む。
「先程ルビナの依存を解消したいと話をしたはずだ。同室にされるのは困る」
「そうは言ってもルビナ嬢はここに来たばかりだ。いきなり一人ぼっちってのも可哀想じゃない?」
「それは、そうかも知れないが、しかし」
「今の心細そうな顔見たでしょ? 万が一恐い夢でも見て暴れらたらどうするの」
「そんな事は無い、と思うが……」
これまでの旅でルビナと一緒に寝なかったのって、町で町長の家に泊まった時だけだ。
後は何やかんやで一緒に寝てる。
一人きりにした時にどんな反応をするのか、確かに分からない。
「……分かった」
「助かるよ」
まぁ大丈夫だろう。寝台は二つある。
離れて眠れば問題無い。
「ディアン様?」
「あぁ、大丈夫だ。少し確認する事があったが解決した。寝るとしよう」
「分かりました。では寝台をくっつけますね」
「え」
言うなりルビナは、大の大人が四人位で動かせそうな寝台を、まるで板切れか何かの様に軽々と持ち上げ、もう一つの寝台と並べて置いた。
「……ルビナ嬢、力持ちだね」
「……あぁ」
頭がくらくらするのは、酒や眠気のせいだけではないだろう。
「ではディアン様、着替えますね」
「あ、じゃあ僕は部屋を出ておくね」
「あ、ラズリー、お前……」
あっという間にラズリーは部屋から出て行った。
くそぅ、逃げたな。
いや残っていても何も事態は変わらないけど。
「私も少し出ている。着替え終わったら呼んでくれ」
「分かりました」
部屋を出て息を整える。
大丈夫だ。酔っているとは言え、頭は冷静だ。
このまま静かに寝てしまえば良いだけだ。
幸い蘇って来た眠気は私の味方だ。
……あぁいっそこのまま廊下で寝たい……。
知らなかったのか? 同衾からは逃げられない。
読了ありがとうございます。




